LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

01/3/20   高円寺 20000V

出演:Incapacitants+K2
 (T・美川:electronics,vo、F・小堺:electronics,vo)
  K2:electronics,vo)


 出番まで客席をうろうろしていたインキャパシタンツのメンバーが、ステージでセッティングを開始したのは、8時30分過ぎくらい。
 三人とも、黒地のTシャツ姿。
 中央にはK2。K2をはさんで向かって右に小堺、左に美川が立った。

 おのおのの目の前には、テーブルが置かれた。
 そのテーブルの上にエフェクターや機材が、ごっそりのっている。
 三人ともうつむき加減に、手早く機材のスイッチをひねったり、コードを接続し始めた。
 
 美川がサウンドチェックするかのように、ノイズをばら撒いた。
 しばらくすると、他の二人が音をかぶせていく。

 いきなり落ちる客電。唐突にインキャパのステージが始まった。

 観客はこのときとばかりにステージ前に詰め掛ける。
 数十人はいたかな。若い白人の男が一人、ステージ前で大喜びしながら騒いでいたっけ。

 彼は「YE〜〜S!」と絶叫しながら、ステージに向かって指を突き出す。
 豪音をものともせずにスピーカーに抱きつき、ノイズを体感する。
 しまいにはフロアに寝っころがリ、恍惚とした表情をしていた。
 「これがノイズを聴く作法かな〜」と、思わずしみじみしてしまう。
  
 ノイズのボリュームは、瞬く間に上がっていった。
 なにがなんだかわからない豪音が重なり合っていく。
 基本はノーリズムの電子ノイズ。ビートらしきものは聴き取れない。

 音はでかく、全て渾然一体のだんご状態。
 すでに誰がどの音を出しているのか、さっぱりわからない。

 金属のコイルをばらまく嵐か、竜巻の中に叩き込まれたみたいな感じだ。
 機材を操作する三人は、終止うつむいたまま。
 小堺がエフェクター(?)のボタンを、力任せに何度も引っ叩く。

 美川は、鉄板をノイズのトリガーにしてたみたい。
 二枚の鉄板にコードがついている。
 その鉄板をテーブルに押し付けたり、二枚を手に持ち上げてこすり合わせてノイズを出す。ぶんぶん揺らしたりもしていた。

 そんな美川の操作で、多少ノイズが変わるような気がしたけど・・・。
 爆音が耳に注ぎ込まれて、今ひとつ音の変化が実感できやしない。
 とはいえ、音のボトムが妙に高い。
 低音成分はもちろんあるけど、むしろ軽やかなノイズが多かった。
  
 構成も盛り上がりもない。ひたすらノイズが爆発する。
 美川が時折、身体をけいれんさせた。
 真剣な顔つきで目をひん剥き、がしゃんがしゃん機材を操作。

 インキャパシタンツのノイズに、リズミカルさはない。
 ビートなし、パルスなし。うねうねした電子ノイズがあふれ返る。

 いつのまにかK2がマイクを持ち、絶叫を始めた。
 いや、始めていたはずだ。なにしろ、音がまったく聞き取れない。
 ステージとは、ほんの一メートルしか離れていないのに。
 目の前にノイズの滝が流れ落ちて、K2の声を聴くことが出来なかった。

 小堺と美川もマイクを握る。
 三人によるボイス・パフォーマンス。
 このときですら、ぼくは3人の声をまったく聞き取れなかった。
 盛大なノイズの音圧に圧倒されっぱなし。

 三人三様、身体をよじりながらマイクに向かって吠える。
 小堺はマイクを手に持ちステージから身を乗り出し、観客をあおる。
 近くにいた観客が拳を突き上げ、小堺に応えた。
 
 小堺が、そのままステージからダイブ。
 二度、三度。
 観客らは小堺の巨体を支えきれず、小堺がフロアに倒れこむ。

 むくっと起き上がった小堺が、ステージに戻ってスピーカーからマイクを引っこ抜いた。
 マイクを握り締めて叫びながら、再度ダイブして客席に襲い掛かる。

 そのまま観客をかき分け、小堺はフロアを駆け抜けていった。 
 振り返ると、もうステージには誰もいない。
 ここまでわずか20分。
 あっというまのステージだった。
 
 ちなみにこの日は、他に4組のノイズバンドが出演。
 とはいえ、今ひとつ好みの音じゃないので、感想は割愛させてください。
 
 そうそう。他のバンドが演奏中、PAのレベルメーターを何の気なしに覗きこんでみた。
 もちろん、針はレッドゾーン。
 一番右まで振り切って、ぴくりとも動かなかったっけ。
 ライブハウスを出るときには、僕の耳はきんきんに耳鳴りがしてた。

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