LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
01/4/21 西荻窪 アケタの店
出演:三上寛+石塚俊明
(三上:vo,g、石塚:ds)
8時きっかりに、二人はステージに上がって行った。
三上は客席に背を向けたまま、手に持ったミネラル・ウオーターをがぶりと飲んだ。
ギターを身体にかけて、でかい音でチューニングをする。
そして・・・。何の前置きもなしに、三上は歌い始めた。
フォークシンガーの三上に、元頭脳警察の石塚。
ぼくが二人に興味を持ったのは、灰野敬二経由だった。
この3人によるバサラのアルバムに漂う、郷愁感とノイズが混在した音が面白かったから。
三上のセッティングは簡素なもの。
ぶら下げたギターは、クリーム色をしたグレッチのセミアコ。
シールドをそのままアンプにぶちこみ、ピッキングの強さだけでダイナミズムを作り出す。
ギターはジャカジャカ弾くだけ。フレーズらしきものはほとんどなし。
いや、それ以前にコードもわずかしか使用してないみたい。
ところが湧き出るサウンドは、おそろしく刺激的だ。
かき鳴らすコードには、切ない郷愁感を感じる。
日本のブルーズって、こんな感じなのかな。
三上の演奏を聴きながら、そんなことを考えていた。
ライブは淡々と進行。
MCはなにもない。曲も5分くらいでつぎつぎ変化し、インプロはほとんどない。
とにかく、三上の存在に圧倒された。
矢継ぎ早に言葉を叩き込み、喉から声を絞り出す。
マイクを通した馬鹿でかい音が、アケタの中に響き渡った。
小節感がほとんどない。独特の譜割りだ。
ひたすら歌い、その合間にギターをかき鳴らす。
そんな独特の三上節を、石塚が見事に盛り立てた。
あくまでパーカッションとして、ドラムセットを叩く。
激しくタムをぶん殴り、パルス状にビートを撒き散らす。
ノーリズム、ノービート。
歌詞は日本語なのに、意味は解体されて言葉の鳴りが強調される。
すばらしく居心地が悪くて、めちゃくちゃかっこよかった。
三上はうろうろとステージを歩きながら、ギターをかきむしる。
石塚と、ほとんど視線を交わさない。
口をもぐもぐさせ、鋭くギターを鳴らしていた。
曲の合間に、背を向けてギターをチューニングしなおす。
もしかしたら、チューニングを変更していたのかも。
ちょっと和音の感触が変わったから。
いつのまにか、三上の額に汗がにじむ。
真っ赤な顔で、迫力のある唄を吐き続けた。
石塚も、汗まみれでスティックを振るう。
前半のステージは45分くらいで終了。6〜7曲やっただろうか。
めちゃくちゃ濃密な瞬間だった。
しばしの休憩の後、第二部がスタート。
またもやなにも、前置きなし。
三上の唄はぼんやり聴いていると、全て同じような曲みたいだ。
だけど一曲一曲に、耳に残る違いが確かにある。
唄のメロディもあってなきがごとし。
ときにはラップのように言葉を繰り出す。
どんなにノイジーに音楽が変化しても、心の奥底で強烈に親しみやすさを感じる。
ベクトルはまるで逆だけど、ふっとJBを連想してしまった。
独特のリズム感と、さまざまなテクニックを使い分けた表情豊かな歌唱スタイルがすばらしい。
誰の真似でもない。誰にも真似できない。
三上の個性が、最高にいかしてる。
三上は後半もハイテンションで歌いまくり、ギターを激しく弾き殴った。
曲の終わりで余韻をじんわり味わい、音が消え去ると「えいさ〜・・・」声を漏らし一息つく。
ときににっこり笑い、無言のまま石塚を手のひらで指し示す。
そのたびに、ぼくら観客は盛大に拍手を送っていた。
もっとも観客はわずか7人ほど。なんともったいない・・・。
石塚と三上の息は、絶妙のタイミングで合っていた。
三上が何の合図を送らずとも、石塚の緩急は合致していく。
だけど石塚が三上にあわせて感じじゃない。
時には暴力的に、時にはクールに。
混沌とした石塚のドラミングは三上の音に彩りを加え、なおも自由に響く。
彼の太鼓で、さらに音に魅力が増していた。
ボーカルを主体にしていた三上だが、時にはギターでインプロを披露した。
しかしメロディを弾くことは少ない。コードらしきものを無頓着に弾く。
そこへ石塚が切り込み、ニュアンスたっぷりの音像を作り出していた。
後半も6〜7曲演奏したろうか。
これまでフリーに叩いていた石塚が、急にリズミカルに叩き出した。
三上が顔を真っ赤にし、汗をしたたらせながら吠える。
石塚の手数はますます多くなり、いつのまにか着ているTシャツは汗みどろになっていた。
テンションが天井知らずにあがっていく。
しまいに三上は、ステージ後方へ下がって絶叫する。
奔流のように演奏が吹荒れて・・・ライブが終わった。
拍手に見送られ、二人は肩で息をしながらステージを降りる。
アンコールなしだけど、しかたないかな。
二人の迫力に圧倒された、すばらしいライブだった。