LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/1/10   新宿 ピットイン

出演:イースタシア・オーケストラ
(藤川義明:as、 吉田哲治,神村英男,小宮いちゆう:tp、佐藤春樹:Tb
  宮野裕司:as,片山広明:ts、南川護夫:ts,堀切信志:bs、
  翠川敬基:Cello、早川岳晴:b、小山彰太:ds、横山達治:per)


 年間3〜4回新宿ピットインでライブを行う、藤川義明率いるイースタシア・オーケストラ。
 今夜は昨年9月以来の演奏になる。
 メンバーの梅津和時が欠席し、サポートで宮野裕司が参加した。

(セットリスト)
1.BOLD AND ABLE
2.TATUZINHO
3.TANGO
4.FIO DENTAL
5.NANA'S DREAM
 (休憩)
6.DANCER'S IMAGE
7.KONA
8.LATHE
9.MACEIO BLUES
10.PATE POTE

 セットリストはイースタシアとして、お馴染みな曲ばかり。(8)が聞き覚えなかった。

 演奏は全般的にまったり感強し。
 リズム隊はパワフルだけど、いまいちホーン隊に元気が感じられなかった。
 片山広明や小宮いちゆうを筆頭に、時にぴりっとしたソロを披露したけど。
 スリリングなソロは、残念ながらそれほど多くない。
 そのぶんパーカッションの横山達治が大張り切り。ムードメーカーとして好演の連発だった。

 藤川は今回もMCはほとんどなし。淡々と進行していた。
 金管と木管のアンサンブルを重視したアレンジはいつもどおり。さらに今回はフリーな要素をあちこちへ盛り込んでいた。

 冒頭「BOLD AND ABLE」のソロは片山のブロウでスタート。
 横山によるカウベルやサンバ・ホイッスルでのアクセントが楽しい。
 曲の終盤では藤川も含めた木管群全員で、同時にフリーなソロを吹き鳴らす。
 個々の音が分離せず、分厚い音のカーテンがぶわっと広がった。

 続いて「TATUZINHO」では藤川もソロを取る。。
 「(指揮をするため)いままでお客に尻を向けて演奏して申し訳ない」
 という冒頭MCどおり、ここではすばやくマイク・スタンドの向きを変え、客席に向かってアルトのソロへ転換する。

 以前トリオ編成で、藤川のフリーなアルト・ソロは何度か聴いたけど。
 ここではメロディを前面に出したオーソドックスなプレイだ。
 きれいな旋律が続く、いいソロだったと思う。

 翠川敬基のチェロをフィーチャーしたのが「TANGO」。
 ここまでのゆったり穏やかなプレイがいい面に働いた。
 ビブラートを効かせたチェロの音色が、ロマンティックに響く。
 早川岳晴と翠川の二人だけで、聴き応えあるデュオも聴けた。

 「FIO DENTAL」は金管のメロディにかぶさる、木管の旋律が素晴らしい名曲だけど。
 どうもいまいち木管のヌケが悪い。宮野のアルトが他に比べてボリュームが小さく、トップ・パートが強調されないせいかな。

 横山はソロになった途端大暴れ。猛烈にボンゴなどを叩きまくる。
 途中で即興の唄も歌いだし、メンバーが笑いながら合いの手を入れた。

 ちなみに横山のソロのあと再びテーマへ戻った時、急にサックスの音色が生き生きして聞こえた。なぜだろう。PAバランスの問題かな。

 本来なら1セット4曲だが。今夜はさらに一曲続く。
 南川護夫のソロでは早川と横山がアップテンポであおる。
 つづく小山彰太のドラムソロも聴きものだった。
 両足でせわしなく、バスドラとハイハットを刻む。 
 両腕はロールをいれず、ユニゾンで各種タムを組み合わせたフィルを続ける。偶然ながら、オレカマ的なソロが面白かった。

 前半は約70分弱。そして後半へ。
 第二セット一曲目は、えらく対照的なソロ廻しになった。
 堀切信志のバリトン・サックスは、いやに静かな音使いのソロ。雰囲気がぐいぐい下がっていく。

 続く早川が、テンション高いハードなソロへ雪崩れ込む。
 ぶっとい音でずしんと響く、早弾きの迫力ある演奏がかっこいい。
 ソロの終わりは、テーマのイントロを弾くのが合図だったようだが。

 早川は素直にソロを譲らない。
 イントロの断片を弾いては、すぐさまソロフレーズへ逆戻り。
 なんども、なんども。管のメンバーも、タイミングをはずされて苦笑する。
 早川はさんざんじらして盛り上げたところで、ソロをテーマへつないだ。

 今夜のライブで一番の収穫は「LATHE」。
 刺激的なフリージャズだった。
 前半の「TANGO」同様スローテンポな曲だから、オケの雰囲気がピタリと曲調へはまる。

 まずは片山、翠川、早川だけによる三人のフリーなソロから。
 うねうねとフレーズが絡み合い、素敵な空間が生み出された。
 そこへ小宮が加わり、他のホーン隊もかぶさっていく。

 静かに旋律が溶けていく。ピアノみたいな和音の楽器ないけれど。
 演奏の裏に漂うコード感が心地よい。
 しっとりとした演奏ながらも奥底に緊張感が感じられる、いかしたサウンドだった。この演奏を聴けただけでも、今夜は満足。

 あとはアップテンポ二曲を連発で、エンディングへ雪崩れ込む。
 ぼくがとても好きな「PATE POTE」も、かなりあっさりで物足りない。
 派手にどかんと盛り上がってほしかったな。

 「PATE POTE」では片山と藤川のソロ合戦がポイント。
 片山がひとしきり太いソロを取り、そこへなめらかな音色で藤川のソロが斬り込む。
 ふたりの掛け合いで、くいっとテンションがあがった。

 後半戦も75分の演奏となり、終了したのは実に22時45分。さすがにアンコールはない。
 かなり長丁場なライブだった。

 フリーな要素を盛り込み、メリハリつけた演奏になりそうだけど。
 ぼくが風邪気味だったせいかなぁ。いまひとつ音へのめりこめず。
「LATHE」以外は物足りなさを感じてしまった。次に期待しよう。

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