LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/2/1   西荻窪 Binspark

出演:是巨人、zuppa di pesce

 ひさびさの是巨人のライブなせいか、はたまたzuppa di pesceファンが大勢詰め掛けたか。
 こじんまりしたBinsparkは満員。立ち見もずらっと並び、30〜40人くらい入ったのかな。

zuppa di pesce
 (イトケン:ds、西村浩介:Low Analog Synth、堀越和子:High Analog Synth、古池寿浩:tb、マヒマヒ:ss)


 イトケンによるインストバンド。曲は全て料理の名前になっている。
 セットリストは、当日のチラシより。
 MCで「ぜんぜんメニューらしい並びになってないなぁ」と笑っていた。

(セットリスト)
1.brodo di pollo(チキンスープ)
2.Penne Bettola(ペンネ ベットラ風)
3.Le`latte(ミルク紅茶)
4.arancia(オレンジ)
5.cetriolini sottaceto(キュウリの酢漬け)
6.bollito di Manzo(ゆでた牛肉)
7.verdura in prinzimonio(スティック野菜)
8.suppli al telefono(ライスコロッケ)
9.sgombri in umido(ワインで煮込んだシチュー)
10.spinaci al burro(ほうれん草のバターソテー)

 ちょっとこじんまりまとまりすぎているのでは。
 変拍子も使ってるようだ。MUMUをシンプルにした感じかな。
 ドラムの手数が少ないせいか、かなり音がスカスカに聴こえてしまう。

 即興部分は特にないようだ。なのでなおさら、曲の出来に支配される。
 ちなみに、今日初演の曲も数曲あった。
 ドラムやベースのシンセが、もっとぐいぐい引っ張っていくほうがぼくの好み。

 3や6、9あたりの演奏が良かったかな。
 ベストトラックは3。
 バンドの音に一体感があり、ひきつけられた。演奏時間は約一時間。

是巨人 
 (吉田達也:ds、鬼怒無月:g、ナスノミツル:b)


 一年半ぶりのライブだとか。一昨年夏に聴いて以来かな。
 吉田はドラムの位置が、いまいち感覚と合わなかったらしい。
 演奏の間もバスドラの高さや、タムの角度、シンバルの位置などを微妙に調整していた。
 あの手数の多さを誇るドラミングも、繊細な打音感に支えられてるんだな。

(セットリスト)
1.You know what you like
2.Careless heart
3.Out of head
4.Preparation
5.新曲-a
6.即興演奏
7.新曲-b
8.Poet and peasant
9.On reflection
10.She came burning
11.Four holes in the sky
(アンコール)
12.Preparation
 
 1と2はもしかしたら逆かも。まずは二曲、メドレーで演奏された。
 鬼怒のギターはCDと微妙にエフェクターを変えているので、違うアレンジに聴こえる。

 フリーな要素はあまり入れていないようだが、演奏の合間にギターからテーマの旋律がふっと顔を出す。メロディを断片的に浮び上がらせるようだった。
 
 二曲終わったところで、吉田がすぐさまハイハットを調整する。
 すでに肩で息をしていた。いつもに比べ手数がすくない気がするけど。もしかして体調悪いのかな。

 3曲目は「Out of head」。バンド間では通称「ベンソン」と呼んでいるそうな。
 鬼怒のギターソロが炸裂する。硬質な音使いで、エレキギターから鋭いソロをぶちまけた。

 「ベンソン」とはギタリストの名前らしい。エンディングでその人風のギターソロを吉田が期待してたらしく、MCでつっこむ。鬼怒は「忘れてた」と苦笑してた。

 是巨人の音はハイテンションに疾走するけど、MCの雰囲気は妙に和やかだ。これもバンド色なのでしょうか。
 
 吉田はドラムスに専念。ボーカルは一切なし。
 ルインズに比べれば、バッキング中心の叩き方だ。ただしリフはあまりにも多彩。

 スティックのかけらを時折宙に舞わせつつ、せわしなく両腕が踊る。
 全般的に若干ラフだが、ナスノの着実なベースに支えられ、どっしりしたノリを構成していた。

 4曲目は「Preparation」かな。
 ギターリフとドラムのコンビネーションが複雑なアレンジらしい。
 演奏後に吉田に間違ってた、とまたしても鬼怒がつっこまれた。
 鬼怒は「6年やっててなかなか出来ない」とぼやく。
 
 お次は新曲。前回ライブで演奏してた曲かな?
 どんな曲か忘れてるので、新鮮に聴けた。
 
 ここで楽器チェンジ。めずらしいことにアコースティック・セットとなった。
 とはいえナスノはエレキベースのまま。鬼怒がアコギへ持ち替えるのみだが。
 吉田はドラムセットに座ったまま、足の間にダラブッカをはさみこむ。
 時折ハイハットやバスドラを踏み込みつつ、素早い手さばきで連打していた。
 
 アコースティック・セットの一曲目は即興演奏。
 鬼怒のインプロが主導権を持ち、あとの二人がリズムを合わせていく。
 果てしなくスリリングなフレーズが溢れ出る鬼怒のギターにあわせ、ぴたりとブレイクを決める。緩急共にきっちりと、彩りつけるのはさすがだ。

 5分くらい即興を続けた後、さくっと次曲へ雪崩れ込んでいく。
 これも新曲だそう。以前のライブで「明るすぎる」と吉田がボツらせた曲だろう。
 アコギなせいかスパニッシュ風味が強調され、たしかに軽快なメロディだ。
 低音部でリフを繰り返し、さっと数音で高く音が弾む。かっこいいな。

 吉田は途中でスティックを持ち出し、ダラブッカを足に挟み込んだまま
ドラムを叩きだす。
 エンディング間近で、ぽいっとスティックを放り投げた。
 再び手のひらで静かにダラブッカを連打。
 さりげないアレンジだが、効果的だった。

 いい曲だし、ぜひCDで繰り返し聴きたいな。
 とはいえ、数年間の活動で新曲が2曲だけだとすると、2ndCDはとうぶん先か。
 アコギのセットもかっこよかったので、「アコースティック是巨人」って企画で一枚作るのはいかがでしょうか。・・・ダメかなぁ。

 さて、再びセットはエレキギターに。ぼくが大好きな「Poet and peasant」だ。
 鬼怒のギターはぐいぐい鋭くなり、バンドのアンサンブルも一体感が増してくる。

 続いては「On reflection」をぶっとくぶちかます。
 サイケなフレーズが飛び交う「She came burning」をはさみ、「Four holes in the sky」で本編が終了した。

 この「Four holes in the sky」で、初めてじっくりとナスノがベースでソロを取る。
 吉田と鬼怒がめまぐるしくリフをばら撒く中、高音部を使って一音一音じっくりと鳴らす。
 素早いテンポのなかで、ぴたりと提示される一音。
 身体をねじりながら、ナスノは弦をはじく。シンプルですばらしいソロだった。

 本編は一時間強といったところか。
 迫力たっぷりなライブで、拍手がやまない。
 しばし待たせたが、再登場してくれた。
 
 アンコールは用意してなかったそう。
 すでに演奏したレパートリーを拍手でリクエストとって再演しよう、と吉田が提案。
 本編で鬼怒がうまく出来なかった4曲目の拍手が多く、「この曲っぽいな」と吉田が大笑いした。鬼怒がコケてみせる。

 余談ですが。アンコールを選ぶ時、吉田が口三味線で曲紹介するのが妙にかっこいい。
 冗談企画としてズビズバ(吉田のアカペラユニット)で、「口三味線の是巨人」ってやってくれないかな〜、とマヌケな考えが一瞬浮かびました。

 再演された「Preparation」は、本編よりもタイトに聴こえたが。
 もとよりぼくには複雑なコンビネーションの違いはよくわからずじまい。
 なお、鬼怒が吉田へ「ちゃんと出来てた?」と聴いたら・・・笑いながらちょっと首を捻ってました。
 
 ひさびさに聴いた是巨人だが、なんといってもインプロ巧者な鬼怒と吉田のコンビネーションが非常に刺激的。
 ナスノも着実にベースで盛り立てる。

 思い出したように活動する是巨人だが、この顔ぶれが一堂に会する機会はこのバンドのみなので、ぜひもうちょい積極的にライブやって欲しい。

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