LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/1/25   高円寺 Show Boat

   〜無限均衡率の彼岸 vol.1〜
出演:MOST、RUINS、MELT-BANANA、Upik Sun


 オールスタンディングで、すさまじい混みっぷり。
 仕事の都合で遅れてしまい、ほぼ一番後ろから聴くことになった。
 ところが最後方からだとステージの高さが低く、ほとんどミュージシャンが見えやしない。特にぼくが注目したかったドラムは絶望的だった。

 しかたなく、店内奥にあったステージのモニターを眺めながらライブを聴く。
 ぼくはテレビを見に来たんじゃないんだい。

Upik Sun(?〜20:00)
 (青田康史:vo.g、植村昌弘:ds、津尾吉祟:b)

 本企画を主催したバンド。今夜のライブがデビューライブじゃないかな。
 元Qwangle Wangleの青田が編成したトリオです。
 ベースの津尾は、スネ尾でスティックを演奏してるメンバーだそうな。

 なんと言っても、植村昌弘の参加が嬉しい。
 Qwangle Wangleは以前一度ライブを聴いたが、プログレよりの音楽だっただけに。MUMUに続く、複雑な変拍子ドラミングを楽しめると思ったから。

 ちなみにQwangle Wangle時代から、青田は今夜のような対バンぎっしりのライブイベントを積極的に企画している。
 出演者はベテランまで目配り効いたいい企画が多いので、ぜひ今後も続けて欲しい。

 前置きが長くなった。
 ライブハウスへ到着したのは19時40分頃。すでにライブは始まっていた。1〜2曲、聴きそびれてると思う。

 中へ入ると、植村のタイトなドラミングがまず耳を引く。ただ、人の頭でドラムがまったく見えないんだよね・・・。ちぇ。
 しかたなく、モニター8、ステージ2くらいの割合で眺めてた。

 Upik Sunの音はかなり荒削りっぽい。
 テクニック的にはタイトでキメがびしびし決まるが、どこか音が硬く、のりを感じにくかった。

 予想よりも変拍子は控えめ。スピード感もさほどってところ。
 ギターがところどころ叫びながら、ユニゾンでフレーズをきめていく。
 ぼくが聴き始めてから、3曲くらい演奏したかな。

 ブレイクで高速リズムを叩き込む植村のドラミングは楽しいけど。
 逆にテクニックに支えられた、彼のリズムがあってこそ音像が支えられてたかもしれない。

 津尾の演奏ははじめて聞いたが、かなりのテクニシャン。
 即興ぽい部分がまったく感じられなかったのも残念。ま、これは即興好きな僕の好みだけど。

 どんな音楽をやりたいのか伝わりづらく、プログレのカバーをやってるように聴こえる。(ちなみに、曲はオリジナルばかり。青田の曲かな)

 さらにステージを重ねたら音が固まるだろう。
 惜しいが、ぎこちなさを感じるステージだった。
 
MELT-BANANA(20:10〜20:40)

 メルトバナナはTZADIKのライブ盤を聴いたことあるが、いまいち楽しめなかった。
 なので混雑を避け、店内の一番奥へ。モニター10、ステージ0と、まったく生演奏が見えない位置で聞いてました。

 ライブだと、CDと違って確かに迫力ある。パンキッシュなリズムにのって、けたたましく叫ぶ女性voの音像は、わっさわっさのりやすい。
 実際、モッシュも少し起こっていた。

 メロディがほとんどなく、どの曲も同じように聴こえる。JBみたいだなぁって、のんきに聴いていた。
 全部で10曲くらい演奏してたろうか。
 
RUINS(20:50〜21:20)
 (吉田達也:ds,vo、佐々木恒:b,vo)


 これが一番の目当て。ぜひ生で見たいので(ライブに来て、この言い草は変だけど)人の隙間を見逃さず、じりじり前へ行った。
 おかげで、佐々木の上半身と、吉田の首がかろうじて見える位置を確保。

 セッティングをするうちに、ドラムのピッチがカンカンあがっていく。
 毎度の事ながら、期待がぐいぐいあがる。
 音の確認でスネアをかろやかに連打するだけで、むちゃむちゃかっこいいぞ。

 「ルインズです」と一言、吉田が挨拶してライブが始まった。
 今夜はたぶん、新曲の連発。最新モードのルインズ体制に入ってるようだ。

 一曲目は「KIPPSSIDAMN」。佐々木のシャウトもきっちり響くPAだ。
 すみっこからステージを覗き込んでたせいか、ボリュームもさほどでかく感じない。細かい音までよく聴こえた。
 吉田の手数はアルバム版より1.3倍くらい多い。
 ボイスを多用しながら、超高速フィルを叩きこむ。

 てっきりメドレーで押し切ると思いきや。一曲一曲、しっかり区切る構成だった。
 2〜4曲目は、多分新曲。4曲目のメロディは、去年マンダラ2で聞き覚えある。

 佐々木が2曲目を演奏前に、サンプリングの準備をする。
 ステージに空白が生まれちゃって、「あ、いまサンプリングしてます」って、吉田がさくっと説明してた。
  
 二曲目あたりから、インプロを挿入してたようだ。
 ずしんと重たい雰囲気で、びしびしキメが入る。
 フィルの合間に視線がすっと二人の間を交錯し、フリーなビートがステージに漂う。

 吉田のボイスを思いっきり前面に出したのが3曲目。
 イントロは無伴奏。吉田が磨崖仏語でオペラ風に歌いまくる。ドイツ語っぽい響きを多用していた。
 楽器演奏が加わるとメドレー風に、音の場面転換がひっきりなしな構成だった。
 
 お次の4曲目は、テーマで吉田が歌うポップなフレーズがいかしてる。
 未レコーディングの新曲だと思うんだけど・・・。高円寺百景で演奏しても似合いそうなメロディだ。

 5曲目のイントロが始まった瞬間、佐々木は「マハビシュヌ!」と叫ぶ。
 以前演奏した「マハビシュヌ・オーケストラ・メドレー」かな。
 だとしたら聴くの二回目だけど。ちと記憶に引っかからない。
 中盤でいくぶんテンポを落として、じっくり演奏してた。

 ラストは「YAWIQUO」。アルバム版よりテンポを上げ、かなり手数が増えていた。
 佐々木と吉田のボーカルが爽快だ。
 中盤くらいかな。エンディングっぽい演奏になったとき、佐々木が屈みこんで再び弦をはじいた。
 その瞬間、吉田がにやっと笑う。あれはなんだったんだろ。

 二人ともまったく譜面を見ずに、アルバム版そのままの複雑な構成をライブで演奏する。
 いいかげん見慣れた風景だが・・・あらためて、すごいや。

 スタンディングで疲れてきたが、たっぷり満足したライブだった。

MOST(マイナス山本精一、プラス大友良英)(21:40〜 ?)

 (Phew:vo、山本久土:g、茶谷雅之:dr、西村雄介:b ゲスト:大友良英:g)


 チラシにメンバーの名前がなかった。もしメンバーの名前が違ってたらごめんなさい。
 今夜のMOSTは山本精一が欠席した変わりに大友良英が参加という、貴重な編成でのライブ。

 ただ、この頃には僕の体調がぼろぼろ・・・しみじみしんどかった。ルインズで張り切りすぎたかな。腰がむちゃくちゃ痛くて、再びモニター10、ステージ0のすいたスペースで聴いていた。

 ライブが始まってみると。MOSTが一番いわゆる「バンド」っぽい演奏だった。
 ステージ両端に立ったツインギターがノイジーに、ザックザクとストロークで刻むのがむちゃくちゃかっこいい。
 
 phewは身体をせわしなく左右に揺らしながら、ドスを効かせて歌いだす。
 MOST聴くのはじめて。いわゆるPHEW節が全開みたい。
 狭い音域で、軋むように平板なボーカルスタイルだった。
 曲間で「ありがとう♪」と挨拶する時は、可愛らしい声。そのギャップが妙に面白い。

 大友良英のギターは、特にノイズを強調していた。ゲストって遠慮も特にない様子。
 気負わずに、リズムと豪音を半々くらいの配分で披露する。
 二曲目ではエレキギターを肩からはずしてしまい、アンプにぐいぐい押し付けフィードバック・ノイズをばらまく奏法も多用してた。
 
 だんだんしんどくなってきたぼくは、3曲くらい聴いたとこで出口手前へ移動。
 大友がギター弾いてるのを生でじっくり見る。
 曲によっては、アンプの前でギターを振り子のように動かし、ノイズを引き出していた。
 ただ、音量自体がでかいので微妙な音色まではわからないや。

 5曲くらいで、辛さが限界。phewのボーカルスタイルは、気分悪い時に大音量で聴くと、相性があわないようだ。
 うぐう、腰が痛いよ・・・。ずしんと響く低音が心地よかったのはこのあたり。

 やむなく22時過ぎに、ライブ途中で脱出。惜しいことした。
 大友良英の豪音ギターを堪能できるいいチャンスだったのに。

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