LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/3/2  厚木市文化会館

出演:山下達郎〜Performance 2002 RCA/AIR Years Special〜
 (山下達郎:vo,g,key、青山純:ds、伊藤広規:b、佐橋佳幸:g,cho、
  難波弘之:key、重実徹:key、土岐英史:as,ss、国分友里恵:cho、
  佐々木久美:cho、三谷泰弘:cho)


 ⇒達郎ファンなぼくが、趣味全開で書いたライブ感想(裏)はこちらです

 山下達郎が20代の頃に在籍していたRCA/AIR時代の作品7枚が、このたび達郎本人のリマスター監修によって再発された。
 今回は、そのリイシューに伴った企画ライブのツアー。
 当時のレパートリーのみでライブを構成する趣向だ。

 おそらく本人は、東京圏で2〜3回くらいのライブを想定してたんだろう。
 以前、シュガー・ベイブのアルバムがリイシューされたときみたいに。
 ところが企画は膨らみ、全32本の全国ツアーとして公演が打たれることになった。

 達郎のライブの常として、会場はキャパ数千人の小さなホールばかり。
 いきおいチケット争奪はすさまじいものになり、あっというまに完売したらしい。
 ぼくはファンクラブ経由で買ったけど。それでも3/9の中野サンプラザ公演は入手できなかった(申し込み多数で、抽選になってしまった)。
 その代わりとして選んだのがこの日。他に東京近郊で土日の公演がなかったし。

 結論として・・・もちろん、むちゃくちゃ楽しいライブ。
 山下達郎は「スタジオ職人」とイメージしがちだが、あらためて「ライブ巧者ぶり」を痛感した。

 ツアー初日のぎこちなさが散見されたものの、リハを2週間たっぷりやっただけあり、堂々たる演奏。
 そのうえ選曲はマニアックなとこまで目配りきいた、とびっきり充実でいうことなし。

 ホールに入ると、まずはセットへ目が行く。
 
 ステージ一杯にあれこればかでかいモニュメントが建ち並ぶ。それぞれにアルバムタイトルと発売年が記載されていた。
 それ以外のステージは簡素なもの。ライティングも、それほど派手じゃない。
 ステージ上手のスピーカーへちょこんと載ったドラクエのスライムのぬいぐるみが、妙に印象的だった。

 なんだか前置きが長くなりました。
 まずはセットリストから報告します。

<セットリスト>
1.Sparkle
2.Love Space
3.Windy Lady
4.甘く危険な香り
5.Rainy Day
6.Paper Doll
7.Candy
8.Solid Slider
9.Music Book
10.言えなかった言葉を
11.2000tの雨
12.You Belong To Me
13.Angel
14.いつか
15.夏の日
16.Monday Blue
17.Touch Me Lightly
18.(メドレー)Love Talkin'〜Bomber〜Silent Screamer
19.Let's Dance Baby
20.Circus Town
 (アンコール)
21.Loveland Island
22.Ride On Time
23.Let's Kiss The Sun
24.Your Eyes
25.おやすみ

 個々の細かい感想は、「マニアック感想」ページにて触れます(笑)
 開演は18時40分くらい。終了した時はすでに21時半過ぎ。
 実に3時間にわたる、恒例な怒涛のライブだった。

 開演の合図は、達郎の多重録音アカペラにて。
 ミドルテンポでしなやかにリズムを刻む達郎の声に誘われ、三々五々メンバーが登場する。
 そしておもむろに達郎が、ブルーのスーツ姿で現れた。

 達郎による歯切れのいいカッティングでライブがスタート。
 あとはもう、ひたすら演奏を楽しんだ。

 49歳にもかかわらず、達郎の歌声は元気なもの。
 しょっぱなの「スパークル」こそ抑えめだったが、曲を追うに従ってぐいぐい溌剌としてくるのがすごい。

 いきなり嬉しいのが「ラブ・スペース」。青山純が、アルバムでポンタが叩いてたリズムリフをなぞって、メロディアスにタムをまわす。

 達郎のMCも長め。初日なせいか、ちょっと冗長なところもあったかな。
 あいかわらずの達郎節でまくしたてる。
 幼児が泣き出すと「よしよし」とあやし、ときおり飛び交う冷やかしの歓声へ、すかさず突っ込みを入れるのも余裕綽々だった。

 ぼくが座ってたのは、一階席中央。比較的いいポジションなんだけど・・・。
 なぜか演奏がダンゴ気味。音像がモヤけて、個々の楽器の分離は抑えていた。
 完璧主義の達郎だし、たぶん意識的なサウンドだろう。
 音像はあくまで全体の響きを生かし、歌声やソロ楽器を目立たせるPAだった。

 MCでもたびたび触れていたが、達郎本人はこの時代は20代の溌剌さよりも、売れずに苦労した経験やハードなライブツアーが印象深いそうな。
 選曲はアップテンポをあえてはずし、暗めな曲中心といえる。

 事前のインタビューで言っていたとおり、各メンバーのソロをところどころ織り込む長尺なアレンジも採用。
 だけど、この選曲をすべてフル・アレンジで演奏してたら、5時間あってもライブが終わらない。
 どれもこれも膨らませるのではなく、ポイントを絞っていた。

 やはり事前に匂わせていた「日がわり選曲」は、ソロ・コーナーで生き残るようだ。
 まだ初日だから、今後どう変化していくかはわかりませんが・・・。

 「日替わり選曲」はセットリストの10〜13。
 バンドのメンバーをさがらせ、おもむろにキーボードの前へ座る達郎。
 シンプルなコード弾きで「言えなかった言葉を」を歌い始める演出が、かっこいいことこのうえない。

 さらに、アルバムではスペクター風だった「2000tの雨」もキーボードの弾き語りなんだから・・・すごいぞっ。
 ハイトーンもなんなく歌いこなしていた。
 
 つづくアカペラ・コーナーでは、新曲ではなく「オン・ザ・ストリート・コーナー」に収録されていたテイクを再演する。
 ここは別の曲をやって欲しかった・・・ってのは贅沢かな。
  
 圧巻が「Touch Me Lightly」。
 この小品を、ステージのキモへ持ってきた。
 達郎のハンドサインでコーラスがブレイクを決め、メンバー各自のソロへなだれ込んでいく。
 この曲が大好きなぼくは、狂喜して聴いていた。

「歳なんで、テンポが早い曲はさわりだけね」と、おどけたあとで。
 ぐいぐいとメドレーをぶちかまし、いよいよ「Let's Dance Baby」が奏でられる。
 
 おなじみのクラッカーもはじけまくり、客席にテープが飛び交って綺麗だった。
 達郎も一瞬ウケて、音程が一節ほど揺らいでたっけ。

 そしてエンディングは、なんと「Circus Town」。
 パワー一発で押し切ったアルバムテイクとは異なり、たっぷりメロディを生かしたテイクは、申し訳ないがアルバムよりもずっとずっとよかった。

 アンコールが始まるまでけっこう待たせたけど・・・。
 達郎は真っ赤なシャツへ着替えて登場する。

 あえて定番の「Funky Flushin`」ははずしていたが、「Loveland Island」ではシャープな達郎のカッティングのソロもたっぷりある。
 そして「Ride On Time」。
 ライブには欠かせない「ステージ最後方からのノーマイクによるシャウト」も健在だ。

 衰えをまったく感じさせない。「Ride On Time!」と達郎の生声がホールに響く。

 さらに圧巻はバンドによる「Let's Kiss The Sun」。もー、至福の時です。

 バンドメンバーを下がらせ、テープによる多重アカペラ伴走での「Your Eyes」が朗々と響く。
 とうぜん、ここでエンディングだと思った。

 だけど、さらに達郎はキーボードへ歩み寄る。
 「おやすみ」だよ〜。
 ライブのエンディングで演奏するなんて。

 さりげなく達郎は歌い終わると、「おやすみ」と一声かけてステージを去っていく。
 あっというまの3時間だった。
 
 達郎ライブの予定調和なイベントは、ほとんどカットしていない。
 そのうえ、ぼくみたいなすれっからしのファンの予想を、いい意味で裏切る選曲と演出で大満足だった。

 ちなみに達郎のライブを見るのは3年ぶり。
 だけど、この音の「変わらなさ」はなんなんだ・・・。
 聴いててまったく違和感がない。三年前から、かけらも変わらぬクオリティだった。

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