LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
01/12/29 新所沢 スワン
出演:不破+片山+植村
(不破大輔:b、片山広明:ts、植村昌弘:ds)
「そろそろやろうか」
メンバーがステージ用スペースへ向かった。
スワンは縦に細長い。ステージのスペースは高台ではなく、奥の席から見づらいのがたまに傷。
まずは片山がやさしくテナーをフリーに吹き始めた。
植村がそっとタムのリムショットでおかずを入れる。
ビートを刻むより、パーカッション的にコロロン、っとリムを鳴らした。
片山のテナーが、次第に太くなっていく。
リズムはシンバルも入れて手数が増えた。
不破のベースもずしんと音を支える。
数日前に行われた渋さ知らズの恒例年末ライブでは、バディに400人以上入ったという。
ますますヒートアップする渋さ知らズだが、派生のユニットでは観客の入りがさみしいのが謎だ。
今夜メンバーは、もろに渋さのコア部隊だと思うのですが。
場所的なせいもあってか、観客は10人未満。
そんな少人数で聴くのがもったいない、むちゃくちゃ充実したライブだった。
開演時間は少々押したが、演奏はすぐさまテンションが上がる。
まずは渋さのレパートリーかな?ほんのりメロディに聞き覚えあり。
今夜の主役はなんといっても片山広明。
ものすごかった。
スワンは音響がデッドなせいか、かなり強烈にテナーをブロウしてもノイズ成分が消え去る。
さらに片山自身もメロディを重視し、あったかいサックス・ソロを聴かせた。
植村と不破が一体となり、リズムの緩急で片山を煽る。
しみじみリズムを溜め、次の瞬間高速でサックスを盛り立てた。
アイコンタクト一発で、ブレイクをかますセンスが抜群だ。
さらに時たま見せる、植村の複雑なフィルもたまらない。
第1セット一曲目から、いきなり30分間メドレー。2曲分くらいかな。
片山はほとんど休まず、ひたすらサックスを吹きつづける。
ブロウがぐいぐい熱くなり、素晴らしくかっこよかった。
不破のベースは、ちょっとオフ気味で聴こえづらかったけど。
ソロを取るときも、片山の雰囲気に合わせたのかメロディアスな音使いで、空間をうまく生かしていた。
植村は途中でブラシに持ち替え。ベースソロのバックで静かに刻む。もっともしょっちゅうタイトに切り込み、油断できない。
長かった1曲目の最後で、ふたたび冒頭に叩いたタムのリムショットを織り込む。
完全フリーかと思わせつつ。構成をきっちり意識してるのがにくい。
続く二曲目も凄いテンション。いつのまにか片山や不破の額には汗がにじむ。
植村は着ていたセーターを脱ぎ捨てた。
ちなみに二曲目は15分くらいで切り上げ。
ここであっさり休憩に入ってしまう。ちょっと時間が短めだ。濃密すぎたかな。
演奏中に不満を漏らしてた観客が一名いたが、この間にお帰り。
趣味は人それぞれだが、おとなしく聴いて欲しいもの。
彼らの充実した演奏を、あなた以外は大満足で聴いてるんだから。
少々長めの休憩をはさみ、第二部は「レイディズ・ブルーズ」でスタートした。
片山がブルージーにソロをとっていく。
ごきげんなムードが店内いっぱいに広がった。
片山のソロが一区切りつくたびに、店内から拍手が飛ぶ。
「レイディズ・ブルーズ」では不破のソロもよかったな。
間をたっぷり取り、しっとりと音を操っていた。
とはいえ、第二部もあらかたは片山が吹きっぱなし。
エンディングが近づき、片山がテナーを振り上げコーダへの合図。
不破と植村は、そのまますぐエンディングに雪崩れ込んだ。
「えらくあっさりしてるな」
片山がにやりとつぶやき、そのままテナーを高らかに吹く。
しばし無伴奏でサックス・ソロ。こまかな音の変化まで、店内に響き渡る。
夢中になって聴いてると、いつのまにか植村と不破がリズム隊で加わっていた。
第二セット2曲目は・・・何の曲だろう。
片山が次から次へと、聴き覚えのある旋律を繰り出す。
たぶんジャズのスタンダードなんだろうな。「セント・トーマス」だけぴんときました。
メドレー形式で、メロディの断片が立て続けにサックスから溢れ出す。
こういうあざとい演出は、普段だと飽きてしまうが。
ここまでぶちかまされた片山のテナーにしびれて、素直に聴いていた。
ただ、テーマの連発であまりフリーに展開しないため、植村のリズムがシンプルな4ビートばかり。
多彩なリズムパターンを駆使する彼のドラミングが好きなので、ちと残念だった。
片山の額は汗びっしょり。サックスを吹きつつ、ときおり顎から汗がしたたる。
二曲目のあと、観客の拍手がやむのも待たずに「『ハレルヤ』いこう」と片山が提案した。
「ハレルヤ」はレナード・コーエンのカバーかな。
C02のアルバムでも、片山のサックスが聴ける。
美しいフレーズが、かすれ気味に流れた。
この曲が終わった時点で、30分ほど経過してたはず。
猛烈な演奏のせいか、時間がほとんどたってないのに満腹感いっぱい。
「ハレルヤ」が終わった時点で、片山は息も絶え絶え。
「もう終わろ」と不破に合図する。
不破は「もう一曲だけ。フリーやって終わりにね」と答え、おもむろにメンバー紹介をはじめた。
盛大な拍手の中、植村と不破がビートの効いたアンサンブルを演奏する。
指板の上を、不破の指が素早く踊り、高速ソロを決めた。
植村が不破の演奏をじっと見詰め、ドラムでユニゾン気味についていく。
不破が一瞬音を止めた隙に、片山が再び切り込んでいった。
さすがに音こそ細いが、あっというまに音の主導権を握ってしまう。
第二部もだいたい45分くらいか。
客席からすぐさまアンコールの拍手が飛ぶけど、不破が「ごめんなさい」って両手を合わせちゃった。残念。
しめて一時間半くらいの演奏。時間的には短めだけど、内容はむちゃむちゃ充実。
熱く濃密なプレイで、大満足でした。この3人の組み合わせは緊張感が最高だ。
なおかつ片山のテンション次第で、こうもグルーヴが変化するとは思わなかった。
それほど頻繁に演奏するトリオじゃないけど。このまま演奏を煮詰めたら恐ろしいテンションになるだろう。