LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/4/19   渋谷 PROJETTO

出演:Warehouse + 片岡直子
 (Warehouse:鬼怒無月;g,etc、高良久美子:vib,per、大坪寛彦:b,etc
  +片岡直子:詩の朗読)
 

 warehouseは鬼怒無月がボンデージ・フルーツのb,perと作ったバンド。数年前から断続的に活動してるはずだが、ぼくは今回が聴くの初めて。

 会場のプロジェットは、カルチャー系に特化して棚を作った本屋さん。
 HPを見る限り、ライブのイベントをやるのはまれみたい。
 道玄坂を登って店内へ入ると、店の奥に演奏スペースをつくり、大坪が温度をとってマイクチェックしてるとこだった。

 今夜は裏でデートコースペンタゴン・ロイヤルガーデン+東京ザヴィヌルバッハのイベントが、同じく渋谷で開催される。
 どっちにいくか迷ったけど。とりあえず両方見よう、とまずはこちらへ行くことにした。

 開場(要するに店内奥のスペースへ通されるだけ)は20時を15分まわったころ。
 キャスター付箱を椅子代わりにした、素朴な客席だった。
 観客はぜんぶで20人弱で、なぜか過半数が女性客。共演の詩人、片岡直子ファンが来たせいかな。

 演奏開始は20時45分くらい。
 まずはwarehouseだけで2曲(「Cat box」「ブンバカ」)演奏した。

 面白い。
 曲調はアコースティック・プログレ。鬼怒は3本のアコギを弾き分ける。
 奇麗な、時に高速フレーズを滑らかに奏でる鬼怒を、高良と大坪がバックアップ。
 大坪のウッドベースは低音だけでなく、ボディ横や背板を叩いたり蹴飛ばしたり。パーカッションとしても活用されていた。

 高良はときおりパーカッションを叩くものの、基本はヴァイブを演奏。
 冒頭二曲はほとんど即興パートはない(たぶん)。
 3人とも薄くアンプを通してるが、ミュージシャンとの距離はほんの数m。充分生音でも聴こえる距離だ。

 簡素で落ち着いたアンサンブルが、すばらしく楽しかった。

 「ブンバカ」では高良がユニークなパーカッションを使う。木の棒を何本も立てて並べ、楽器上部をしゃもじみたいなマレットで叩く。
 「ぼこんっ」って複雑な響きで、音程を弾き分けられる。
 パーカッションよりも、ベース楽器として使っていた。

 3曲目に片岡直子が登場。「イカない女」という自作詩をアカペラで朗読する。
 散文詩になるのかな。物語性があり、ところどころに言葉遊びも顔を出す。 セクシャルなテーマを詩に多用してるようだ。

 後半に片岡がMCで「下の子が小学生で『緑のおばさん』をやってる。ピンクチラシをはがす仕事もあるんだけど、昼は剥がして夜はピンクチラシみたいな詩を書いてます」と言い、爆笑だった。
 
 朗読のあと、ふたたびwarehouseの登場。曲紹介したけど、タイトル失念しました。すみません。
 2曲続けて演奏されたが、こんどは各自のソロも織り込まれ、冴え渡るフレーズが爽快だった。

 ちなみに今夜はおしゃれな店内の雰囲気にあわせ、MCを控えめにする予定だったそう。
 最終的には、やっぱり喋ってたけど・・・。ボンフルやpere-furuで聞かせる、脱力漫才系MCだった。

 鬼怒は赤のタイトなズボンに、ポップなTシャツ。高良曰く「店の雰囲気に合わせてこい、と言ったのに鬼怒は普段着で来た。メンバーが攻め立てて、店内で気にったTシャツを急遽買い、ステージ衣装にしてる」とか。

 なお、「高良用のMCマイクを準備して、服屋へ行く暇なかった。なのに高良が使ってくれずさみしい」という鬼怒の言い分があったことも、いちおう触れておきたい。
 確かに今夜は全員、マイクを通さずに喋ってた。そのくらい、客席と距離が近いんだもん。

 前半最後は、warehouseと片岡のコラボ。このセッションが今夜いちばんの聴き物だったと思う。
 鬼怒はアコギではなく、サンプラーのみを使用。
 断片的に二人がリズムを刻む中、片岡が淡々と詩を朗読してゆく。
 
 そこへ鬼怒が片岡の声を即興でサンプリング、断片をループしたり変調させたりして切り込んでいった。
 詩人にとっては、テキストが解体され困惑するかもしれないが。
 緊張感溢れる、セッションになった。

 片岡自身の朗読も、かなり音楽を意識したもの。もっと唯我独尊で読むかと思ったがとんでもない。
 鬼怒の挑発的な音に乗ったのか、同じ詩を自分でもダブ風に繰り返す。
 リズムにピタリと乗っかり、ラップ風に喋るさまが見事。
 声によるダイナミズムもきっちり意識しており、聴き応えあった。

 前半セットは30分強。15分ほどの休憩をはさみ、再びwarehouseだけで始まった。「ドードー」と、あと一曲を演奏したかな。

 なお「ドードー」は鬼怒が十三歳のとき読んだ「不思議の国のアリス」にインスパイアされ、「タイトルのみ」当時作ったとか。曲をつけたのは三十数歳の時らしい。
 高良の「構想20年?」の冷やかしに鬼怒は苦笑していた。

 たしかこの曲で、高良と大坪がペットボトルを巧みに使ったリズムリフを披露。
 互いに違う音を吹き合わせた印象的なリフだった。

 別の曲で大坪は、リコーダーの二本吹きも。
 シンプルな編成ながら、大坪と高良がパーカッションなどで小技を挿入し、見てて飽きない。
 鬼怒はアコギを弾いてるだけで、文句なしの説得力あり。
 エレキギターが似合いそうな激しいフレーズも、アコギで聴くと格別だった。

 後半2曲めだったかなぁ。
 高良がヴァイブを叩きながらカズーでメロディを確保。
 ブレイクの後に、3人でいっせいにカズーを吹き鳴らすアレンジもあった。
 もっとも大坪が吹きはじめる瞬間、口からカズーを落としてしまい3人そろって吹くのは聴けずじまい。惜しかった。

 続いて異色企画。鬼怒による片岡の詩を朗読するコーナー。
 3つの短い詩を朗読する。「組曲みたいなものですか?」とたずね、納得してたのが妙に面白かった。
 めったに聴けない機会なので鬼怒も緊張している。
 ステージ後方で高良が帽子を目深にかぶり、時折身体を小さく震わせてましたが・・・。
 結局、へんに茶化したりせず大真面目に朗読してくれた。

 ここから、再びwarehouseと片岡のコラボ演奏。
 鬼怒はサンプラーを使わず、アコギのみ。
 前半部の斬り合いみたいなセッションではなく、互いの持ち味を融合させる感触だった。

 ソロを織り込まず片岡の後ろで淡々と演奏したり、朗読の区切りですっとだれかが即興を挿入したり(これがまた、いいタイミングで決まるんだ)。
 よっぽどリハをしたんだろうか。節々で見せる、ぴたりと音楽的にはまる瞬間が痛快だった。

 ひたすら朗読の伴奏を勤めた曲が、ドラマティックでかっこいい。
 ボンフルのレパートリーなのかな。何となく聞き覚えある。シンプルな3人編成なのに、雄大な風景が広がった。

 一番最後は、片岡のアカペラ朗読でしめたかな。後半は1時間弱くらい。

 めったにない企画だろう、これ。
 中身は充実し、とても刺激的なイベントだった。折をみて、もいちどやってもらいたい。

 warehouseの初CDは7月予定だとか。こちらも楽しみだ。
 アコースティックなボンフルともいえる、コンパクトながら複雑な響きのプログレが嬉しい。

 さあ、次。これからデートコ−スペンタゴン・ロイヤルガーデンのイベントへ行ってきまーす。

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