LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/4/19  渋谷 On Air East

  〜Reduce,Distill,Purify,Teach(圧縮、抽出、純化、教育)〜
出演:Date Course Pentagon Royal Garden

 てなわけで、会場へ到着したのは23時まえくらい。
 オンエア・イーストの前の広場や通路にも観客がたむろって、タバコを吸ったりダベったりで彼らの演奏を待つ。
 「結集せよ」
 Date Course Pentagon Royal garden(以下DCPRG)の主幹、菊地成孔の呼びかけにきっちり若い連中が応えたみたい。
 最終的に会場は、びっしり満員になった。

 出入り自由ではあるものの、かなり居心地悪い。スーツ姿なんて全体の2%くらいじゃないか。えらい場違いなとこへ来た気が・・・。

 人の間をすりぬけ会場へ入ると、ライブの真っ最中。
 3人の白人男性が演奏していた。

 今夜は東京ザヴィヌルバッハとDCPRGのレコ発ライブ(の予定だった)。
 東ザヴィはきちんと新譜を先行販売してたけど、DCPRGはスケジュール遅れでアルバムなし。
 なおイベントタイトルは、菊地曰く「ダンス・ミュージックの発生と定着の原理的4行程を指す」そうだ。

 冒頭の2バンド、東京ザビヌルバッハとGOTH-TRAD は未聴。
 ぼくが聴けたのはジミ・テナーからかな。フィンランド出身のミュージシャンらしい。

 サポートはtbにtp。ジミ・テナーは真っ赤な布を頭からばらばら垂れ下げて、なまはげみたいな扮装。
 key、vo、ts,flとさまざなま楽器を演奏していた。

 基調は打ち込みビートを背負ってブラスを響かせる、アシッドジャズ仕様。
 ときおり聴かせるvoはちと線が細かったが、ホーン隊を生かしたアレンジは楽しめた。打ち込み版サン・ラって感じかな。

 たぶん彼らの演奏は1時間。逆算すると、ちょうどぼくが入場した頃にライブを始め、ステージをほぼ全部聴けたと思う。フロアはそこそこの込み具合。

 打ち込みリズムな割にアップテンポで攻め立てず、ゆったりしたグルーヴ中心。途中間延びもしたが、アンコールで呼び出されるくらいにはウケていた。
 彼らのライブが終ったのは23時半過ぎくらい。

 タイムスケジュールはずんどこ遅れる。
 この時点で30分くらい押してたか。
 入り口にあったタイム・シート見てげんなり。DCPRGの出番は、予定でも1:40らしい・・・。ってことは、ステージ開始は2時過ぎくらいになるの?

 しばらくタバコ吸いつつ、場内をぶらぶら。
 フロアDJの音は、いまいち好みに合わなかった。

 続くREBEL FAMILIAは麻薬的な魅力があった。
 DJっぽくシンセ(?)を操作する男と、ベースを弾き殴る男の二人組。
 最初は響き渡る単調な低音の連続でへきえきしたけど、しばらく聴いてるうちに気持ちよくなってきた。

 スピードで押しまくるだけでなく、ポップなメロディも多用し親しみやすい。
 ビートは暴力的だが、すんなり耳に飛び込んでくる。
 ハイスピード・アンビエント。論理矛盾だけど煽り立てる音楽なわりに、なぜかリラックスできた。

 REBEL FAMILIAのステージも一時間弱くらい。さあ、DCPRGだ。
 タツヤオオエ(a.k.a. CaptainFunk)のDJをバックに、ステージの上で準備が進む。
 DJは楽しめた。ブレイクを多用したハードでノイジーなテクノが中心。

 しかーし。すでに体力へろへろ。いまから最後まで身体もつんだろうか。
 フロアにぞくぞく集まってくるが、その気なら前のほうを確保できた。
 でもスーツ姿だしなー。モッシュでごしゃめしゃになるのもいやだし、後ろへさがって聴いていた。

 時計が2時を回った頃。メンバーがステージに登場し、歓声が起こる。
 菊地も登場。服装は今回も真っ赤なシャツだ。
 腕をメンバーへ一振り。続いてDJをびしりと指差す。鋭いしぐさで観客をあおった。
 てんでに観客は両腕を上げ、菊地の登場を称える。

 DJがフェイドアウトすると同時に、ブラス隊を加えたハイブラス仕様DCPRGのライブが始まった。

 結論は・・・もどかしいぞ。彼らの実力ってこんなもんじゃないはず。
 ぼくが聴いてた場所のせいかなぁ。PAがぼろぼろに聴こえた。
 楽器バランスが極端で、低音がひたすら響く割にブラス隊がほとんど聴き分けられない。
 ソロになると一呼吸置いて、音量が上がる印象だ。

 まあ、アレンジ自体が菊地の即興だから無理もないけど・・・。
 でもDCPRGは、菊地のサインによるカットイン・アウトを多用した演奏のダイナミズムが命。頭の中の理想像と、聴こえる音にタイムラグがある感じだった。

 演奏もラフなところが目立つ。深夜のせいかな。
 菊地はしょっぱなのMCで「眠い人いる〜?・・・俺俺俺」とわめいていた。
 
 構成自体も菊地がHPで宣伝してたのと、ちとちがう。
 5人増えるはずのブラス隊は四人(tpx2,tb,tuba)にとどまり、3時間ぶっ通し予定は、アンコール入れても2時間半弱ほど。
 (それでも、充分なボリュームだけどな)
 
 "1st&2nd予定曲の全レパートリー演奏"も、果たされずじまい。「S」(これ、いまだにライブで聴いたことない・・・)も、「Catch22」も多分演奏しなかった。

 アレンジの基本戦略がひとつだけなので、残念ながら飽きちゃう瞬間がしばしば。
 ほぼずっとフロアに背を向けた菊地は、身体こそ激しく動くものの演奏は重たいビートが続く。
 菊地のリハビリを見てる気分になった。

 救いは大友良英のギター。弦をぶちぶち切りながら、ノイジーに音を切り刻む。そのたびに、すごく元気出てきた。

 けっこう辛口の書き方をしてますが。フロアに(すくなくともぼくがいた辺りで)聴こえた音が相当モヤけていたのど、なによりぼくが体力的にメロメロだったことを割り引いて読んで下さると嬉しいです。
 終演後にほんのり耳鳴りしてたから、音もちゃんと聴こえてない可能性あるし。

 帰り際に「すっげーものを見た!」「かっこいい!」って若い連中が口々に言ってましたし、後述しますがフロアもかなり盛り上がってました。
 フロアの立ち位置で音が違ったのかな。もっと前へ行きゃよかった。モッシュも幸い起こらなかったし。
 要するにスーツ姿で聴くライブじゃないんだよな、もう。

 さて、DCPRGのライブの感想へ戻ろう。
 冒頭数曲は聴き覚えないものばかり。新曲群なのかな。
 どちらも沈鬱なムードの曲。リズムはタイトだから、踊るには不自由しない。でも、ここまで疲れた身体にはカタルシスが欲しいよう。・・・おっさんくさい意見はやめよ。
 
 菊地のハンド・サイン一発でバンドが演奏をストップ&ゴーさせ、音圧を自由に変化させるアレンジが冴えわたる。
 今夜はホーン隊をアレンジの肝にしていた。

 演奏開始早々、大儀見元のperだけ抽出。
 単一ビートが静かにフロアに流れ、即座に観客から歓声が飛んだ。

 菊地の身体は止まらない。ひっきりなしに身体でリズムを取りつつ、つぎつぎメンバーを指差す。
 滑らかに腕を一振り。
 指定されたメンバーだけが演奏を続け、他の楽器は音を消す。

 抜き出された特定のリフかビートが強調され、なんども繰り返す。
 菊地の腕が一閃。
 再び、バンド全体が炸裂する。

 そんなアレンジが執拗に繰り返された。二人ドラム、二人パーカッションによる混沌としたダンス・ミュージックが提示されつづける。

 今夜の菊地は、オルガンもやたら弾いてた。そのぶんCD−Jは控えめ。
 ソロを取るよりも、演奏にあわせてコードを殴り弾き。アレンジのいいアクセントになってた。

 まずステージは「Catch22」みたいなポリリズムの曲からスタート。どの曲も20分くらい引き伸ばされた。
 開始早々から、大友良英が弦をたびたび切る。弦を毟り、床へ投げ捨てるしぐさが怖いぞ。

 MCでは菊地がメンバー紹介をしたくらい。寡黙なまま次々曲を演奏していた。

 数曲すぎたとこで、やっと耳なじみのメロディ。「Play Mate at Hanoy」だ。
 
 しかし、その後また新曲群へ。
 後半の曲は期待が持てる。前半の新曲はメロディらしきものがほとんどなく、いまひとつ馴染みづらかったが。
 後半部ではホーン隊のリフで強調された、かっこいい曲もあった。次のアルバムが楽しみだ。

 フロアはそこかしこで揺れているものの。さほど大騒ぎにならない。
 ここで「Circle/Line」。
 ハッピーな響きが充満し、わさわさ観客が飛び跳ね始めた。
 「Circle/Line」も変な響きに聴こえたな。なんでだろう・・・。和音を変えてたんだろうか。
 
 最後の曲は「Hey Joe」。
 観客のノリは継続する。カバー曲でしか観客が盛り上がらないってのもなぁ。うーむ。
 エンディングは普通のコーダだとおもう。藤井信雄・芳垣安洋のドラムだけ残って、ひたすら叩き続けるアレンジがいかしてたのに。

 すでにこの時点で2時間くらい経過。
 アンコールにはすぐさま応える。「mirror Balls」だ。この曲大好き。
 くたくたに疲れてたけど、細かく刻むビートにあわせて床を踏み、身体を揺らしながら聴いていた。
 ラストで、菊地は自分へ音を集める。
 全員が演奏を止め、菊地のオルガンが奏でるメロディだけが鳴った。

 菊地は観客へ向かって十字を切ってみせ、笑顔を振り撒きながらステージを去る。まだ拍手がやまない。
 かなり待たせたけど。さらにアンコールに応えてくれた。

 最後はフルメンバーでなく、坪口昌恭、大儀見元、後関好宏、高井康生、菊地の陣容。
 短めに、静かなジャズを演奏した。
 
 観客が「3時間ライブ」って意識してたせいかな。まだまだ拍手が続く。客電ついてもまだやまない。
 最後に菊地だけが登場し「ごめん、もうやる曲ない」って苦笑いで挨拶。今夜のパーティが終了した。

 頃合は4時半。始発が出るかどうかくらいだ。
 こんどはこちらも万全の体調で、彼らのサウンドを聴きたいな。

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