LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
02/1/19 西荻窪 アケタの店
出演:明田川荘之
(明田川荘之:p,オカリーナ)
「明日早いんだよな。今夜は早めに演奏するか」
明田川荘之がスタッフへ言ってるのが聴こえた。
演奏前にあちこちの電球を消し、アケタにしては薄暗いライティングに変更する。
観客はボチボチ来店し、6〜7人の入りか。
明田川は0時を15分回った頃。ピアノの前にそっと座り、前触れも何もなくピアノを弾き始めた。
(セットリスト)
1.I close my eyes
2.越後の乳配り
3.My Foolish Heart
4. ?
5.大感情
6.テツ
7.プレース・エバン〜アケタズ・グロテスク〜 ?
MCで曲目紹介をしてくれて、セットリストがあらかた判明しました。
1と3がスタンダード、5は三上寛の曲。あとは全て明田川のオリジナルになる。
ごつごつしたタッチでピアノを弾く。テンポはかなり速め。
ときにラフな感触がした。
明田川がリズムを取る足踏みが、かすかに聞こえる。
唸り声も、かすかに口から漏れていたようだ。
一曲終わり、ぺこりと頭を下げる。
観客の拍手に応えるのももどかしそうに、オカリナへ手を伸ばした。
しばしの間、しみじみ吹く。
2曲目もけっこう荒っぽかったけど。日本情緒がピアノからこぼれ出す好演だった。
フリーな演奏にもちらりと立ち寄り、10分くらいかけての長めに弾く。
続くスタンダードは、ぼく自身がその曲をよく知らなかった。
さらに明田川のピアノからこぼれる雰囲気で、ついつい昔の歌謡曲を連想しながら聴いてしまった。
明田川の表情はあくまで真剣。そっち方面への遊び心を考えながら弾いてないだろう。
ソロの合間もテーマの断片が浮び上がる。
あの「私バカよね〜。お馬鹿さんよね〜♪」ってやつ。
ひとりで演奏しているから、ソロ回しのリズムも小節数も気にする必要がないんだろう。
奔放に鍵盤へ指を走らす。もちろん、明田川がよくやる奏法も時折織り込む。
グランドピアノの中に手を突っ込み高音弦の爪弾きや、低音弦を手のひらで叩いて響かせたり。
テーマの旋律からアドリブへ戻る時も、グリサンドで強引にソロへ展開を促したりもした。
4曲目も、たぶんオリジナルだと思う。このあとのMCで言った曲名は聴き取れませんでした。
ピアノを弾く前に、ひとしきりオカリナのソロ。「スモール・パピヨン」風の旋律だった。
いきなりフリーに展開したのがこの曲。
唸りこそ控えめだが、鍵盤を乱打し腕を叩きつける。
静まり返った店内に、ピアノのクラスターノイズが響き渡った。
ここに到っても、まだどこかせわしないそぶりを感じる。
冒頭に明田川とスタッフの会話が聞こえてしまい、ぼくが妙に意識しすぎなのかな。
もともと深夜ライブで、めったにMCをしないのに。
4曲終わったあとで、いままでに演奏した曲をずらずら紹介した。
ちょうど1時くらいだったかな。
夜が明けた日曜日には、埼玉で三上寛と共演ライブだとか。
「練習を兼ねて三上寛の曲を。メドレーで今夜最後の曲。
三上寛の曲と同様、東北をテーマにした『テツ』をやります」
つぶやくように喋ると、おもむろにピアノを弾きだした。
オリジナルを知らないので、どのように三上のオリジナルを料理していたか不明。
どちらかといえば唄の伴奏っぽい。素朴なコードの響きが耳に残る演奏だった。
外の道路を通る、車の音が聴こえる。
地下のアケタまで音が届くなんて。
それくらい、静かなピアノの演奏だった。
「大感情」をひとしきり弾いた後、いきなりグリサンド。
唐突に次の曲へ繋げる。
「テツ」は過去にピアノソロの深夜ライブを聴いた時、ラストでがしんがしんのクラスターノイズに変化したが。
今夜はエンディングへオカリナのソロを持ってきた。
大ぶりのオカリナを身体に抱え込み、フレーズを訥々と吹く。
しだいに指さばきが早くなってきた。
素早く小さなオカリナへ持ち替え、どんどんテンポが上がっていく。
足踏みの音をドラム代わりにして、たっぷりときれいなソロを聴けた。
興が乗ったか、演奏は続く。
日曜日のライブ会場「プレース・エバン」の、近頃他界したマスターに捧げるため、最近作った曲だそうだ。
先日のセッションでも演奏していたバラード曲。やっと曲名がわかった。
和音の響きが心地よいこの曲は、ソロピアノだからこそコード感をたっぷり楽しめる。
じわっと暖かさが伝わる演奏だ。
まだまだライブは終わらない。メドレー形式で「アケタズ・グロテスク」へ繋げた。
ダウンビートを強調したメロディが、ピアノソロだとすばらしくスリリング。
ここで再び、激しいクラスターノイズが炸裂する。
何度も何度も、肘ごと鍵盤をぶん殴った。
普段はこの盛り上がりでエンディングなのに。
さらにメドレーが続いたからびっくり。
この曲は、ひょっとしたらスタンダードかも。タンゴっぽい雰囲気だった。
あっけなくライブが終わるかと思わせ、明田川がピアノを離れたのは夜中の2時前。
実に二時間弱にわたる、盛りだくさんのライブとなった。