LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/3/14   西荻窪 アケタの店

出演:緑化計画
 (翠川敬基:vc、片山広明:ts、早川岳晴:b、石塚俊明:ds
  ゲスト:北陽一郎:tp)


 最近、緑化計画のHPを見るのが楽しみだ。
 翠川敬基が書く、小説仕立ての回想がすっごく面白い。当時の空気感が伝わってくる。
 しょっちゅうそのHPを見に行っているだけに、ぼくの中では近頃の「緑化計画」って宣伝に力を入れ、活発化したイメージがある。

 だけどライブ活動は「アケタの店」で月に一回行うだけ。
 しかもなぜか平日ばかりで、タイミング合わず聴きに行きそびれていた。
 今回は4回め、半年振りの緑化計画かな。
 どんな風に音や客層が変化してるか期待しながらアケタへ行った。

 ちなみに結論は・・・いい意味で変わっていない。
 自由奔放で、ほのぼのとしたフリージャズをしみじみ味わえた。

 店内に入ると早川岳晴がひとり、楽器をいじっている。アンプの出音調整かな。
 数分たつと楽器を椅子の上に載せ、店内奥の楽屋(?)でくつろいでいた。

 他のメンバーは食事へ行ってるようだ。
 どやどやと戻ったのが20時くらい。10分ほどして、おもむろにステージへ上がっていった。

<セットリスト>
1. ?
2.フルフル
3.エヘン(?)
 (休憩)
4.トレス
5.フェア・ゲーム
6.アグリの風

 一曲目は曲紹介なし。聴き覚えないメロディだ。
 (3)はこう聴こえましたが、もしかしたら曲名間違ってるかも。
 たぶん全曲、翠川のオリジナルなのでは。

 演奏時間は前半50分、後半1時間くらいかな。
 いつもながら、あと一歩もどかしい演奏時間。
 緑化計画のライブを聴くたびに「あともうちょい長く演奏を聴きたい・・」って気分になってしまう。

 まず、今夜は翠川によるチェロの指弾きから始まった。
 ほんのりブルージーに、弦を弾いて低音をランニング。
 片山広明と北陽一郎が、ピアニッシモでロングトーンをかぶせる。
 石塚俊明は、そっとマレットでシンバルを撫ぜた。

 冒頭は静寂を強調した演奏だった。全員が椅子に座ったままのプレイだ。
 しばし音をあそばせたあと、早川がすっと立ち上がる。
 硬質にベースを弾き、曲調のテンションがあがった。

 石塚は常にパーカッションとして、ドラムセットをプレイする。
 一定のパルスは確保されるが、あくまで無拍子のフリーだ。
 一曲目でリズムを提起していたのは、早川のベースだろうか。
 ベースがソロっぽく演奏しだすと、とたんにビートの頭はわからなくなる。

 アップテンポで進む時。石塚がマレットでパワフルにひっぱたく、スタック・シンバルのひしゃげた音がかっこよかったな。

 各曲は15〜20分くらい。比較的に長めに演奏してた。

 2曲目の「フルフル」は好きな曲。連打されるメロディがかっこいい。
 石塚がここからスティックに持ちかえる。

 途中でチェロを弾きつつ、翠川は鼻歌を唸りだす。
 気にいったのか、中盤から口ずさみっぱなし。
 片山がテナーを吹きつつ、ふきだしてしまうシーンもあった。

 北は以前聴いた時、いかにもゲストっぽい遠慮があったけど。
 今夜はかなり緑化の音へ溶け込み、積極的にソロを取っていた。 
 
 もっとも緑化は「ソロ回し」の順番みたいなのは特にないみたい。あくまで音の流れで決めてるっぽい。
 自然発生的に、だれかがソロを吹きだす。そのサウンドが気に入ると他のメンバーがバッキングにまわる。
 ふと思いつくと、オブリが誰かから入る。そしてオブリが新しいソロへ・・・。
 そんなゆるい流れを常に感じた。

 だから、テンポが上がるときはあっというまだ。 
 空気を捕まえて石塚がタムを強く叩くと、すぐさま全員がついていく。
 各種楽器が重なり合う、アンサンブルの展開も聴きどころのひとつ。

 ニューヨークのアヴァンギャルド分野にありがちな、「フリーに演奏するスタイル」を演奏の目的としないところはありがたい。
 あくまで主役は音楽であるとこが好きだ。

 わき道にそれた。今夜の音に戻ろう。
 
 前半セットはフリーなビートを強調していたが。
 初めてジャズっぽいムードを感じたのが3曲目。4ビートだったのかな。
 空気がしっとりし、音に膨らみが出てくる。
 
 基本はじっくりしたフレーズ。そこへ時折高速のソロを織り交ぜたベースを早川が弾いてたのは、この曲だったろうか。
 
 今夜の演奏は、全般的にリラックスした雰囲気がメインだった。
 緊張感が切れるぎりぎりのところをたどったプレイが多かった中、もっとも曲調に一体感があったと感じた。
 好演が多い今夜のライブ中、(3)が今夜のベストプレイでは。

 ちょっと短めの休憩をはさんだ二部が、緑化計画の本領発揮だった。

 まず、譜面を見ながらメンバーが曲を選ぶ。
 片山と翠川で、次に演奏する曲をその場で決めてるようだ。

 だからアレンジの分担(どうやらフルスコアを見ながら演奏してるらしい)もその場で相談。
 「このメロディをおれが演奏する」「なら、おれはこっち?」とステージ上で打ち合わせるから観客が大笑い。
 「いや、プロだからさ。確認しないと」と早川がとぼける。
 翠川が「緑化はこんなバンドなんですよ〜」とおどけてた。

 演奏が始まると、一気に風景が変わるのが爽快だ。
 テーマがいつのまにかソロへ変化し、サウンドがぬるりと溶け出す。
 ドラムはブラシを使って、静かにビートを刻んでいた。

 ちなみにエンディングでは、えんえんとテーマのフレーズを繰り返す。
 「(アンサンブルが)合うまで繰り返します」と翠川が宣言し、客が爆笑。
 7〜8回繰り返してたかな。

 片山が「今あってたけど、チェロの音程が違う」とつっこむ。
 翠川は笑いながら再度テーマを繰り返してたっけ。

 つづく(5)でも演奏前に延々と相談が始まり、笑ってしまう。。
 「これは難しいから他の曲〜」と片山がダメ出ししたり、曲が決まると早川が「譜面が見にくい(キーを読み替えで弾いてたようだ)」とぼやいてた。
 北はだまって譜面を繰り、相談している曲を探す。

 侃侃諤諤な議論のなか、石塚だけは腕組みしてほのぼの笑っている。
 そういや、石塚だけ譜面を見ないで演奏してた。
 彼だけは、完全にフリーな演奏を保証されてるのかな。

 もっともトシの頭には、曲が入っている様子。
 その場でいきなり決めた(6)を演奏したときも、いきなりリフをユニゾンでぴしりとあわせていた。 
 
 いよいよアレンジが決まって、(5)の演奏が始まる。
 早川がテーマで真剣に譜面を睨みつけ、じっくり音を鳴らしてたのが印象的だった。
 
 この曲でも、ブレイクのリズムパターンが好き。
 イントロでは翠川がテンポを気に入らなかったようで、片山を抑えて演奏をやり直す。
 なんか難しい指示が飛び交っていた。1/4ってどんなビートなんだろう。
 片山は「同じテンポじゃないか」とつっこんでいたが・・・。

 中盤でドラムが爆発する。
 きっかけはなんだったろう。覚えてないや。

 石塚が満面の笑みを浮かべながら、ドラムを叩きまくり。
 猛烈なテンポで演奏が流れていく。
 比較的押さえめな演奏中心だったドラムが、力いっぱいはじけた瞬間だった。
 
 (5)ではエンディングも聴きもの。
 翠川が指で指揮をはじめ、テンポがぐいぐい高速化するのがかっこよかったな。
 
 最後の曲は「楽な曲やろう」と翠川の宣言で決定。
 片山は「サックスは楽じゃないんだよな」とつぶやいてたけど。
 
 冒頭のチェロによる、繊細でクラシカルなフレーズが素敵だ。
 今回のステージでは、この曲に限らずチェロのフレーズが効果的に響く。
 もちろんフリーに弦をかきむしったりするけど、厳粛に弓でメロディを操る瞬間がいくどもあった。

 対照的に、ベースがこの曲でディストーションを効かせたソロをとる。
 ずしんと低音を響かせ、ロック風のフレーズを織り込んでいた。
 
 アンコールは特になしで、ライブ終了。
 どの曲も、ミュージシャンの力量が発揮された充実した演奏ばかり。

 観客は10人足らずと物足りない人数だけど。ずっとライブ続けて欲しい。
 仕事の都合さえ合えば、またライブを聴きたいぞ。 

●幕間にミュージシャンから直接配られた、各種チラシが充実してました。
 聴きにいきたいな〜。せっかくなので主だったものをここで紹介しましょう。
 (詳細は、各ミュージシャンのHPをご参照ください)

翠川敬基
 3/31(日)チェロコンサート 荻窪 かん芸館
      →ピアノとのデュオ。クラシックをやるみたい。
 4/2(火) 緑化計画  西荻窪 アケタの店
      →緑化の定期演奏会(こう書くとなんかクラシックみたいだな(笑))
 4/3(水) FMT 横浜 ドルフィー
      →これはしこたま聴いてみたい。藤川義明と豊住芳三郎による、フリージャズ・トリオ。横浜じゃなけりゃなぁ。平日だし、行くのは無理っぽい。
       ちなみにチラシの写真が異様に若い。何年前だろう。一見の価値あり。
 4/5(金) 緑化計画スペシャル 吉祥寺 マンダラ2
      →三人のゲストを迎えた緑化拡大版の企画第二弾。これはぜひ聴きたい。

 それと、今回のチラシには触れられてなかったけど。
 
横濱ジャズ・プロムナードにも緑化の出演が決定してるはず。
 
早川岳晴??
 3/29(金) 生誕記念大セッション 西荻窪 アケタの店
      →メンバーが面白い。翠川敬基、田村夏樹(tp)、植村昌弘(ds)と、
       早川が参加する各バンドからメンバーを集めた編成。これもぜひ聴きたいなぁ。
 4/9(火)  Hayakawa 西荻窪 アケタの店
      →しばらくHAYAKAWAのライブを聴いてない。また行きたいぞ。
 5/28(火) HAYAKAWA ジロキチ(店は荻窪だっけな。高円寺だっけな?)

片山広明

 渋さ知らズ関係の活動がたんまりあるが、地底新聞の配布はなかった。
 4/9(火) リアルファイトGIG  吉祥寺 曼荼羅
      →遠藤ミチロウに不破大輔、石塚俊明との大格闘セッション。今回が3回目だっけ?
       毎回聞き逃してるんだよな。うおー。HAYAKAWAと重なってるじゃん(涙)
 5/10(金) デ・ガ・ショー 渋谷 クロコダイルにて
      →そういや、デ・ガ・ショーってライブ聴いたことないな。
       「ね」(外山明ゲスト)とネリヤ・カリヤが対バン。クロコは駅から遠いんだよなぁ。とほほ。
       この日は古澤がダブルバンドで大変そうだ。

石塚俊明
 とくにライブスケジュールのチラシなし。マネージャーらしき人はいたのに。
 一番の話題は6/9の「頭脳警察」再結成でしょう。もっともぼく、聴いたことない・・・。すみません。

目次に戻る

表紙に戻る