くLIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2001/9/22   渋谷 Clubクアトロ

出演:Date Course Pentagon Royal Garden
   〜アイアンマウンテン報告ライブ〜
   w/Boat,Panic Smile,Captain FunK


Date Course Pentagon Royal Garden
 (菊地成孔:Organ, CDJ、津上研太:ss、後関好宏:ts、ss、大友良英:g、
  高井康生:g、坪口昌恭:Key、吉見征樹:Tabla、三沢いずみ:per
  栗原正己:b、芳垣安洋:ds、藤井信雄:ds)

 
 僕は当日券で入った。ちょっと遅刻して、会場についたのが17時45分くらい。
 で、整理番号が830番。ほんとかよ〜。
 最終的にはフロアから周辺までびっしり満員。数百人は軽くいるはず。

 ここまで混むとは。ぼくはいち早くフロアに陣取り、かなり前のスペースへ行けた。
 BGMにはザッパの88年ライブ「Make a jazz noise here」のDISC1がずっとかかっている。

Boat(18:45〜19:15)

 五人組のバンド。ぼくは初めて聴く。ds,b,gが女でkey,gが男の編成だった。
 雰囲気はインストのギターサイケバンド。
 マイクは数本立っていたが、ほとんど歌を歌わない。
 中央に陣取った男のギタリストが暴れるのが、サウンドの肝になっているようだ。

 変拍子も使ってたようだが、もうちょいリズムがグルーヴィなほうが好み。
 とはいえ、エフェクターを効かせワイルドなギターのインプロは面白かった。

 やりたいことは何となく見える。音のピントをあわせたら、さらにかっこよくなるんじゃないか。
 少々もどかしい演奏だった。

Panic Smile(19:45〜20:15)

 Panic Smiledsは女dsに、男gx2、bの4人組。彼らの音も聴くのは初めて。
 gの一人は大柄な白人で、フライングVにずらりとエフェクターをつなげる。
 ネックに栓抜きや音叉(?)をはさみ、ノイズをばらまいて演奏が始まった。

 サウンドの主導権が二本あるみたい。一本は日本人部隊で、一本が白人ギタリスト。
 フライングVはノイジーな音から細かいフレーズまで多彩だが、他の3人と有機的に音が重なってない風に聴こえた。

 このバンドも、変拍子を多用。かなり沈うつな音を出していた。
 ドラムスがボーカルを取るが、マイクバランスがオフ気味でさっぱり声が聴こえない。あれは演出だったのかな。

 Panic Smileも、もうちょいリズムに色気が欲しかった。
 でも、ノイジーなところは楽しめる。
 エンディング間際で演奏した、メンバー全員がハーモニーを入れつつ盛り上がる曲はシャープでいかしてたなぁ。

Captain FunK(20:15〜21:00)

 Panic Smileの演奏が終わると即座に、フロア隅に確保されたDJスペースでCaptain FunKが廻し始めた。
 基本的にはちょい早めのダークなテクノ。ノイジーな盤も混ぜていた。

 ここでフロアが盛り上がるかと思いきや。踊っているのはごく一部。
 観客のほとんどはセットチェンジ中のステージを見つめている。Captain FunKには残念な展開だった。キレのいいテクノを廻してたと思うけどなぁ。
 そのせいか、中盤からぐいぐいビート感が希薄になってきた。

 ステージ上ではスタッフが大まかにセッティングしたところで、大友良英が登場。
 ギターをつないで準備をはじめた。続いて他のメンバーも登場し、ごちゃごちゃ楽器をいじり始める。
 菊地はステージに登場すると、Captain FunKのプレイをしばし眺めていた。

 セッティングが終わると、いったんメンバーは奥に戻る。
 Captain FunKのテクノは依然として静かな展開。

Date Course Pentagon Royal Garden(21:00〜22:30)

 今回は大儀見元が欠席し、かわりに三沢いずみが加わる。彼女は2回目のDCPRGかな?過去、DCPRGFとしてライブに出演したことあるはずだ。

 Captain FunKのDJが続く中、メンバーはぞくぞくと登場し、歓声が上がる。
 菊地は登場するなりCaptain FunKを鋭く指差し、拍手をあおった。
 そしてDJプレイからDCPRGへと、クロスフェイドで音が切り替わっていった。

 一曲目は「Catch22」。サックスを除くメンバーらがてんでにさまざまなビートを奏でる。混沌がフロアに溢れた。

<セットリスト>
1.Catch22
2.Playmate at Hanoi
3.Circle/Line〜Hard core peace
4.ステイン・アライブ
5.Hey Joe
(アンコール)
6.Mirror balls

 PAに貼られた曲目表には4がなく、6は「ホー・チ・ミン市のミラーボール」と書かれていた。
 さらに曲目表には6の前にアンコールとして「S」が書かれてたけど、この日は演奏されず。
 終演後にロビーで、演奏を終えたばかりの後関好宏が友人へ「Sは時間なくなって、カットしちゃった」と話してるのが聞こえた。
 
 4はぼく自身は聴いてて曲名を気がつかず、菊地のHPのBBSを参照させて頂きました。
 あと、菊地が告知してた「全米ビフテキ芸術連盟」は演奏されなかったようだ。

 さて、「Catch22」。

 予想以上に、菊地は細かく指揮していた。
 ひっきりなしにメンバーへキューを送り、個々のメンバーを抜き出す。
 まずは藤井のドラムソロ。続いて他のミュージシャンも。
 菊地の指が一閃し、バンド全体によるテーマを何度もたたみ込む。
 サックスへサインを送り、津上と後関はけだるげなメロディを吹き始めた。

 菊地はランダムにメンバーを指定し、カットイン。
 ソロのビートとバンドのビートを対比する。
 指が振られるたびに、音の風景が変わる。全員がてんでんばらばらに演奏する、多重拍子がべらぼうにかっこよかった。
 「Catch22」だけで、20分くらい演奏してたろうか。

 さらに混沌さを増した「Playmate at Hanoi」をはさみ、続く「Circle/Line」になっても、フロアは踊りつづける。
 7拍子のこの曲で、ゆらゆらフロアが揺れるさまは爽快だ。 
 中盤で腕時計を見て菊地が苦笑い。多分時間が押していたのでは。
 3曲終わった時分で、一時間経過してたから。

 クアトロのPAは、音がでかくていい。でもいまひとつ楽器の分離が悪い・・・団子で聴こえてしまう。
 ギターが大きすぎ、サックスがよく聴こえなかったなぁ。
 音響スタッフはどう思っていたにせよ、DCPRGの音楽はしこたまジャズっぽい。
 ルーズにシンバルを叩く藤井に、鋭く芳垣がハットを重ねていく。
 パーカッションもベースも、微妙にズレたりズムを提示し、グルーヴが盛り上がっていく。

 菊地はオルガンをたまに弾きつつ、メンバーを指しては指を振り下ろす。
 そのたびにそのメンバーが抜き出され、なまなましくビートが浮び上がった。
 2曲目だったかな。大友のギターソロをメインにして、バンド演奏をカットインさせる。
 単音を響かせる大友に、何度もリズムが襲い掛かるさまがスリリングだった。

 菊地が音を消したいミュージシャンを次々指差し、すっと指で軽く自分の首を切った。
 スパッとその楽器が演奏を止め、残ったメンバーのみのサウンドが響く。

 二人のドラマーがハイハットだけをプレイ。
 さらにパーカッションとタブラだけを残して、サックスソロを目立たせる、好アレンジの瞬間もあった。

 「ステイン・アライブ」は"ダークなしっとり系"。はじめは「S」のバージョン違いと勘違いしつつ聴いていた。
 後関と津上がツイン・ソプラノ・サックスを聴かせたのはこの曲かな。
 
 ここでやっと菊地のMC。ただ、二言三言挨拶をしただけ。
 「次はジミヘンのデビュー曲です」と紹介して、演奏を再開した。
 まずは大友のギターと菊地のオルガンによるデュオ。
 ノイジーでヘビーな音像を、えんえん作り上げた。
 踊っていたフロアも、立ち尽くしてステージを見つめる。

 けっこう長く二人の演奏を続けた後。
 坪口がクラヴィネット風の音色で、アルバムと同じイントロのフレーズを重ねた。
 フロアが再び揺れだす。

 全般的にシリアスな感触のステージ。
 とことんぐしゃぐしゃになり、菊地が哄笑しながら指揮するのを楽しみにしてたけど。
 そこまでハイにならず、クールな意識を頭の片隅へ、常に残していたようだ。
 だけど、盛り上がらないわけじゃない。
 複数のビートが重なり合って産まれる、怒涛のグルーヴに満たされた至福のひとときだった。

 「ヘイ・ジョー」のエンディングが素晴らしい。
 ふっと演奏がストップし、ドラムのデュオだけが残った。
 鋭く二人がビートを叩き出す。
 メンバーはドラムソロが鳴り響く中、ステージを去っていった。
 菊地は中指立てとピースサインを交互に繰り返しながら袖へ消えた。

 藤井と芳垣だけが、まだ演奏を止めない。
 二人だけにピンスポットがあたり、えんえんドラムソロが続く。
 5分近く二人だけの演奏が続き、そして二人も袖へ下がる。
 とびっきりのアレンジだった。

 アンコールの拍手は、すぐに応えられた。
 菊地が「ほんとに、なんてことになったんだろうね。安っぽくて・・・泣きたくなる話だ」と言う。
 現状を踏まえたシビアなMCだけど。
 「Mirror balls」の原題は「安っぽくて泣きたくなる話」と知ってるから、ついつい笑い声がそこかしこで漏れる。

 ベースが階段状のフレーズを弾きだし、キーボードを重ねる。
 バンド全体が吠え始め、またもやステージから複雑なダンスビートが提示された。
 フロアはすぐさま反応。
 菊地が指で場面展開を知らせ、振り下ろすとブレイクへ展開する。
 メリハリが効いた演奏だった。
 
 この曲の演奏をしながら、CDーJのスイッチを菊地はせわしなく操作する。
 ついに諦め、大友に小さく指でXサイン。どうやら壊れたようだ。
 エンディングは菊地へ音が収斂し、オルガンによるソロ。
 しっとりと演奏が終了した。

 一曲を長めに膨らませてえんえんグルーヴに酔える上、アルバムでは聴けない、カットアップも堪能できる。
 生演奏ならではの魅力をたっぷり提示した、最高のライブだった。
 一時間半があっというま。もっともっと彼らの演奏を聴いていたい。

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