LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/1/22  新宿 ピットイン

出演:不破NIGHT
 (不破大輔:b、川下直広:ts、太田恵資:e-vln、藤井信雄:ds
 飛び入り:佐々木彩子:vo,p)


 渋さ知らズ関連としては珍しく「不破大輔」の名前を前面に出したセッション。たいがい、不破+だれだれ+だれだれ、みたいな形で告知されるので。今回のセッション名に、あんまり深い意味はないんだろうが。

 今回は不破+川下+藤井という、ときどきセッションしてる面子に太田が加わった形か。
 ちなみにチラシにクレジットされてた加藤崇之は欠席だった。

 川下と太田のツイン・バイオリンによるデュオを期待してたが、今夜は川下がテナーのみで押し通して叶わず。残念。
 ちなみにソプラノも準備してたが、吹かなかった。
 「TOKI」か「海」をやってくれないかな、と楽しみにしてたんだが・・・。
 
 ライブは8時過ぎくらいに始まった。観客は20〜30人くらいか。そこそこの入り。

 まずは無伴奏で川下が、テナーに悲鳴を上げさせる。
 軋みながら音がサックスから搾り出された。
 一曲目はフェダインのレパートリーだった「カプリソ」。
 
 太田のバイオリンは、5弦のエレクトリック仕様だ。
 サックスの後ろで、ウクレレのように弾く。
 まるで川下がエレクトリック・バイオリンを弾く時みたいだった。

 しばしのサックスソロのあと、びたっと見事なタイミングでリズム隊が加わる。隙のない演奏はさすが。
 
 今夜の不破はウッドベースのみ。
 各メンバーがフルボリュームではじけると、さすがに埋もれがちだったが。基本的にはグルーヴィな低音を堪能できた。
 
 一曲目からサックス、バイオリン、ドラムスとたっぷり時間を取って、おのおのソロを弾きまくる。
 太田はソロになると真剣な顔で、丁寧に弓弾き。
 年末コブラでの大騒ぎが印象深いだけに、妙に面白かった。

 藤井のドラムソロは、かなり手数が多い。
 オーソドックスなジャズ・ドラマー風ソロ。盛り上がるにつれ、テンポがだんだん早くなってくる。
 最近、植村昌弘のようにテンポ一定でフィルの多彩さを聴かせるドラミングを中心に聴いてたから、ちょっと違和感あったかな。

 一曲目だけでたっぷり20分かける。
 二曲目はたぶんスタンダード。曲名不明です・・・。
 ここで初めて不破がソロを取った。
 うなりながら激しく弦をひっぱたく、おなじみな高速ベースソロ。
 コード進行を踏まえつつ、巧みに得意のフレーズへ誘導するソロを組み立てていた。

 ベースソロになると、ドラムも演奏を止めて無伴奏になる。
 静まり返った店内に、ひたすら低音が打ち込まれる。

 この曲もたっぷり時間を取って演奏された。30分近くやってたかな。
 川下が激しく身体を揺らしながら果てしなくサックスと格闘する。
 だんだん音が太くなり、迫力が出てきた。
 
 太田のソロも、このころからぐいぐい熱がこもった。
 弓の毛を何本もほころばせ、馬の尻尾みたいに振り乱しながら激しくバイオリンに弓をきしらせる。
 川下と太田のホットなソロには、たびたび拍手が飛んでいた。

 着実で歯切れのいい、藤井のドラムも聞き逃せない。
 はでな技こそ織り込まないが、細かな音使いでシンバルを的確に叩く。
 ソロの合間を縫った、見事なタムのフィルもよかったなぁ。 

 この2曲で最初のセットは終わりかと思いきや。
 おもむろに「ベサメ・ムーチョ」を始めた。
 ほのぼのした雰囲気で、リラックスしながら聴いていた。
 
 演奏終盤で太田がメガホンを取り出し、メロディをいろいろ唸る。
 サウンドを邪魔しないよう音量が控えめで、いまいち何を言ってるかわからなかったけど。
 エンディングでは「ベサメ・ムーチョ!」と高らかに吼えた。

 第一部だけですでに1時間ちょい演奏。
 40分くらい休憩後のセカンド・セットがすごかった。

 まずは飛び入りゲストで佐々木彩子が登場した。
 藤井とは初共演らしい。演奏前に、丁寧に挨拶してたっけ。
 そして生ピアノを弾きながら、唄を一曲(曲名不明です、すいません)。

 次はおもむろにカウントを取り、渋さの「股旅」が始まった。
 川下がぶっといテナーで、伸びやかにテーマを吹く。
 わずか5人でのシンプルな「股旅」もいいもんだ。

 佐々木はピアノでのソロも披露する。
 グリサンドをはさむコード弾き中心で、どちらかといえばオルガンやシンセよりの展開だった。
 パワフルにコードを叩くのも爽快だが、メロディ中心のソロも聴いてみたかった。

 二曲で、佐々木は再び観客席へ戻る。
 ここからメンバーのテンションは右肩上がりで駆け上った。
 
 選曲は「ラジオのように」や「至上の愛part2」など馴染み深い曲。
 とくにMCもなく、3曲続けて吹きとおす。(あと一曲は曲名不明でした)

 藤井のテンションがすごい。
 サングラスをかけ無表情に叩いているが、かなりのハイテンポ。
 せわしなくシンバルを鳴らし、いつのまにかハイハットも荒っぽい。
 第一部では左足だけが常にクールで、規則正しくハットを踏んでいたのに。

 太田の弓も、ソロを取るたびぷつぷつ糸がほつれていく。
 時にエフェクターで音を歪ませ、すさまじいスピードで弾きまくっていた。
 
 すでに時間は22時半に近づく頃。あと一曲で終わりかな。
 川下が不破と二言三言相談し、ろうろうと無伴奏で「平和に生きる権利」を奏でた。
 
 藤井が盛り上がったのか、ここぞとばかりに倍テンポでドラムを叩き出す。
 ハイテンションぶりが小気味いい。
 とても生き生きして、賑やかな「平和に生きる権利」だった。

 エンディングでは再び川下が無伴奏でテーマへ戻る。
 テンポを落とし、ゆったりとメロディがステージに広がった。
 
 不破がメンバー紹介して、あっさりステージを降りようとするが。このままじゃおさまらない。
 盛り上がった気分のまま拍手をしていたら、再び客殿が落ちる。
 嬉しいことに、すぐさまメンバーがステージへと戻ってきた。

 アンコールは「レイディズ・ブルーズ」。
 川下のテナーは、切なくメロディと格闘した。
 太田は曲を詳しく知らないのか、テーマの部分で弦を爪弾くのみ。
 ソロになったとたん、すばらしく生き生きしたフレーズで畳み掛けていた。

 エンディングで、ふたたび太田がメガホンを取り出す。 
 川下らがコーダをきめるなか、「レイディズ・ブルーズ〜!」と叫んだ。
 すでに時間は23時前と、ずいぶん盛りだくさん。
 
 曲目も、演奏も。とくにとっぴなことはやっていない。
 この面子によるライブへ何度も足を運んだ人なら、驚くようなことはやってないだろう。

 ただし。今夜のステージは確かに何かが違う。
 暖かく、わくわくする瞬間がいっぱいな夜だった。

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