LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
01/11/17 西荻窪 アケタの店
出演:ハヤカワ・ザ・ゴージャスナイト
(早川岳晴:b、北陽一郎:tp、斉藤"社長"良一:g、植村昌弘:ds)
今夜の演奏はHAYAKAWA名義じゃなく、セッション形式。
てっきり今夜は、早川岳晴の誕生日記念ライブなのかと思ってた。
(植村昌弘も勘違いしてたみたい。本当の誕生日は3月)。
「いやぁ・・・別にぃ。一生懸命演奏しようってことだよ」
早川は、あっさりとMCでとぼける。
観客は20人強というところか。ほぼアケタが満員になった。
ピアノの後ろには早川の自転車が置いてある。ここまでベースも担いできたのかなぁ。
ぼくが知る限りこの手のセッション形式ライブって、めったに早川はやらない。
今夜が充実した演奏だっただけに、またぜひ似たような構成で聴きたいもの。
<セットリスト>
1・KAMINEKO
2・おれは悪くない
3・Dorthaan's Walk
4・カーボン・フード
(休憩)
5・ワーム・ホール
6・手品師のルンバ
7・(?)
8・星への旅路(?)
(アンコール)
9・Triple Spirals
かなりあやふやなセットリストです。間違ってたらごめんなさい。
SALTの1stの一曲目に(1)は収録されている。
(2)はDUBの「danger」収録曲だそう。
ローランド・カークの曲が(3)。
早川自身はカークのバージョンを聴いてなく、故・板谷博(tb)とのセッションで覚えた曲だとか。
(4)は譜面台へ載ってたスコアに記載のタイトルです。詳細不明。
(5)はHAYAKAWAの1stに、(6)はCO2の「tokai」に入っている。
(7)〜(9)は曲目紹介ありませんでした。
(8)って、もしかしたらベンチャーズの曲。合ってるか自信ないです。
アレンジからベンチャーズを連想して、家でメロディを思い出しつつCD聴いて推測しました。
(9)もSALTの1st収録曲。
HAYAKAWAの2ndのボーナスディスクでも演奏されていた。
ライブは8時過ぎくらいに始まった。
まずは早川+斎藤+植村のトリオ編成。
ハードロックっぽいヘヴィなリズムで盛り上がる。
今夜はこの曲に限らず、各人のソロをたっぷり堪能できた。
早川はエレキベースを演奏。
ふっとテンポを途中で変えて、多重ビートになる瞬間がいくつかあった。
植村のソロが印象的。ソロの冒頭は金物のみで組み立てる。
スタック・シンバルがひしゃげた音で鳴るのをアクセントに、ハイハットやシンバルで静かなソロをくりひろげた。
(2)からは北陽一郎が参加。この晩はすべてコルネットで通していた。
なお、北陽一郎と斎藤良一は、今夜が初顔合わせ。
早川はウッドベースに持ち替える。弦を張り替えたので「チューニングが合わない」とこぼしながら準備した。
チューニングが弦の爪弾きに変わり、いつのまにか曲へ移行する。
gとdsが絡んでいき、フリーに曲が始まった。
植村はここで固めのブラシを使用。
演奏が盛り上がってくると、シンバルをブラシで連打する。
羽音のような音色が、いいフィルになっていた。
北は手でベルをミュートしながらプレイ。あまりフリーに流れぬ着実なソロだった。
このあたりから、ぼくは斎藤の演奏に耳をひきつけられた。
(2)ではスペイシーな音でバッキング。
そしてエフェクターを踏み分け、多彩な音色を操りアイディア溢れるソロを披露した。
メロディアスなフレーズもときおり折りこむ、刺激的なギターだった。
(3)では植村が普通の柔らかいブラシを持つ。
今夜の中で、いちばんジャズっぽいアレンジだった。
引き続き早川はウッドベース。
ベースにもたれかかり、ぐいぐいゆすりながら弾いていた。
アルコを聴かせたのはこの曲だったかなぁ。
ドラムソロは4小節くらいづつ、ペットやギターとフレーズを交換する構成。
植村はソロを全てブラシで押し通す。
手数多い組み立てと、ブラシの音色が対照的で面白かった。
植村いわく「ブラシでソロをしたのは学生以来」とか。貴重なものを見せて頂きました。
ちなみに早川は「ひさびさのウッドベースだから、途中で腕がつった」とぼやいていた。
第1セット最後の曲は、ブルージーな演奏。
早川がエレキに再び手を伸ばす。なぜか斎藤や植村が、始終にこにこ笑いながらプレイしていた。
20分足らずの短い休憩をはさみ、第二部がスタート。
まずは早川と植村の二人きりで「ワーム・ホール」を演奏。
植村はもっとアバンギャルドに突っ走ると思いきや、アルバム・テイクを踏まえたフリージャズ風な演奏。
今回はアルバムのアレンジにのっとり、ドラム+ベースの構成だろうけど。
早川+植村のデュオって、もっと聴いてみたい。
タイトな植村のドラムと早川の奔放な低音のバトルって、すごく面白そう。
後半2曲目からはメンバーが4人体制。
(6)はサビでテーマの譜割りとユニゾンで叩く、植村のタムが効果的だったな。
(6)はクールに演奏していたが、(7)からぐいぐいテンションがあがってきた。
今夜のベスト・プレイは(7)だろう。
各人のソロが猛烈に炸裂し、どの瞬間を切り取っても、とびっきりの演奏。
(8)はギターのカッティングとタムのロールがベンチャーズっぽいアレンジでした。
全員が譜面を見ながら演奏。早川もピアノの上に置いた楽譜を見ながらテーマを弾いていた。
演奏中、斎藤の弦が切れる。早川のソロのあいだに手早く交換し、抱え込んでチューニングを確認。
その瞬間ふっと早川が手を止め、植村に合図。ハイハットのみが響く。
どかどか盛り上がるアレンジから急転して静かな音使いになる。
怪訝そうに早川を見る植村。早川は斎藤を指差し、
「いや、チューニングだからさ」
植村は爆笑。
斎藤のチューニング完了と同時にカウントを唱えて、再びばかでかい音で全員が突き進んでいった。
エンディングでは早川がアンプを操作し、低音を強調。聴いてるぼくの身体にビンビン響いた。
アンコールはステージを降りることなく、すぐに応えてくれた。
「アンコールは準備してないんだよな」
と早川はつぶやきつつメンバーとざっと相談。「Triple
Spirals」をはじめる。
これまた、重厚でいかした演奏だった。
斎藤は熱演のあまり、またしても弦を切ってたっけ。
終演は22時50分。いや〜、面白かった。
ぎっくり腰で体調を崩してたにもかかわらず、斎藤の熱演はすばらしかった。
ところどころ荒い部分もあったにせよ、一曲目から彼らのグルーヴにもっていかれた。夢中になって聴いてたもの。
各人の対比を聴き込むHAYAKAWAとは異なり、今夜はそれぞれの音にじっくり対峙できた。
この構成でのライブは、次回にぜひつなげて欲しいな。