LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

01/12/1   原宿 アストロホール

出演:スパンク・ハッピー 〜Computer house of mode〜

 (菊地成孔:vo,org、岩澤瞳:vo)

 
 マキシシングルのレコ発ライブ。MCで菊地成孔は岩澤瞳に「もう素人じゃないぞ」と言っていた。
 スパンクスは最近、数回ライブに行きそびれてる。聴くのは今年の3月ぶり。

 アストロホールのキャパは300人くらいか。オールスタンディングのライブハウス形式なハコ。
 どうやら前売り券を買った客が大半だったようだ。開演時間まぎわに観客が集まる。
 ぼくは当日券を買うため開場時間ジャストに到着したが、並んでたのは20人弱。なのでらくらく最前列で聴けた。

 ステージには幕代わりか大きなスクリーンが吊るされ、シングルのジャケ写のアウトテイクが何枚も映し出される。
 スクリーン前にはマイクが二本立つ。裏にはオルガンとCD−Jなどが見えた。
 いつもながら簡素なセットだ。

 開場から開演まで約一時間。禁煙なのがつらい。最前列は明かりが暗くて本も読めないし。すっかり手持ち無沙汰だった。
 最前列は心なしか、男女の比率が別れる。
 岩澤の立ち位置な上手側は、びっしり男が集まっているように見えた。

 10分前くらいになると、下手からスモークがちょこちょこ焚かれる。ほんのり香りがつきな気がした。
 本日のVJ「青梅街道派」のメンバーがスライド機材の最終チェックをはじめる。

 そして、開演時間を5分ほど過ぎたころ。
 ステージ前の大きな幕がするすると上がった。
 スピーカーからパイプオルガン風の音色で、聴き覚えあるイントロが流れる。
 場内が暗くなり、下手から二人が登場した。

 菊地はうすぺらいスーツスタイル。岩澤は七分袖のワンピースに、大粒の真珠のネックレス。手にはレースの手袋と、シックなスタイルだった。
 ちなみに今夜は二人とも靴を履いている。

 ステージ奥のスクリーンには、アメリカの古いテレビ映像みたいなのが映し出された。そこへスパンク・ハッピーのロゴがかぶる。     

 二人がマイクの前に立つと、拍手が起こった。岩澤はちょっと戸惑い、嬉しそうに微笑む。
 イントロは続く。二人は深く深く客席に礼をした。

 菊地が岩澤にハンドサイン。
 二人は「ワールド・ハロー・ソング」を歌い始める。
   
(セットリスト)
1.ワールド・ハロー・ソング
2.少女地獄
3.ジャンニ・ヴェルサーチ暗殺
4.Stranger
5.コポロラリア
  (MC)
6.アンニュィ・エレクトリーク
7.インターナショナル・クライン・ブルー
8.(曲名不明)
9.ドリップ・ドライ・アイズ
  (MC)
10.麻酔
11.インターナショナル・ラブ・コンフェランス
12.普通の恋
13.新スパンク・ハッピーのテーマ
(アンコール)
14.ホー・チー・ミン市のミラーボール
15.French kiss
16.ねえ?ミス・インターナショナル

 「ワールド・ハロー・ソング」だけで10分くらい歌った。この曲はだいすき。さっそく大喜びしながら聴いていた。
 アレンジはさほど前回と変わっていないような・・・構成いじってるかな?

 メドレー形式で、すぐ次の曲へ。岩澤の歌はうまくなったな。
 音程もきっちりして、透明感あふれる高音をムーディに響かせる。
 むしろ菊地の歌が、オフマイク気味で聞き取りにくかった。39度もある熱のせいだろうが・・・。

 続く「ジャンニ・ヴェルサーチ暗殺」は、さすがにレコードと同じ歌詞。
 しらばくれて、前の歌詞でやってくれないかと期待したが甘かった。
 前回の歌詞にあった「うそよん♪」って、岩澤が落とす部分のフレーズが好きだったのに。
 バックのスクリーンには、さまざまな企業ロゴが矢継ぎ早に映し出される。

 「レコード手に入ってますか?ぼくはぜんぜん悪くありません」
 「レコード会社のせいですか?」
 「いえいえ、レコード会社は悪くありません!全部ぼくのせいです(笑)」
 てな掛け合いをしてたのは、この曲あたりだったかな。

 「Stranger」はビリー・ジョエルのカバー。
 中国風にゴングが連打される、重たいテクノにアレンジされていた。
 原曲の疾走感は減らされ、かなりクールに歌う。

 曲の冒頭で、少林寺あたりを模した振り付けを披露するが・・・あわないんだ、これが。
 なんどやっても岩澤が遅れる。菊地は大笑いしながら何度も繰り返すが、最後まで一度もあわなかった。
 けっこう気に入った振り付けだったのか、ふたりともこの日の最後まで、時々思い出したように、この振り付けを繰り出していた。
 ・・・ただの一度も、ぴたりと決まらなかったけど。

 そういえば。今夜印象的だったのは二人とも、歌詞を暗譜していたこと。
 今までは岩澤が譜面台をちらちら見ながらだから、ぎこちなさが強調されていたが・・・そらで歌っている分、岩澤の雰囲気が改善されたと思う。

 もっとも「Stranger」ではさすがにカンペを使用。
 タブロイド版の新聞紙裏に歌詞を貼り付けていた。
 間奏では二人してもっともらしく、表の新聞を読む。
 そして歌い終わったあと、びりびりに破いて足元にほおりなげた。

 第一ブロック最後は「コポロラリア」。たぶん、ぼくは聴くの初めて。
 起伏が少ないけど、面白い曲だったような。
 
 ここでやっとMC。小さな椅子を引っ張り出して座った。
 39度の熱があるという菊池は、いまいちテンションが低い。
 とはいえ岩澤が盛り上げるにはちと苦しい。少々ぎこちないMCだった。
 「岩澤と菊地と、どっちの呪いの力が強いか」(二人ともイーブンらしい)や
 先日の「菊地の心臓が止まった話」などを喋る。

 「今日は長丁場だからな」と菊地が短めにMCを切り上げ、「アンニュイ・エレクトリーク」へ。
 続く「インターナショナル・クライン・ブルー」では冒頭で、岩澤が「私達のデビュー曲です。聴いてください」とアイドル風に紹介。なんだかすごく新鮮。
 そのあとすぐ「レコードは手に入らないですが・・・」と言い始め、菊地にすかさず止められたのはこのときだっけ?
 
 8曲目はすみません、曲名が一致しませんでした。日本語の歌詞で、連打されるキーボードのリフが印象的な曲。
 どこかで聞き覚えあるけれど。「冬のノフラージュ」のカバーかなぁ。思い出せませんでした。ごめんなさい。

 つづく「ドリップ・ドライ・アイズ」は、高橋幸宏の曲。「Neuromantic」(1981)に収録らしい。
 スクリーンには、なんども幸宏の映像がでかでかと挿入される。
 歌詞は英語のまま。二人は特にカンペを見ずに歌っていた。
 この曲は聞くの初めてだけど。幸宏のアンニュイなメロディ構成が、スパンクスにぴったりハマってた。

 8〜9曲目では、ちょこちょこ菊地がオルガンを鳴らす。派手さはないが、効果的な音使いのソロだった。

 そして再びMCへ。休憩をまったくはさまない。ペンギンXXXがミネラル・ウオーターとタオルを持ってくる。
 このMCでの菊地ははじけてた。CD−JでBGMを流しながら喋りまくる。大笑いしながら聴いていた。
 岩澤はいまだにMCではたどたどしいところがある。
 ときどき見事にオチをつけ、菊地にOKサインをもらってたけど。

 「次回シングルは何がいいか」と雑談(って感じだ、ほんとに。かれらのMCは)してるとき、岩澤がシンディ・ローパーの「ハイスクールはダンステリア」をやりたいと言う。面白そうだ。聴いてみたい。
 ・・・「セーラー服と機関銃」よりは、スパンクスに似合ってると思うぞ。
 
 20分近くMCをしてたかな。いよいよ最終ブロックへ。
 スパンクスの定番曲が続く。早くアルバムでじっくり聴きたいな。 
 しっとりしてはいるが、ぼくにはちと退屈な「麻酔」から「インターナショナル・ラブ・コンフェランス」へ。

 ピアノがポ・ポ・ポロンと鳴って、上品なリズムが始まる。
 そして菊地の歌声。
 この曲も好きだ。空虚な責任感がいとおしいメロディだ。

 続く「普通の恋」では、リフににあわせて胸に手を当てる振り付け。恋愛至上主義者っぷりでも表現してるかのように見えた。
 スパンクス・ファンの中では人気がある曲らしいが、ぼくは苦手。「菊地流チェッカーズ」に聴こえてしまう。

 といっても、まだこの曲を聴くのは二回目だ。3月のライブでも演奏してた。
 ただし。「普通の恋」はキャッチーなメロディを持っていること。
 それに畳込むリズム感(特に菊地がソロで歌う部分)が楽しい曲なのは間違いありません。
 
 「新スパンク・ハッピーのテーマ」で漂う、おごそかさもいつもどおり。
 中間部での岩澤の語りは、二人での雑談に変わってた。
 しゃべりの直後、菊地が歌いだしを失敗し照れくさそう。

 二人はバックトラックが鳴りつづける中、ステージを去った。
 すぐさまアンコールの拍手が始まる。
 ところが、なかなか二人が戻らない。てっきり菊地が倒れたかと心配しながら拍手をしていた。

 5分後くらいか。散々待ったあとで再登場してくれた。
 ふたりともワイシャツにスラックス、ネクタイ姿に着替えている。
 どうやら衣装チェンジにてこずったらしい。二人ともネクタイがすさまじくよれよれだった。
 
 まずは後ろのスクリーンに浮かぶ映像をネタにちょっとおしゃべり。
 写っていたアンディ・ウォホールを岩澤が知らず、菊地がむちゃくちゃな紹介をしてからかっていた。
 その間にステージ上の機材が隅に片付けられ、すっきり状態に。
 ダンスに備えて、岩澤がスニーカーの靴ヒモを結びなおす。

 プロテストソングを、と前置きした上で始まったのが「ホー・チー・ミン市のミラーボール」。
 アンコールに到っても歌詞がいまいち聞き取りづらい。
 なので普通のポップスとして聴いてしまう。

 曲中で菊地が岩澤に耳打ち。
 「スパンク・ハッピーはベトナム戦争に反対します」 
 たどたどしく岩澤が言った。補足する菊地。
 「・・・終わった戦争ね」
 にやり、と不敵に菊地は笑う。

 つづく「French kiss」では岩澤がめろめろ。
 いきなり歌詞を間違えて、菊地が爆笑しながらCD−Jをいったん止める。
 ステージ上で歌詞のおさらいをした後、もういちど歌が始まった。
 だけどさらに二人とも間違える。
 岩澤はとうとう「ららら〜」って歌ってごまかしてた。客席も大笑いしながら楽しんでいる。

 最後の曲は「ねえ?ミス・インターナショナル」。
 これもキュートなメロディがすてきな曲だ。
 ペンギンXXXも登場し、3人してステップを踏む。
 途中ではペンギンを含めた3人で、ファッションショーを模したパントマイムも披露した。

 岩澤のダンスは、いまいちぎこちなかったのが微笑ましい。
 対照的に菊地はキビキビとステップを踏む。すごく楽しそうだったな。

 最後まで見飽きないステージだった。
 全ての曲が終わったのは9時半過ぎ。実に2時間半に及ぶ長丁場のライブだった。

 今夜はリリースの告知がなかったが、これから来年に向けてスパンクスは何枚もレコードをリリースしていく。今はどうも学芸会っぽさが透けて見える箇所があるが、今後はステージがショーアップしていくだろう。

 次回ライブは1月後半。渋谷のイベント「システマ冬祭り」に参加とか。さて、行けるかなぁ。

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