LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

01/11/5   新宿 ピットイン

出演:ラクダカルテット
 (水上聡:Key、林栄一:as、菊地成孔:ts、坪口昌恭:Key
  水谷浩章:b、外山明:ds、ゲスト:ほあちょ:Per)

 水上聡率いるラクダカルテットへ行ってきました。
 毎月ではないにせよ、ときたま新ピでライブをやっているようです。

 メンバーはリズム隊(水上、水谷、外山)及び菊地と、元ティポグラフィカ関連がずらりと並ぶ。
 坪口は東京ザヴィヌルバッハで菊地つながり。
 さらに強烈なアルトサックスの林栄一と、お好きな方にはたまらないメンバーです。
 
 上記のとおり、ゲストを抜いてもメンバーは6人クレジットされている。
 なのに、なぜ「カルテット」なんだろう。謎だ。
 ラクダのこぶは2つあるから、足して6人ってことかな(笑)

 観客は二十人ちょい。菊地ファンあたりでてっきり大混雑と覚悟して行ったが拍子抜け。開演をのんびり待っていた。

 坪口が遅れて現場入りするスケジュールだったらしく、すでに開場も済んだ20時ちょいまえに新ピに到着した。
 手早くセッティングする様を、ぼんやり眺める。

 坪口のセッティングが20時10分くらいに完了。
 モニターの音量を確かめるあいだに客電が落ち、メンバーがステージに登場した。
 楽譜がよく見えるようにか、ステージが真っ赤なライトで明るく染め上げられる。
 ときたま目潰し風に白い光りが客席にも。新ピでこの手のライティングはめずらしい。

 まずは全員が音ならしするように、さまざまに楽器を鳴らす。
 そのまま、無造作に演奏へ。
 坪口は最初、袖に引っ込み二曲目から演奏に加わった。

 ラクダカルテットの音ははじめて聴いたが、ジャズ風味のプログレってところだろうか。ザッパの影響も感じられる。
 全般的にソロよりも、ちょっとひねったテーマのメロディが印象に残った。

 MCがなくセットリストは不明。
 各セット45分くらいで前半5曲、後半5曲くらい。さくさくステージが進んだ。
 会場で買った彼らのCDから記憶をたどるに、「Marias funk 1」「BBA」「Juvenile delinquent dances」「Dog one dog」などを演奏してたのでは。

 とにかく彼らのステージはクールだった。
 水上もMCらしきことは特にしない。各セットの終わりにメンバー紹介をしたくらいか。
 曲間はマイクに手も伸ばさず、するりと次の曲へ移っていく。
 彼らの音を聴くのは初めてなので、ステージ進行に戸惑いつつ聴いていた。
 
 演奏は聴きどころ多し。
 まず耳に残るのが外山のドラミングだ。
 立ち上がったまま、すさまじい勢いで乱打する。
 第1セットの2曲目などは、ほとんどノーリズム。
 ほあちょのパーカッションとも足並みをそろえず、ポリリズミックに猛烈なビートを叩き出した。

 林・菊地のサックスも面白い。
 テーマ部分では譜面を眺めながら、複雑にうごめくフレーズをピタリとユニゾンで吹き鳴らす。
 雪崩れ込むメロディが心地よかった。

 もちろん、二人のソロもたっぷり。
 前半セットでは2曲目。後半セットでは3曲目かな。
 二人とも、それぞれの個性でサックスに悲鳴をあげさせた。
 
 坪口はキーボードだけでなく、カオスパッド(かな?)で音色をサンプリングし、指でうねうねと加工してアレンジに多様性を与えていた。
 水谷は終始エレキベースで通す。後半一曲でソロを披露した以外は、着実なプレイで演奏を支えていた。

 意外だったのが水上。ほとんどキーボードを弾かない。
 ソロはおろか、アンサンブルでも和音を叩くくらい。あまり目立たなかった。 
 メンバーのソロの時は、腕組みしながらのんびり演奏を見つめる。
 渋谷毅オーケストラを連想しながら聴いていた。
 
 第1セットはあっけなく終わる。セット最終曲の前で、メンバー紹介と「『BBA』をやります」と、初めて喋った。
 「BBA」で水上によるはじめてのソロ。
 ぐにょぐにょしたフレーズが曲の感触とよく似合ってた。

 前半セットの聴きどころは、2曲目の林と菊地による圧倒的なソロ。
 あと4曲目の、外山・ほあちょによるコンビネーションソロかな。
 外山とほあちょが、ジャジーな雰囲気に乗っかって多彩に連打する瞬間が面白かった。

 後半戦は、21時15分くらいから。
 第1セット同様に、各人の音慣らしから演奏につながる。
 スペイシーな曲だった。ここから2曲目にメドレーでつながったのかな。
 最初と最後では、違う曲に聴こえた。

 3曲目ではまたもや菊地のフリーキーなソロが炸裂。
 なめらかな音色はいつも通りだが、今回は高音部も多用し激しく音を響かせた。
 めまぐるしく蠢くソロは、すばらしくスリリング。
 先日聴いたライブが比較的リラックスしていたのとは対照的。
 一昨年末にルインズと共演した時が、こんな吹きっぷりじゃなかったかな。

 同じ曲では、林も負けずに激しいソロ。
 アルトサックスに悲鳴をあげさせっぱなしだった。
 また、バックで外山がソロを煽り立てるんだ、これが・・・。

 第二セット最後の曲は、バンドアンサンブルが楽しめた。
 それぞれの楽器から流れる音が、ピタリと絡み合ってグルーヴを生み出す。
 ここで初めて水谷のベースソロ。
 それまで控えめだった音量がぐっと大きくなり、ハードに弦を震わせた。

 再びアンサンブルに戻り、林と菊地が短い小節ごとにソロを交換し合う。
 さりげないアレンジが、めちゃくちゃかっこいい。
 この曲が、今夜のベストトラックかな。

 アンコールの拍手には、すぐ応えてくれた。  
 「あんがい盛り上がってますね。こんなはずじゃなく、クールに行くつもりだったのになぁ」
 水上がぼそっとつぶやく。
 
 最後の曲は「ドライブ」。10分くらい演奏してたろうか。
 菊地→坪口→林と、各人のソロをたっぷり味わえた。
 エンディングはどたばたっとドラムがこぼれる。
 そのままソロでしばらく叩いて・・・とっちらかりぎみなエンディングだった。 

 終演は22時10分くらい。
 耳にクイクイ引っかかる旋律と、矢継ぎ早に畳込むビートが生み出す音楽は、かなり面白い。

 外に出るとめちゃくちゃな大雨。花園神社で祭りがあったらしく、屋台が靖国通りにずらりと並んでいたが・・・。
 とても買い食いできるような天候じゃない。
 おしいなぁ。晴れた夜なら、なにか食べながら演奏を思い出しつつ、楽しい気分で駅まで歩けたのにな。 

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