LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/1/19   西荻窪 アケタの店

出演:片山広明セッション 
 (片山広明:ts、斉藤”社長”良一:g、立花泰彦:b、植村昌弘:ds、
  飛び入り 川口義之:as)


 片山広明は月に一回渋谷で,「Instant groove」と銘打ったセッションを精力的に続けている。
 今回はそれのアケタ版かな。ぼくは片山が斎藤良一と共演するのって、はじめて聴く。立花泰彦とのセッションは、以前彼が緑化計画に飛び入りした時以来か。

 この日は裏で宗修司(SO-BAND)の追悼ライブがあり。どっちに行こうか迷ったが、二度と聴けないかもしれぬ面子のこちらを選んだ。
 (ちなみに片山のHPでは、同メンバーによる二回目のセッションを匂わせている。やた!)
 観客は10人弱と言ったところか。

 「そろそろやろうか」と片山がメンバーに声をかけ、客電が20時頃落とされた。

(セットリスト)
1.Drunkenstein
2.Blue Monk
3. ?
4.フリー〜黒いオルフェ
 (休憩)
5.Hallelujah
6.気分はオールマン
7.Lady`s Blues
8.So-Kana

 1と8は片山のオリジナル。92年のソロアルバム「そ〜かなぁ」に収録されている。
 2はモンクの曲。3もモダンジャズのスタンダードかな?4の「黒いオルフェ」も含め、2〜4は僕の記憶だより。ひょっとしたら違うかもしれません。

 しょっぱなの「ドランケンシュタイン」から、テンションがトップスピードで始まる。
 植村と斎藤の飛ばしっぷりは、ほとんどハードロック。
 ギターアンプの音がでかく、片山がフォルテシモで吹いてやっと聴こえるくらい。ベースはまったく聴こえなかった。

 アップテンポのソロがいきなり爽快だ。
 片山のテナーは、ぐいぐい音が太くなる。
 ギターとドラムのコンビも強力。植村はビートを刻むよりも、ひたすらフィルを叩きつづけている感じだ。
 多彩なオカズを立て続けに披露し、まったく飽きなかった。

 斎藤は途中で一本、弦を切る。新しい弦に交換中、さっと植村がドラムソロ。
 テクニックに頼らぬ、メロディアスなソロだった。

 「ドランケンシュタイン」が終わったとたん、片山が「ギターの音がでかいよ」と笑う。
 斎藤が苦笑しながらボリュームを下げ、そこからアンサンブルとして音が聴きやすくなった。

 曲の終盤で、再び弦を切った斎藤が交換の間、片山が「しゃれたMC」を植村にリクエスト。植村は斎藤との思い出を語っていた。
 なんでも学生時代の頃から共演してたそうだ。
 すばやく弦交換した斎藤いわく、当時はDX7で植村がチック・コリアを弾いてたとか。ドラムだけじゃなかったんだ。初めて知った。

 2曲目からはギターも音量を落とし、エフェクターを通さない生っぽい音で演奏する。
 スタンダードをしっとり吹くと、片山のロマンティックさが前面に出るようだ。
 あまりフリーキーに響かせず、旋律を重視したソロだった。

 立花のベースも聴こえてきた。かなりオーソドックスなジャズっぽいプレイ。
 それほど音数は多くないが、グルーヴを鷲掴みにする低音だ。

 斎藤との音の絡みが面白いのか、植村が終始大笑いしながら叩いてたのが印象的だった。
 エンディングでは四人全員がテーマを静かにユニゾン。
 さりげないアレンジだが、どこか奇妙な響きで効果的だった。

 いちおう片山の前にはマイクが立っている。
 ところがギターとの音量バランスがとれたせいか、ソロになるとピアノに寄りかかる風情でテナーを吹く。
 斎藤のソロへ、ときおり無造作に音をカウンターで差し込むあたりがかっこいい。
 
 3曲目はg,bのみの編成から静かにスタート。
 今度もメロディアスに進んだ。植村がブラシでベースソロをバックアップしたのはこの曲だったか。
 そおっとプレイが続いたのに、コーダで植村がいきなり激しくタムを叩き出す。
 片山は笑いながらしばしドラムを聴く。
 おもむろにエンディングへ向けテナーを振り上げた。

 次の4曲目で、フリーになる。音量は控えめでスタート。
 しばらく探りあいのように音が行き来するが、途中で唐突に片山がメロディを提示。
 するとそこから、コードを意識した演奏へ変化した。

 前半は約1時間。
 しばしの休憩をはさみ、第二部は渋さチビズでお馴染みの、レナード・コーエンのカバーからスタート。
 片山のテナーはどこまでも音が太く、思い切り朗々とブロウした。

 つづく「気分はオールマン」は立花のオリジナル。ロックっぽい曲だ。
 面白いことに、植村と斎藤がさんざん煽り立てるのに、立花がぐっとグルーヴの首根っこを捕まえたまま。(ちょっとモタり気味にしてたのかな?)
 いまいちビートがつっこまない。なんとももどかしいぞ。
 ベースとドラムの絡みを楽しみながら聴いていた。

 いっぽう斎藤が。切れ味鋭いカッティングを弾きまくる。
 むちゃくちゃいかしてた。

 続いて、これも耳なじみなカークのカバー。
 しっかり足を踏みしめた片山のテナーから、フレーズが舞い上がる。
 全員のアンサンブルも確かで、リラックスしていた。

 そう、今夜のライブは終始リラックスして聴けた。
 激しいミュージシャン同士によるソロの応酬は控えめ。
 対話するようにじっくりとソロが回っていく。

 しみじみ植村のバッキングのうまさを感じた。
 単にリズムをキープするだけじゃない。おかずも的確にはさむ。
 場合によってはおかずしか叩かない。
 なのにきっちりリズムはキープされ、ソロを盛り立てていた。

 最後の曲へ行く前、片山が客席から飛び入りを連れ出す。
 たまたま遊びにきてたらしい。川口義之がアルトサックス片手にステージへ上がった。

 譜面で簡単に川口へ片山が構成を説明し、軽快にテーマを吹き鳴らした。
 メロディが生き生きして、すばらしい快演だ。

 川口はオブリをたくみに入れていく。
 ソロでは初見にもかかわらず、見事に堂々たるソロを吹ききった。

 一気にテンションを上げて、賑やかにライブ終了。後半も約一時間か。
 フォルテシモでばらまく片山のブロウが山ほど聴ける、豪快なセッションだった。

 盛大な拍手のなか、メンバーがステージを降りる。
 メンバーが去ったとたん拍手がやんでしまい、アンコールは特に無し。
 店の奥では川口が持ち込んだシャンパンで、メンバーの打ち上げがすかさず始まっていた。

 今夜のコンセプトはどこらへんにあったんだろう。
 ぼくは植村+斎藤と立花のインタープレイを興味深く楽しめた。
 比較的フリーよりと斎藤をイメージしてたが。
 ジャズへ軸足を置いたときの、うまい演奏を聴けたのも収穫だ。

 立花はかなりマイペースでランニング・ベースを弾いていたから、本セッションのサウンドの方向性は植村しだい。
 彼がフリーと4ビートのどちらに軸足を置くかで、かなり印象が変わると思う。

 そして片山はどんな音像が作り上げられても、極太のテナーで音に説得力をもたせる。
 今度はさらにフリーよりのプレイも聴いてみたいな。
 
 ぼくは二本目のライブが始まる時間まで、ちょっと西荻の町をぶらぶらしに行った。

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