LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
02/2/16 吉祥寺 Manda-la2
出演:東京ナミイBAND、ふちがみとふなと
マンダラ2の中は大混雑。立ち見がずらりと並び、息苦しいくらい。
めずらしくタバコを喫うひとが少なく、空気がきれいだったな。
ふちがみとふなと
(ふちがみ:vo,etc.、ふなと:b)
名前だけは知ってたが、聴くのははじめて。すばらしかった。
ウッドベースとボーカルだけの、簡素な編成。
だけど個々の音をじっくり味わえるぶん、些細な一瞬の音にすらひきつけられる。味わい深い演奏だった。
(セットリスト)<→オリジナルのミュージシャン>
1.Heaven
2.Paisley Park <プリンス>
3.春
4.おお、シャンゼリゼ <スタンダード・・・でいいのかな?>
5.愛はどこへ(I`ll be there) <ジャクソン5>
6.ワイルドサイドを歩け <ルー・リード>
7.Martha <トム・ウエイツ>
8.おみせやさん
9.I can`t turn you loose <オーティス・レディング>
10.日本娘さん <バートン・クレイン>
11.fairytale of New York <J-Finer-S.McGowanの曲(すみません、オリジナル知りません・・・)>
12.ゴミの日
冒頭ではふちがみの声が弱々しい。ピッチも震えるし・・・これが個性かと思ったが、4曲目くらいから声がしっかりしてくる。単に緊張してたのかな。
今夜はカバー集である最新アルバム「アワ・フェイバリット・ソングス」のレコ発ライブ的な位置づけらしい。
2,4,5,7,9,11がそのアルバム収録曲。
「Heaven」でまず耳をひきつけられた。とびきりのポップなメロディが、ウッドベース一本で弾かれる素朴なアレンジがいい。
これ、綿密にアレンジしても面白いポップスになるだろう。
2曲目のプリンスのカバーから、もうかれらの音世界に夢中になった。
ウッドベースは時折、エフェクターで音を変調させる。サイケな雰囲気が効果的だ。
ジェイムス・ジェマーソンばりのメロディアスなベースを弾きまくった(5)や、ぐいぐいつんのめるリズムが快感な(6)、グルーヴィな(9)など、味のあるベースだ。
(5)はなんだか奇妙なコード感だったけど。オリジナルもああいう和音だったっけ?
とはいえふちがみとふなとのインパクトは、ふちがみのかもし出すふんわりした空気感か。
おっとりしたMCは、どれもしっかりオチがついててさすが・・・。
ふちがみは歌うだけでなく、(1)でピアニカ、(2)や(9)ではトランペット型カズーを合間に演奏。
ほかにも(5)のタンバリン、(6)でタップなど、さまざまな小物を使って、アレンジに幅を持たせていた。
ボーカルでは(6)がかっこいい。何でもこの曲、北欧はボルダーのラジオでヘビロテとなり、ローカルヒットしてるとか。
英語の歌詞を小気味よく畳み込み、ぐいぐいひきずる歌がすごい。
さらにパフォーマンスでは(9)にとどめをさされた。
あのソウルレビューをたった二人で再現。
ふちがみはカズーでホーンをやりながら、ファンキーなボーカルをぶちかます。
そのうえ、腕をぶんぶん振り回しながらシャウト。両腕を高く上げファルセットで叫ぶ。
大真面目な演奏だけど、むちゃくちゃ強引なアレンジに客先は爆笑。
ぼくも大喜びしながら聴いていた。
とびっきり気に入った曲は、オリジナルの(8)。
サビでのふなとも加わったハーモニーがキュートで、隙間を抜群に生かした名曲だ。
ほのぼのしつつも、メロディがしこたまキャッチー。
のどかなイメージのCMソングに使われたら大ヒットしそう。
この曲、CD化されてないみたい。ちぇ〜っ。
かれらの演奏は約50分。翌日のライブに、ぜひとも行きたくなった。
東京ナミイBAND
(東京ナミイ:vo、鬼怒無月:g、早川岳晴:b、近藤達郎:key、田中栄二:ds)
さくっとセットチェンジが終わり、さほど待たせずにメンバーが登場した。
大混雑がつらくなってきたので、素早い進行は嬉しい。
このバンドになったとたん、さらに立ち見の人数が増える。
観客として、梅津和時の顔も見えた。
まずはテープによるアカペラの合唱。おそらくナミイの多重アカペラだろう。
荘厳なハーモニーが流れるなか、メンバーが順に登場し楽器を構える。
おもむろにナミイが登場。ザクザクリズムが刻まれ、ライブが始まった。
東京ナミイBANDとして、この編成でのライブははじめてらしい。
バックを固めるのはCoil+近藤達郎(fromラブジョイ)といった趣。
ボンフルからの付き合いな鬼怒無月がバンマス的な役割らしい。
しょっぱなから混沌とした雰囲気で演奏が炸裂する。
東京ナミイは派手なボーカルスタイル。英語の歌詞をシャウトしつづけた。
あえて音楽性を分類するなら、シンフォニック・プログレ風か。
ナミイ自身が好みの音像に対するビジョンをしっかり持っているようで、しょっぱなから一体感のあるサウンドだった。
どちらかといえば、キーボードに重点をおいたアレンジ。
鬼怒はエフェクターで歪ませた音で、断片的な演奏に終始した。
ほとんど弾きまくってくれず、残念・・・。近藤とのバトルを聴きたかった。
そもそも楽器のソロはほとんどない。
常にさまざまな声を使い分けて、東京ナミイが歌いつづける。
ぶっとくうねる早川のベースが、音に色気を出す。
田中のドラミングも、ハードロック風アレンジではぴったりはまった。
ぎっしり並べたキーボードを、近藤は繊細に使い分ける。
田中を除いた3人は、譜面に首っ引き。
若干こじんまりとまとまっていた。
もっともテクニシャンぞろいのミュージシャンなので、ふとした隙に的確なオカズを入れるから聞き逃せない。
一時間強のライブで、8曲くらい演奏。
MCで曲紹介は数曲のみ。「ルシフェル」(2曲目)、「ブラック・イズ・ザ・カラー」(4曲目)などを演奏していた。
ナミイの歌声は表現力豊かだ。
スキャットを盛り込みながら、どすの利いたシャウトからエンジェリック・ボイスまで幅広い。
きっちりアレンジされた演奏ががらがら表情を変える中、ナミイのボーカルも変化して多彩な音世界を披露した。
ステージ最後の曲は「ラブ・ミー・テンダー」。
ロリータ風に舌足らずな声でテーマを一節唄い、ハードに展開するアレンジ。
ラストではメンバーもコーラスに加わり「We
Love Rock`n Roll!」と連呼して本編が終了した。
アンコールもすぐ対応。
こんどはがしゃめしゃにアレンジを変化させた「ヘルプ」。
サビで甘く歌い上げられるまで、ビートルズの曲だと気がつかなかった。
3パターンくらいの音世界が、曲のブロックごとに変化する。
メロディは解体され、もはや別の曲だった。
「help me♪」と両腕を指し伸ばすしぐさがキュートだった。
エンディングはいきなり日本語に変化し「助けて〜!」と大騒ぎして終了。
東京ナミイの音楽を表現する点では、充実したライブだった。
そうそうたる顔ぶれのミュージシャンを使いこなし、自分の存在感を維持しつづけたボーカルのテクニックはさすが。
演奏へ即興性を盛り込み丁丁発止と戦うアレンジへ進化したら、壮絶なバンドになるだろう。