LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/1/31   吉祥寺 Star-Pine`s Cafe

出演:COLIN BLUNSTONE & ROD ARGENT

 (Colin Blunstone:Vo、Rod Argent:Key,vo
  Jim Rodford:b,cho、Steve Rodford:ds、キース・ゼアリー(?):g)

 
 むちゃくちゃすばらしいライブだった。
 もはや理屈じゃない。耳に届く音の説得力か、それとも曲のパワーなのか。
 斜めに構えて見たら、いくらでもつっこめる演奏だ。
 だけど。聴いてて心が揺さぶられた。こんな経験、ひさびさだ。

 元ゾンビーズの主要メンバーであるコリンとロッドが、二人で作った新作アルバム「Out of the Shadows」をひっさげ、ツアーの一環として日本まで来てくれた。
 驚くことに、今回が初来日だそう。

 この日は2回公演。ぼくは仕事の都合で二回目のほうへ行った。
 正直、さびしい入りだろうとたかをくくってたのに。

 仕事が押して、21時ちょいまえにやっと会場へ到着すると大盛況。
 だいたい300人くらい入ったのかなぁ。立ち見がびっしり出ていた。
 フロアを椅子席にしてたせいもあるかな。いっそのことオールスタンディングにすればよかったのに。もちろんぼくは立ち見で聴いていた。

 観客の年齢層は幅広い。二人ともキャリアが長いし、最近はゾンビーズのCDも山のように出てるもんな。
 90年代前半頃、聴きたくてもぜんぜん売っておらずに右往左往と比べたら、えらい違いだ。

<セットリスト>
1.Andorra
2.This will be our year
3.I want to fly
4.Time of the season
5.Mistified
6.A rose of Emily
7.Keep on rolllin`
8.Hold your head up
9.Sunctuary
10.Home
11.Pleasure
12.I don`t beleive in miracles
13.Misty roses
14.Old And Wise
15.Care of cell 44
16.Indication
17.Tell her know
18.She`s not there

(アンコール1)
19.God save Rock`n Roll to you

(アンコール2)
20.Just out of reach

(アンコール3)
21.Summertime

 (1),(2)はおそらくこの曲。自信ないです。
 3曲目以降は曲名メモってたので、順番正しいはず。自信ないのは(15)(16)かな。

 最新アルバム"Out of the Shadows"から(3)、(5)、(9)、(10)の4曲。
 ゾンビーズの傑作アルバム"Odessey and Oracle"からは(2)、(4)、(6)、(15)。
 その他も多種多彩。二人のキャリアをすみずみまで見渡したセットリストだ。
 去年末のイギリス・ツアーとは、セットリストを変えている。
 (もしかしたら、ライブごとに変えてる可能性もあるが)

 プロモーターの前説に導かれ、開演をちょっと押してメンバーがステージへ登場。
 ステージ中央にコリンがすっくと立ち、下手にロッドのキーボードがセッティングされる。
 バックのメンバーはリズム隊のみのシンプルな構成。
 
 何の前触れもなく、いきなり演奏をはじめた。
 アップ・テンポの軽快な曲なのに。ここでひとつの不満が・・・。
 2階席で聴いてたせいか、PAがぼろぼろ。全般的に音量が小さく、迫力がない。
 バランスも極端で、ソロ以外でギターやベースの音がほどんど聴こえない。

 コリンもあまり声が出ていないようだ。
 今日二回目のセットなのにな。
 
 いまのうちに、マイナス・ポイントを全部書いておこうか(笑)
 演奏自体も、さほどうまいとは思わなかった。
 それなりにタイトだが、緊張感が感じられない。ロッドのソロも手癖メインで、即興性には欠ける。
 コーラスもしょっちゅうコケて、ピッチもタイミングもあやふやだった。

 でも、もいちど強調します。
 そんなマイナス・ポイントを全て吹き飛ばすほど、今夜はすばらしいライブでした。

 のっけからギターやキーボードのソロをふんだんに入れて盛り上げる。
 もっとも観客が静かだったから、メンバーもやりにくそうな感じだった。

 2曲目はキーボードの軽快なイントロから始まる。
 その曲が終わったところでロッドによるMC。ほぼ全部、MCは彼がつとめていた。
 英語なのでところどころしか聞き取れない。最初は気を使ってゆっくり喋ってくれたが、ステージ終盤ではリラックスしたのかな。
 かなり早口に(ぼくにとっては)なっちゃって、メンバー間でジョークも飛ばしてた。
 演奏の前か後に、どれも丁寧に曲目紹介をしてたのが印象にのこる。

 (3)は演奏前に「これは日本でしか聴けないんだ」ってロッドが前置き。 ("OUT OF THE SHADOWS"の日本盤ボーナスとして収録されている)
 しっとりとしたキーボードをバックに、コリンが歌う。
 ハイトーンは多少苦しそうだが、きれいなメロディが楽しかった。
 
 で、いきなり"Time of the season"。ここに持ってくるか。
 手拍子をベースのジムがあおる。もっとも客ののりはいまいちだったが。
 
 MCで紹介されてわかったが、ジム・ロッドフォードはゾンビーズの結成に尽力し、アージェントのベーシストだったその人。
 "OUT OF THE SHADOWS"でもベースで参加してる。

 ドラムはジムの息子なのかな?アージェントのアルバム"All Together Now"(1972)のジャケ写真に写ってた少年だ。
 「こんなに大きくなったんだぜ」って紹介されてたっけ。

 ギターは名前がよく聴き取れませんでした。コリンの1stソロ"One Year"(1971)に、ストリングスで参加したそう。他にはニック・カーショウと演奏したことあり、と言ってたな。
 坊主頭なので「アメリカ軍帰りさ」とロッドに茶化されてた。
 
 コリンの喉が力強くなったのは(5)くらいから。
 演奏も小粋にびしっとキメた。
 いっぽう、たいがいの曲でロッドのキーボードソロが挿入される。
 オルガンやピアノ風の音色を使い分け、豪快でほんのりファンキーな演奏だった。

 そして。(6)曲目を聴いた時、とっても胸が熱くなった。
 ロッドのキーボードだけのシンプルな伴奏で、コリンがあのメロディを歌い上げる。
 別にパワフルってわけじゃない。コーラスだって、ボロボロなんだよ。なのに・・・。
 コリンが高らかに喉をふるわせるだけで、心底心が奮える。
 この曲だけで、今夜来たかいがあった。

 つづく(7)、(8)はアージェント"All together now"に入ってる。
 レコードのアレンジ同様、(7)の前にホンキートンクっぽいキーボードのソロが繰り出された。ここでのメインボーカルはロッド。
 "Hold your head up"ではコリンのハイトーンが、歌にぴったり似合ってたな。

 「ここでペースを変えます」とロッド。
 スティーブがドラムからボンゴに持ち替え、バスドラの前に座り込む。ギターもアコースティックにかわり、"OUT OF THE SHADOWS"から2曲。
 "Home"は好きな曲。演奏してくれて嬉しかった。

 もう彼らのペースに乗せられてた。
 続く"Pleasure"は、アージェントの2nd"Ring Of Hands"(1971)収録曲。
 オルガンにボーカルに、ロッドが大活躍だ。

 この曲でビートを速めに持っていきながら、またテンポがゆったりめになった。

 ぼくが大好きな曲、"I don`t believe in miracles"だ。わーい!
 コリンの2ndソロ"Ennismore"(1972)のトップを飾る曲。
 大サビのファルセットはちと辛そう。でも、そんなことどうでもいいや。

 甘くか細く、そして優しく。コリンはメロディを綴っていった。
 こういうゆったりした曲だと、歌声の細かなニュアンスまでたっぷり楽しめる。
 PAバランスの悪さが逆に、他の楽器がかぶらぬ利点となって、なおさら歌を堪能できた。

 "Misty roses"ではアコギが伴奏。前半部は"One Year"のアレンジそのまま。
 中間部はロッドがキーボードで代用してたかな?すみません、夢中で聴いてて記憶があいまいです・・・。

 「静かな曲はこれで最後。次に演奏するのは、ぼくがこのバンドで歌った中でも大好きな曲です」
 そんな前振りで歌ったのが、アラン・パーソンズ・プロジェクトのレパートリー、"Old And Wise"。"Eye In The Sky"(1982)に収録されている。
 この曲は初めて聴いた。そういやコリンはアラン・パーソンズにも参加してたんだっけ。

 「さあ、ここからはゾンビーズ大会だ!」
 ロッドが宣言する。
 初来日なら、カーナビーツでお馴染み「I love you」をやるかなと思ったが、セットリストからは外れてた。
 
 "Tell her know"と"She`s not there"。黄金の2連発が嬉しい。
 もちろんこの曲は、両方ともリアルタイムで聴いたことない。
 とはいえ甘酸っぱい雰囲気が、擬似ノスタルジーが刺激された。
 10代で聴いた時の、わくわくした気持ちがよみがえる。
 ロッドやジムのコーラスはコリンと溶け合い、極上のハーモニーを作り出した。
 
 あっけなくメンバーはステージを去る。ここまでで、約1時間20分くらいかな。
 アンコールにはすぐさまこたえてくれた。

 「この曲はKISSも演奏してるけど。俺たちがオリジナルなんだ、俺たちがねっ」
 コミカルに紹介した"God save Rock`n Roll to you"は、アージェントの4th"In deep"(1973)より。
 ミドル・テンポでの演奏。聴くの初めてで思い入れはないけれど。大音量で聴いたら気持ちいいだろうな。

 一曲演奏したらまたすぐステージを去っちゃう。
 もちろん拍手はやまない。ステージ奥の出入り口から、ひょこっとメンバーが顔を出して覗く。
 いったん落ちた舞台の照明も明るくなり、もいちどメンバーが出てきた。

 2回目のアンコール、"Just out of reach"は1965年の映画"Bunny lake is missing"にゾンビーズが提供した曲。
 たぶん、ここで本当に終わりにするつもりだったんだろう。
 ステージ前の観客と、コリンやロッドが握手をしている。

 ところがまだまだ拍手はやまない。
 しばしの時間たって「無理かなぁ」と思いつつ、拍手を続ける。
 すると、ありがたいことに3回目のアンコールへ応えてくれた。
 
 「これが本当に最後の曲だよ。ぼくらが最初にレコーディングした曲です」
 ほんのりジャジーに"Summer time"。
 ゾンビーズ流の、線の細いロマンティックなムードが拡がった。
 
 終わったのは実に22時40分頃。大満足です。
 混んでて聴く環境がしんどいけど。コリンの喉に癒された、幸せなひとときでした。

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