LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

01/12/24   入谷 なってるハウス

出演:片山+不破+翠川セッション
 (片山広明:ts、不破大輔:b、翠川敬基:cello)

  
 いかにもありそうな顔ぶれだが、意外にこの面子でのセッションは珍しい。
 片山広明+不破大輔なら、
渋さチビズ。片山広明と翠川敬基なら、緑化計画
 どっちよりの演奏になるかなと楽しみに、なってるハウスへ。

 結論は、かなり緑化計画よりの演奏。緑化計画はアケタで月一かならずライブをやってるのに、なぜか仕事のタイミングが合わず聴きに行けない。
 だから、すなおにこの構成は嬉しかった。

 演奏が始まったのは20時10分を回ったころ。
 おもむろに翠川が譜面を持ち出して、二人に配る。
 片山は当然ながら馴染んだ曲で、リラックスした格好。
 逆に不破はほぼ初見なのかな。終始譜面をじっくり睨みながら演奏していた。

 今回の選曲は、たぶんその場で決めていた。
 片山がたいがい「次はXXをやろう」って提案していたか。

 まずは「メノウ」からスタートした。
 いきなり片山の豪放なテナーが獰猛に襲い掛かる。
 翠川はチェロをかき鳴らし、フリーに演奏をバックアップ。
 いっぽうで不破は、譜面を見ながら探るように単音を乗せていった。

 なってるハウスの店内に、片山のテナーがフォルテシモで響く。
 前半セットでは翠川のチェロもフリーに傾いた演奏だ。
 今夜はリズム隊がいない分、不破のベースが刻みにまわるパターンが多かった。

 ビートが提示されないので、かなりリズムが混沌とする。
 面白いサウンドが生まれる瞬間は多々あったが、前半セットは音が拡散してしまったような気もした。

 前半の二曲目も緑化計画で聴き覚えある。
 「Cマイナーのやつね」と不破に説明していた。曲名は失念。すみません。
 テーマの終わりに二拍三連符のようなキメが入る、リズミカルな曲だ。
 リズム隊不在で、テーマのキメがいまいち盛り上がらず残念。

 この曲の中盤で、翠川がチェロを横においていきなり立ち上がり、演歌(?)風の唄を唸りだした。途端に気分が温泉場あたりの宴会風になって苦笑した。

 3曲目はこれまた緑化の定番「ウズペ」。第1セットではこの曲がとても楽しめた。
 三人の音作りやソロの押し引き合戦時の役割分担を、聴いててぼくがなんとなく飲み込めてきたからかも。

 前半最後は翠川の「せっかくクリスマスだから」とのコメントを受けて「ナウ・ザ・タイム」を演奏。なんでクリスマスだとこの曲かは、よくわからないが・・・。
 冒頭に片山が豪快に「ジングルベル」のテーマを高らかに吹き鳴らした。

 「ナウ・ザ・タイム」では翠川が達者なスキャットを披露。
 強引なとこもあったけど、ワイルドで楽しい。
 エンディングでは片山が「鉄腕アトム」のフレーズを挟み込み、観客に受けていた。

 ここまでで約一時間。かなり盛り上がった演奏だ。
 少なくとも不破はこの日の真夜中から、新宿でもう一本の渋さ系ライブがあるのに。
 いったいどのくらいの時間まで演奏してくれるのか、ちょいと不安になってきた。

 30分ほど休憩して第二部へ。このころには観客もボツボツ増え、7人くらいいたろうか。そこそこ盛況な人数だ。

 さて、第二部でも演奏は基本的に緑化の曲。でも後半戦では、ぼくは聴き覚えない曲ばかりだった。曲目紹介、MCでして欲しかったな。

 演奏は第二部になったとたんぐっと締まる。スリリングな瞬間が連発。
 基本的に不破はリズムに周り、片山が思うさま吼える。そして翠川がフリーにチェロをかきむしり、次の瞬間クラシカルに旋律を奏でる。
 そんな三人の演奏が溶け合い、充実した演奏だった。 
 
 第二セット1曲目では、ワンコードで不破がウッドベースに指を走らせ、高速リフを立て続けに叩き込む。
 ぐいぐいテンションをあげる不破と対照的に、片山と翠川はマイペースで絡んでいった。

 緑化では他のメンバーの音に埋もれがちなチェロの音がくっきり聴こえて嬉しい。
 不破と翠川が揃ってバッキングにまわり、弓で刻み続ける音像はぞくっとするほどいかしてた。

 翠川の茶目っ気は第二部で目立つ。
 フリーな演奏だからエンディングを作るのは三人の探りあいで決まる。
 片山がここぞというタイミングで不破とアイコンタクトをかわし、見事にコーダへ持っていくのに。
 翠川はそ知らぬ顔で、延々と演奏を続けてたりもしたっけ。
 
 後半は数曲演奏したところで、片山がマスターに時間を確認。
 「10時20分か。・・・10分くらいフリーやろうか」
 といって、最後の演奏をはじめた。
 これが思いのほか多彩な展開のフリージャズだった。

 不破は弓を持ち出し、ファンキーなパターンで弦をひっぱたく。
 翠川もパーカッシブな演奏で切り込んだ。
 そこへ片山が自由自在にソロを組み立て、音を載せて行く。
 ノイジーに吹き鳴らすだけでなく、アラブ風のフレーズも織り込んでいた。

 けっきょく終わったのは22時半くらい。
 アンコールには応えず、あっさりとライブが終了した。

 かなり不破が裏方に徹しぎみなステージで、三人のぶつかり合いまでは到らなかった。
 またこのメンバー(もしくは、不破の緑化計画フルメンバーへの参加)って構成で聴いてみたいな。
 
 しかしフリージャズでの、ビートの重要性を改めて感じた夜だった。
 不破なり翠川なりがリズムを提示するときしないときで、がらりと音の耳へ入りやすさが違うんだもん。
 それと、渋さのレパートリーをこのメンバーで演奏するのも、次はぜひ聴いてみたい。

 色んな意味で、次回も期待したいライブだった。

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