LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/2/15  江古田 バディ

出演:不破+片山+内橋+植村

 (不破大輔:b、片山広明:ts、内橋和久:g,?、植村昌弘:ds)


 BGMでコルトレーンの「ジャイアント・ステップス」が鳴っている。
 20時になろうかという頃、植村、内橋、片山の順でステージへ上がっていった。
 不破は一番最後にステージに登場。のっそりとウッドベースを抱え込む。

 「なに相談してるの?」
 ステージ上手でぼそぼそ話してる片山と不破へ、内橋が尋ねる。
 「いや、先にメンバー紹介をするかどうか」
 のんきな不破の言葉に苦笑した内橋は、いきなりエレキギターをかき鳴らした。

 内橋の演奏を生で聞くのは初めて。
 エフェクターをテーブルの横にずらりと並べ、せわしなく操作する。
 どちらかといえば電子音中心な演奏だ。
 ピックを口にくわえて爪弾きを多用、両足のペダルも使い分けてノイジーな音をばら撒いていた。

 ギターでメロディをほとんど弾かない。だから、たまにピック弾きする瞬間が新鮮だった。
 リズムは微妙にフリー。ジャストなビートを重ねる植村+不破と時々ズレて、多重リズムになっていた。

 とにかく今夜の演奏はすさまじい。
 セットリストを書くならこんな感じか?

1)インプロ(45分)
 (休憩)
2)インプロ(50分)
3)ハレルヤ(7分)

 正確には(1)の途中で"Goodbye pork pie hat"や、(2)の冒頭で"そーかなぁ"のテーマが断片的に流れた。(曲名にいまいち自信ありませんが)
 だからミュージシャンの中では、ひょっとしたらある程度構成が決まっていたのかも。

 ただ、聴いてると全てが即興に聴こえてならない。
 そのうえどこもかしこも、聴きどころ満載な演奏だった。

 サウンドの主導権は特に誰、と決めていないようだ。
 4人がそれぞれ対等に渡り合う。・・・いや、ちょっと植村は控えめだったかな。もうすこしぶち切れて、叩きまくって欲しかった。

 片山も豪放なテナーを吹きまくり。
 やたらに空間を埋め尽くさず、隙間を十分に生かしたブロウだ。

 不破のビートは常にどっしりとしている。少々音が埋もれて聴こえづらかったけど。
 時に素早く弦を弾くが、ほとんどは着実な低音を響かせていた。

 全般的に緊張感が漂う。メロディを片山が吹いたときだけ、一息つけた。
 あとは内橋のテンションに引きずられたか、ぴいんと張り詰めた即興が多かった。

 ここでサウンドに太い支柱を構築したのが植村。
 その場の音へ素早く反応して、的確なフィルを叩き込む。
 めずらしくメロタム2個を使い、すばやく強打する瞬間がしこたまかっこいい。
 まるでリズムボックスのように確かなビートを提示しつづけた。

 マシンと一番違うのは微妙に毎回パターンを変化させ、かつ雰囲気にピタリとはまっているところ。
 だからこそ、植村が主導権を握るような演奏が少ないのが惜しかった。

 全員がうねりながらテンションを上げ、ハイスピードでしばらく疾走。
 さんざん大暴れしたあと、すっとクールダウンし小音で次の盛り上がりを探り合う。
 そのパターンを繰り返し。
 ただし、どれもが似通った音像にならないのが素晴らしい。

 アイコンタクトを交わさずとも、時折ビタビタっとブレイクが決まる。
 片山+内橋+植村がいっせいに演奏を停止した瞬間、不破がすかさずノリのいいブギを弾く瞬間は、聴いててぞくっときた。

 だれもが無表情で演奏を続ける中、ときおり片山がにやりと笑うのが印象的だった。
 ビートにあわせて身体を揺らし、無造作にテナーを咥える。
 ぶっといロングトーンを吹き鳴らす中、高速で他の3人が雪崩れ込むアレンジもあったっけ。
 
 第一部中盤で、内橋が奇妙な楽器(?)を演奏してた。
 三脚に木の棒みたいなのを乗っけて、手に持ったウッドブロック風なもので棒を曲げる。
 同時に弓で棒を弾いて音を出す。ちゃんと音程もあった。
 音色は電子変調させているのか、まるでシンセみたいな音がする。
 あれ、なんて楽器なのでしょうか。ご存知のかた、ご教示お願いします。

 しばしの休憩をはさんだ後半。淡々と演奏がスタートした。
 冒頭で3人が勢いよく音をばら撒く中、断片的に片山がメロディを叩き込む。
 すかさず植村がタムの連打で応答。
 さりげないアレンジが、見事に決まっている。

 後半の即興も、前半と同様の構成だ。
 盛り上がった時がとにかく爽快で楽しい。

 植村のリズムパターンに合わせ、断片的に内橋がピッキングを重ねる。
 そのタイミングで不破も灰皿を床にほおり投げてユニゾンする、コミカルな一幕もあった。
 
 不破はそのあとベースを横におき、口笛吹きながらステージ上手の譜面台をセットする。
 準備が整うと、おもむろに手拍子をランダムに叩きつつ他のミュージシャンの演奏をあおっていた。
 ただ、あの譜面台は特に使っていなかったようだが・・・。

 植村の両足ペダルによるバスドラ連打のリフが、断片的に織り込まれる。
 たぶんすべてインプロだと思うが、シビアなリズムが演奏全体に統一感を与えていた。

 第二セットの即興は、尻切れトンボにがたがたっと終了。
 コーダに着地しそこねた内橋がちょっとコケてみせた。

 そして、メンバー紹介のあとでおもむろに片山がテナーを吹き鳴らす。
 ロマンティックな「ハレルヤ」のメロディ。
 ここまでテンション高く突き進んだだけに、なおさらしみじみ響いた。

 さすがに「ハレルヤ」は短め。
 金属的な内橋のギターも、ちゃんと音像にはまっていた。
 植村が神経質に、椅子を引き寄せていたのはこの曲でだっけな。

 演奏時間はいつもとさほど変わらないはず。
 だけどノンストップで駆け抜けたぶん、濃密さがちがう。
 おなか一杯に楽しめたライブだった。

 このメンバーの演奏って、とても刺激的だ。
 次のライブは・・・4/16のバディで片山+不破+内橋の面子でライブあるなぁ。
 内橋の本拠地が大阪でしょっちゅう見られる顔ぶれじゃないだけに、今後も貴重な編成になりそう。即興好きな人には美味しいライブだろう。

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