LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/4/9  西荻窪 アケタの店

出演:HAYAKAWA
 (早川岳晴:b、橋本ジュン:g、増田隆一:g、植村昌弘:ds、北澤篤:ds)


 すごいサウンドを聴いた。

 HAYAKAWAのライブを聴くのは去年の7月ぶり。けっこう間があいちゃってる。
 その間に生まれた新曲群が、しこたまかっこいいぞ。
 レコードよりも、さらにハード&ヘヴィな音に進化していた。

 今夜は裏で遠藤ミチロウ+不破+片山+トシのライブもあり。どっちに行くか迷ったけど・・・仕事がばたついて、多少開演時間が遅いはずなこっちのライブへ自動的に決定した(笑)

 観客は十数人。アケタのキャパがほぼ埋まるくらいか。
 時間は20時を過ぎるころ、メンバーが無造作にステージへ向かった。

<セットリスト>
1.900t
2.Pedal Tones
3.'01/10/24 (旧Tochi)
4.(タイトルなし:仮題"新曲'02/1")
 (休憩)
5.No Shoes
6.(タイトルなし:仮題"新曲'02/3"通称「バラード」)
7.バリタカ
8.294
(アンコール)
9.pug pug
 *セットリストは早川岳晴氏のHPも参照しました。

 今回はMCできちんと曲紹介してくれた。嬉しいな。
 ちなみに早川は喋るのが辛そうだった。咳払いしてからのMCが多い。
 力をこめてベースを弾き倒すと、喉が圧迫され声は枯れちゃうらしい。

 一曲目からいきなり、馬鹿でかい音がアケタの中へ響き渡る。
 極太のファンク・ジャズがけたたましくばら撒かれた。
 しょっぱなのソロは橋本ジュン。熱くギターを弾きまくり。聴いてて自然に体が熱くなる。
 アルバムよりも、ぐっと疾走感が増していた。

 つづく「ペダル・トーン」も激しいテンションで突き進む。
 聴きどころだらけ。あっというまに演奏に引き込まれた。
 ここで初めて早川岳晴がベースソロをとったかな。
 じっくりフレーズを重ねる増田隆一のソロも印象深い。

 増田の音はすっかりHAYAKAWAに溶け込み、バンドとしての一体感を音のそこここに感じた。

 どの曲も、それぞれ15分くらい演奏された。冒頭にテーマを提示し、アドリブが始まる。そしてコーダに再びテーマへ。
 そんなジャズのフォーマットは確保しているものの、演奏はもうジャンルを超越している。
 豪音で激しく心を煽り立てる、ファンク・サウンドをたっぷり味わえた。

 芯を支えるのはもちろん早川のベース。その周りを囲む二組のドラムとベースが重なり合い、かなり複雑な音像が生まれていた。
 
 各メンバーの個性を書くのは難しい。ドラムがいがいと対照的だったかな。
 オーソドックスにリズムを刻む北澤篤と、手数多くフィルを叩き込む植村昌弘。
 あえて個性を変えたリズムが複合されていた。

 今回は、植村のドラムセットが凝っていた。
 まずメロタムを二つ並べ、シンバルも各種そろえる。
 お得意のスタック・シンバルとカウベルに、チャイナスプラッシュやアイスベルも使っていた。

 アイスベルはシンバルの上に積み重ねる。
 軽く叩くと仏壇の金鉢みたいな音。早川がおどけて拝んでみせてたっけ。
 各種金物をつぎつぎ叩き、すごく賑やかなリズムだった。

 対照的に北澤はアケタのハウス・ドラムを使用。タムひとつのシンプルなセットで、ときおりパワフルにシンバルを鳴らしてた。
 以前見た記憶がある、ドラム同士のコール&レスポンスが控えめだったのは残念。

 ギターは。うーん・・・橋本ジュンが比較的派手でワイルドなエフェクターを使い、増田隆一がサイケっぽい音色や、ブライトな音を多用してたくらいかな。
 ギターはバッキングとソロの境目がけっこうわかりにくくて面白い。
 リズムを弾きながら、いきなりフレーズで切り込んだり油断できなかった。

 二曲激しい曲が続く。
 植村は叩きすぎたのか、スネアのヘッドが破けそうだとぼやいていた。
 最初のステージはそのまま進んだものの、休憩時間に張り替えてたっけ。

 さて、3曲目。「01-1024」と聴こえたが、もしかしたら曲名間違ってるかも。
 曲名のセンスは植村っぽいが、サウンドは重たくゆっくりめなファンクだった。
 淡々とリフを繰り返すベースがかっこいい。

 ここでも早川がたっぷりとソロをとる。
 他の曲でもそうだったが、ベースは高音部や早弾きも織り交ぜた刺激的なアドリブだった。

 第1セット最後の曲は、まだ名前がついてないそうだ。
 早川のHPで触れられている"1月の新曲"なる曲だとおもう。
 ユニゾンでブレイクを決めるアレンジがすてきだった。

 あっというまに時間がたつ。前半はだいたい一時間弱のステージ。
 耳がわくわくして、額が熱気でほんのり汗ばんできた。

 ちょっと休憩をはさみ、第二部最初はアルバム収録曲「No Shoes」。
 なぜかイントロの音が物足りない。第一部の濃密な音に耳が馴れちゃったのかな。妙に痩せて聴こえた。
 ソロ回しが始まると、すぐさま音にのめりこんでいけたけどね。

 さて、次なる曲は最近作った「静かな曲」らしい。
 曲名がついておらず、通称で「バラード」と呼んでいるそうな。
 たしかにHAYAKAWAにはめずらしくしっとりめな曲。
 
 ところがベースソロからドラムソロ。橋本のギターソロへ雪崩れ込むあたりには、どこが「静かな曲?」って感じだった。
 前半では植村もブラシでそっとドラムを叩いてたが。
 ソロが盛り上がる頃にはいつのまにかスティックへ持ち替え、足はツインペダルでバスドラをドカドカ踏み鳴らすありさま。

 ちなみにこの曲、テーマのリズムリフがいかしてる。
 ブレイクで植村はスタック・シンバルをミュートしながら、強く連打する。
 にぶくひしゃげた音が、すごく効果的に鳴っていた。

 続く「バリタカ」も「HAYAKAWAにしては静かめな曲」だそう。
 だけどこれだけテンション高く演奏されると、ぐいぐい心が盛り上がってしまう。
 基調は静かめだったけど、中盤のブレイクでヘヴィに盛り上がっていたっけ。
 このどっちかの曲で、早川はベースを持ち替えていたはず。

 本編最後は「294」。ここぞとばかりに爆発する、爽快な演奏だった。
 中盤でドラムのツイン・ソロがすごい。
 植村がしこたま叩きまくる。微妙に小節を揺らし、一ひねりしたグルーヴを生み出していた。
 ほんとに最後まで、魅力的な瞬間がてんこもりだ。

 後半は1時間くらい演奏してたかな。拍手はまったくやまず、メンバーはすぐさまアンコールを始めてくれた。
 最後もアルバム収録曲の「pug pug」。シャープなギターが特徴な曲だ。

 エンディングはフェイドアウトするアレンジを採用。
 ボリュームが下がり、ひとり、またひとりと演奏を止めていく。
 最後は橋本がかすかに、かすかにリフを爪弾く。

 そのまま音がやみ、早川が挨拶してライブ終了。
 うーん、ここはアルバムみたいに、ラストでどかんと炸裂するエンディングにして欲しかった。いまいちあっけないよぅ。

 とはいえ終ってみれば、HAYAKAWAの音で心がすっかり浮き立ってる。
 馬鹿でかい音でぐいぐい攻め込こまれ、とびきりのサウンドに圧倒されたライブだった。

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