LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

01/5/27   下北沢 レディージェーン

出演:今沢カゲロウ
   (今沢カゲロウ:6弦エレキベース)


 最初のセットが始まったとき、観客は二人だけ・・・。とほほ。なんてこったい。
 店の人に声をかけられて、8時ちょいまえに今沢は演奏の準備を始めた。
 ストラップは二本。幅広のストラップを両肩にかける。
 がっちりベースが身体に固定され、どんなに激しく動いてもびくともしない。
 今沢はおもむろに6弦ベースをはじき、ライブが始まった。 

<セットリスト>
1)Baritoneon
2)  ?
3)DTA
4)Edgerunner`s

 (休憩)

5)Scots Diver〜M.U.
6)Celluloid Sunshine〜Grey Zone
7)Kagero Bahn
8)新曲〜Cyclone

 足元にはエフェクターがずらり。
 高速でグルーヴたっぷりのテクノビートを刻みながら、今沢は足でペダルを踏む。
 すると。いましがた弾いたフレーズがバックトラックとして流れ始めた。

 どうやらディレイをサンプリングマシンとして使っているようだ。
 低音のビートをループさせつつ、今沢の指が激しくネックの上を滑る。
 ぼくは彼の演奏にぐいぐいのめりこんでいった。

 6弦ベースを自由自在に今沢は操った。
 ハイスピードのチョッパーからタッピング。しまいには両手で同時に別の弦をバシバシ弾き、つぎつぎに細切れフレーズを叩きだす。

 さんざんリズムが走り回り盛り上がった瞬間に、横に置いたボリュームペダル(?)で、すぱっとブレイク。
 一瞬、ビートが叩き切られ、すぐさまリピート。
 そんなDJ風のアレンジが、すごく効果的だ。

 ペダルの操作は、基本的に両足。
 ときに足を後ろで交差させ、優雅な姿勢でエフェクターのスイッチを踏む。
 曲のエンディングでは、右手でネックをそっと抑えて音を止める。
 そんなポーズまでが、ぴたりと決まっていた。

 2曲目が終わったところで、非常に丁寧なMCをしてくれた。
 おかげでぼくも曲名がわかったしだい。
 もっとも二曲目はちょっと聞き取りそびれてしまったけど・・・。

 3月に5枚目のソロアルバムがでたばかりだから、てっきりその曲中心かと思いきや。
 ほとんど過去のアルバムに収録された曲中心だった。
 前半は、ビートに重点を置いたダンサブルな演奏が多かったかな。
 
 汗をしたたらせながら、さまざまな奏法を駆使して低音が暴れる。
 激しく弦を弾いたかと思うと、屈みこんでエフェクターをいじってノイズをばらまく。
 エフェクターを操作しているときも片手でネックをリズミカルに抑え、トリガーのように使っていた。
 高速フレーズだけでなくノイズ風の混沌さも織り込んだ、多彩な音作りだった。 

 さまざまなエフェクター操作で音が歪み、あふれかえる。
 店の壁が共鳴してずしんずしん響くせいもあり、どの音がループで、どの音が演奏なのかわからなくなることもしばしば。
 とにかく、圧倒的な演奏だった。

 第一部は40分ほどの演奏。
 過去のライブで定番な曲が中心だったらしい。

 休憩時間になるとすぐさま、ぼくは物販してた今沢のソロアルバムをわしづかみしてしまった(笑)
 めちゃくちゃかっこいいんだもん。
 その頃にはぱらぱらと観客も増え、全部で9人くらいになったのかな。

 しばしの休憩後、第二部が始まる。
 こんどはメロディを強調した曲が多かったようだ。

 後半一曲目は、最新アルバムの収録曲。
 演奏の始めに携帯を取り出し、着メロをピックアップ経由でディレイに入れてループの素材に使用。

 事前に最新アルバムだけは予習していたので、聞き覚えのあるメロディが流れ出した瞬間、身を乗り出した。
 アルバムではリズムボックスで厚みを出していたが、この夜は全て一人多重演奏だった。

 ディレイで作り出されたビートが店内を覆いつくす。
 超絶技巧で音が矢継ぎばやにこぼれだし、音像の薄さはまったく感じられなかった。
 むしろアルバムより音数が、ずっと多かったくらい。

 3曲目は自作の「カゲロウ・バーン」に続いて、カバーを数曲メドレーで弾く。
 コルトレーンをやったらしいが、残念ながら曲名わからず。
 つづくクリムゾンの「太陽と戦慄パート2」は、あのリズムとメロディをベース一本で見事にカバーしていた。
 
 そのあとに演奏したカバーは、ぼくにはマルの「レフト・アローン」に聴こえた。
 今沢の演奏スタイルから言って、違う曲かも知れないが・・・。
 テーマ冒頭のメロディを何度も繰り返しつつ、足元のエフェクターで音色を切り替える。
 だんだん音色がブライトになって、しまいにはギターのような音色でプレイしていた。

 最後の曲は、新曲をいくつかメドレーで披露。
 曲の冒頭でやさしくくっきりしたメロディを、ゆっくりとベースで奏でた。
 次第に演奏は混沌としていき、流れる音がぐいぐい加速して。
 いつしかメロディがめまぐるしく爆発する。
 
 激しいソロが続き、そして。最後にもう一度テーマに戻る。
 やさしく、冒頭のメロディをリピート。
 そっとネックを右手の指で押さえ、今夜のライブが終わった。

 後半戦も40分ほど。
 全般的に短めで物足りない演奏だったけど。
 この観客数ではアンコールをお願いするわけにも行かないしなぁ。
 充実してたからこそ、物足りない。そんな贅沢な夜だった。

 今沢は現在ツアー中。東京を中心に(数日間、札幌でも公演)6月中ごろまで何度もライブを行う予定です。
 テクノとプログレとフリージャズが好きな人なら、めちゃくちゃ楽しめると思います。
 機会があれば、ぜひ。

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