LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

01/4/5   江古田 バディ

出演:ドンバ
  (泉邦宏:as、さるへん大塚寛之:g、不破大輔:b、関根真理:per、植村昌弘:ds)


 仕事がギリギリまで引っ張ってしまい、かなり焦りながらバディについた。
 7時半過ぎくらいかな。演奏が始まってなくてホッと一息。

 バディはステージが広く、たっぷり機材を置ける。
 関根真理のポジションはボンゴ類が鈴なり。泉邦弘の周りにもパーカッションがずらりと並べられていた。
 ちなみに泉のまわりにはプラスチックのでかい籠がふたつほどある。
 各種の笛がごちゃごちゃと詰め込まれ、まるでおもちゃ箱みたいだった。
 
 逆に他の3人はシンプルな機材。不破大輔とさるへんは、アンプを一つ置いているだけ。
 植村も、タム1つにシンバル3枚くらいのこじんまりしたセットだった。

 ステージのセット類は当然ながら、ない。
 ただ、後ろの白い壁に丸い灯かりが浮かび上がる。まるで月みたい。
 
 客席うしろのスペースでだべってたメンバーは、7時50分頃おもむろにステージへやってきた。
 まずは関根と植村昌弘がスタンバイ。
 ほかのメンバーは飲み物をもらったりして、うろうろしていた。

 「もうちょっとで始まるな」と、よそみをした瞬間。
 馬鹿でかい金物パーカッションが打ち鳴らされた。関根だ。
 
 メンバーがそろいもしないのに、どっしりしたビートでドラム缶風のパーカッションを叩く。
 植村がビートをあわせ始めた。
 その二人の演奏をバックに、他のメンバーが準備を進める。

 右肩にストラップをちょこんと引っ掛け、ギターを構えるさるへん。
 不破はパイプ椅子に座り、エレキベースを抱え込んだ。
 植村のキューで、音が重なる。
 そして、泉がさらりとテーマを吹いた。
 
 まず演奏されたのは、泉の曲「おまつり」。
 軽やかなテンポの、小気味よいプレイだ。
 
 今夜は他にも泉の曲をいろいろやってたようす。
 「GO!GO!」や「party in the basement」を演奏したと思う。
 渋さの曲もやってたけど、曲名を思い出せませんでした。

 泉はテーマから、ソロになだれ込む。
 アルトサックスながら、太い音が気持ちいい。
 サックスに悲鳴をほとんどあげさせない奏法も、ぼく好み。

 太鼓類は、あまりグルーヴは感じられなかった。
 不破のベースくらいかな。
 とにかく太鼓はタイト一辺倒だった。
 
 植村はとうとう最後までソロが無し。
 もっともライブの間、手数多く叩きまくってくれた。
 だからステージ全体が植村のソロともいえる。
 ジャストなビートを刻みつつ、しょっちゅう効果的なフィルを織り込んでいた。

 ステージ後方の壁に写った、月あかりの正体も判明。
 ドラムセットのタムが、ライトを反射してたんだ。
 タムを叩くと影が微妙に揺れ、妙にかっこいい。

 植村はタムの位置が悪いのか、ハードなドラミングでずれてしまうのか。
 しょっちゅう演奏の合間にねじをしめなおしていた。
 素晴らしく気持ちよく鳴るドラムだった。

 泉のソロから、さるへんのギターへ。
 ドレッドヘアを振り乱しながら、粘着性の、ぶっといソロをばらまいた。
 以前渋さで聴いた時よりは、かなりクールなプレイだ。

 アーミングを多用して、じゅるっとしたフレーズがかっこいい。
 さるへんは目を閉じ、ボディアクションをふんだんに入れて弾くから、視覚的にも楽しめる。
 残念だったのがバッキング。
 すぐさまボリュームを落とし、ほとんど聴こえなかった。

 関根のソロになると、泉が笛でぷかぷか遊び吹きを始めた。
 妙に雰囲気が祭りっぽくなる。
 植村がにこにこしながらバスドラを、ダブルペダルでどかどか踏み鳴らした。

 一曲目では、不破のソロもおもいきりディストーションを効かせた音色。
 どっしり座ってエレキベースを弾き殴る。
 そして、植村と視線をあわせて、さらっと倍テンポ。めちゃくちゃいかす。

 2曲目は、二種類のフレーズが交互に現れる曲。
 まずは静かな雰囲気で小さくサックスが鳴り、次の瞬間豪音ギターが炸裂する。
 
 さるへんは右肩に引っ掛けただけのギターを振り回し、ポーズを決める。
 いつのまにか観客として来ていた、佐々木彩子が最前席ではしゃいでいた。

 不破もさるへんも咥えタバコで演奏する。
 不破がアルミの灰皿を床にほおり投げて、パーカッションみたいに響かせた。
 なんどか繰り返したあと、さるへんのほうに灰皿を放り投げた。
 さるへんはギターを弾きながら、タバコを吹き飛ばす。
 吸殻をを律儀に泉が拾って灰皿に捨て、微笑ましかった。

 さるへんのギターは、早弾きみたいなテクニックは目立たせない。
 フレーズもリズムにのってるんだか、のってないんだか。
 そんな自由奔放なプレイが、一番の魅力だと思う。

 3曲目はベースのイントロで始まる、たぶん渋さの曲。
 泉が妙にくきくきと断片的にメロディを吹いていた。
 そのままメドレーで続けたワンステージ最後の曲で、かなりバンドののりが一体化してくる。
 一時間程度で、前半戦が終わってしまった。あっというまだ。

 20分くらいの比較的短い休憩時間で、第二部開始。
 まずは植村がステージに上がって、小気味いいリズムを刻み始めた。
 第二セット開始直後に、さるへんは裸足になってたっけ。
 
 後半では、植村と不破のアイコンタクトでリズムチェンジが多かったと思う。緩急が効いていた。
 高速からどっしりしたビートまで、変幻自在。
 ワンコーラス単位くらいで、ころころテンポを変えるのが刺激たっぷり。
 さすがに、植村おとくいの変拍子はなかったみたいだけど。おそらく。

 泉とさるへんのやりとりで始まる曲もあった。
 まずは笛でぷかぷか泉が吹く。
 最初はおずおずとしていたさるへんも、いつのまにかワイルドにギターを響かせた。
 泉はやつぎばやに笛を交換し、ときには声でコミカルに吠えて見せる。

 どんどん曲のテンポが上昇。
 不破は軽々と、つるべうちにハイスピードで弦をはじく。
 もちろん植村もノンストップ。すさまじい勢いでスティックが踊った。
 もうこのころにはスティックも、ささくれ立っていたようだ。

 このテンションのまま最後まで駆け抜けて、あっさりと演奏終了。
 アンコール無しでステージを降りてしまい、あっけなかった。

 今回の感想は、かなり後半戦をはしょっている。
 なぜって演奏にのめりこんで、こまかいメンバーのやり取りをほとんど覚えていない(苦笑)
 
 とにかく最初から最後まで、聴き所だらけ。
 なのに観客は10人くらい。めちゃくちゃもったいない。

 聴いててジャズっぽさは少ない。
 ワイルドにギターを鳴らすさるへんに、タイトなビートを着実に提示する植村がロックの文脈。
 そこへ泉がソロで切り込んだ途端に、音の風景がジャズ風に変わる瞬間がたびたびあった。
 関根と不破はグルーヴを提示しつつ、高速テンポにも柔軟に対応する。
 バンドの一体感よりも、さまざまなノリが折り重なるところが面白かった。
 
 ぜひまたドンバのライブを聴いてみたい。
 タイトなバンドだけど、こういう音楽性は他に思いつかない。

 不破がらみのバンドで言えば、さわったら切れそうなフェダインの緊張感ともちがう。
 あえて例えるなら、しがみついてないと振り落とされそうな緊張感・・・ってとこかな。

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