LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/1/12   西荻窪 BinSpark

出演:MUMU、The Ortophones、GATO BLANCO

 本日2本目のライブは、植村昌弘率いるMUMUほかの演奏。
 店内はぎっしり満員だった。GATO BLANCOらの招待客が多少いた様子で、立ち見びっしりな盛況だ。

GATO BLANCO(19:40〜20:10)
 (ノムラジュンコ:vo,tap,mime、吉久昌樹:g、にしむらまさひこ:Reflection)


 このバンドを見るのは2〜3回目。過去聴いた時は、正直それほど楽しめなかったが。
 今夜の演奏はいくつか面白いところがあった。

(セットリスト)
1.Chat Blanc
2.She caught a float`in Space Invaider
3.Night Walk
4.尻尾の行方
5.光る砂
6.Les Cactus

 セットリストはGATO BLANCOのチラシより。
 基本的な音楽性は、吉久昌樹によるボサノヴァ風アコースティック・ギターのソロに、ノムラジュンコがマイムをする形態。
 パフォーマンスとしてはきれいだが、吉久のギターにインプロ要素がほとんど感じられず、ステージに意外性が欠け物足りなかった。

 今回はにしむらまさひこがハンディビデオで参加。(前も参加してたかな?記憶があやふやです。ごめん)
 色付ビニールをカメラの前に置いてフィルター処理をかけ、ノムラを中心に映し出す。
 画像はステージ横のスクリーンに映し出していた(たぶん。僕の立ち位置からはよく見えず)。

 前半部分は、耳ざわりいいが迫力に欠ける。家でのんびり聴く分にはいいだろうな。
 4曲目の「尻尾の行方」は、ノムラがウィスパー・ボイスで歌う。
 この曲、以前も聴いたことあるけど。今夜はけっこう緊張感があって、いいテイクだった。 

 「尻尾の行方」が終わると、吉久はギターをエレキに持ち帰る。
 リズムボックスを響かせて小さい音で演奏した。
 シンプルなアレンジで披露した「光る砂」。
 この曲では、中盤でギターソロあり。エフェクターで音を歪ませてるのに、ボリュームはあくまで小さい。
 繊細な歪んだ音を低いボリュームで弾くのが新鮮で、面白く聴けた。

 ラストはカバーだそう。歌詞はフランス語だった。
 これもリズムボックスにエレキギターのみ。アレンジも唄も、少々練りこみがたりなかったのでは。

 基本路線はそのままでいい。もっと即興要素をいれて、マイムと掛け合い風になったら、好みの音なんだけどなぁ。

The Ortophones(20:30〜21:20)
 (DJ Peaky:Turntable、Itoken:ds、Tukamoto:key、Yuji:b、BUCCI:tp)


 これは思わぬ成果。各種バンドからの混成ユニットらしい。全員かなり若いミュージシャン。
(Itoken(Harpy),Tukamoto(GNU),Yuji(Acoustic Dub Messemgers)
 
 ジャズ風な演奏が基調で、アドリブよりも音響性の創造へ主眼を置いてるように聴こえた。
 DJが解釈したようなクラブ・ジャズを、生演奏している。
 60年代のマイルスあたりがターゲットかな。
 ひりひりするクールな香りが、ステージに充満する。

 最初に耳を引いたのがゲストであるBUCCIのトランペット。
 ピックアップをつけ、エフェクターでリバーブ処理をつける。
 断片的なフレーズにエコーをかけた音が広がり、効果的だった。
 「死刑台のエレベータ」でマイルスが吹くような音色を、その場で作り出す仕掛けがみたい。

 音の主導権はターンテーブルにあるのかな?
 トランペットの音と巧みに溶け合いつつ、ぐにょぐにょノイズをまく。

 あえて不満を言うのなら。音像のセンスは面白いのに、構成がいまいち。曲が散漫になっていたと思う。
 いい気持ちで聴いていたけど、終わった時にメロディが頭へ残らなかった。
 もともと旋律やアドリブを、さほど重視してないのかな。
 
 こういうジャズの解釈もあるんだ。 

 ちなみに次回からBUCCIは正式メンバーになることが、ステージ上でいきなり決定した模様。

MUMU(21:30〜22:10)
 (植村昌弘:ds、中根信博:tb、坂元一孝:key)


 セットチェンジはサクサク終わる。
 途中で帰った客もいて、植村昌弘が「空いてる席へどうぞ」と立ってる客へうながした。

 そしてまずは「99/5/20」から。
 ユニゾンで断片的なリズムを刻んでいく。
 今夜のMUMUは、とてもきれいなアンサンブルだった。

 ステージは明るめにして、3人とも譜面を凝視しながらの演奏。 
 複雑なリズムがピタリと決まり、中根や坂元がキュートなメロディを弾く。
 植村の手数多いフィルは、聴いててむちゃむちゃ楽しい。
 MUMUはたぶん、即興はまったくないんだろうな。

 一曲終わって中根が曲目紹介したとたん、客席から失笑が漏れるのもいつもどおり・・・。

(セットリスト)
1.99/5/20
2.役人#9(断片)
3.役人#6
4.98/3/10 #2
5.亜#1
6.役人#4

 セットリストはMUMUのHPより引用しました。
 2曲目は新曲。ただしHPの日記で植村がぐちってたとおり、リハが間に合わなかったようだ。

 演奏前に植村が「正月にテレビ見すぎて、譜面上げたのがリハの前日の朝でした」と言い訳する。
 なんと2小節を仕上げるのに40分のリハ。5小節くらいしかリハ完了してないという恐ろしさ。
 植村の複雑怪奇な曲を、涼しい顔で演奏する二人なのに。

 とはいえ、せっかくだからと断片を披露。
 演奏前に中根が「みなさん、心の準備はいいですか?」とメンバーをからかう。
 多少繰り返しを入れ、30秒くらいは演奏してたかな。
 むちゃくちゃにキメが多い、ややっこしいサウンド。
 せわしなく音符がばら撒かれて、あっという間に終わった。
 こりゃ複雑だ・・・次回ライブでの「フルサイズ初演」が楽しみ。
 
 気を取り直して、以降はこれまでのレパートリーが続く。
 ドラムのキレがすばらしい。基本的にはユニゾンだが、ここぞというところで一気に複雑なビートを叩き込む。
 中根はすべりが悪いのか、ひっきりなしにトロンボーンのスライドバーへスプレーを吹いていた。

 細かいリズムはわからないが、たぶんかなり変拍子なんだろう。
 植村は時に譜面を睨みつつ、口でときおりビートを取りつつ叩いてた。
 普通に4/4で刻むところも、アクセントが色んなところへ前後して不安定さをあおる。

 でも、どんな複雑なビートでもリラックスして聴けるのがふしぎなところ。
 ほんのり流れるメロディで気持ちが浮き立ってくる。

 けっきょく演奏は実質5曲。アンコールも無しであっさり終わっちゃった。
 今回は、以前聴いた開放的な旋律の曲は控えめ。
 リズムの面白さを楽しむ曲が多かったように思う。

 演奏時間が短すぎ。ワンマンでMUMUをじっくり聴いてみたいなぁ。

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