LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2001/3/10   渋谷 クラブ・エイジア

出演:スラップ・ハッピー
  (菊地成孔:vo、CD-J、岩澤瞳:vo)


 会場にはぎっしり観客。200人くらい入ったんじゃなかろうか。
 客層はばらばら。比較的若い人が多かったかな。
 スパンクスって、こんなに集客力があったとは。ちょっとびっくり。

 ステージにはソファとスタンド(菊地の自宅から持ち込んだとか)を配置。
 なんとなくくつろいだ雰囲気だ。
 ソファにはマンガが二冊、無造作に置かれている。
 スタンドの横へテーブルを置き、CD-Jとミキサーをセッティングしていた。

 今夜のステージのキャッチフレーズは「ケル・モード・ミステイク・カラオケクラブ2・ラズヴェガス・テクノ・ピガール」。
 菊地一流のセンスによる、意味不明なタイトルだ。
 そしてタイトルどおり、今夜の音源はカラオケ。演奏は全てCD-Jから引き出していた。

 開演時間の7時をちょっと押して、菊地と岩澤が右手の階段から降りてきた。
 このホールは、ステージの出入りする通路の一部が金網仕立てになっている。
 なので、そんな風にスタンバイする所が見えて、妙に楽しい。

 岩澤はノースリーブの薄手なワンピースに裸足姿。
 一方菊地は、うすっぺらいコートを羽織って登場した。
 そしてCD-Jのボタンを菊地が押し、ライブが始まった。
 
<セットリスト>
1.ワールド・ハロー・ソング
2.少女地獄
  (MC)
3.ねえ?ミス・インターナショナル
4.ジャンニ・ヴェルサーチ暗殺
  (MC)
5.アンニュイ・エレクトリーク
6.冬のノフラージュ(ミカドのカバー)
7.インターナショナル・クライン・ブルー
  (MC)
8.麻酔
9.新・インターナショナル・ラブ・コンフェランス
10.普通の恋
11.新生スパンク・ハッピーのテーマ

(アンコール)
12.ジャンニ・ヴェルサーチ暗殺

 今夜の前半は、2/2に「まぼろしの世界フェス」で披露した曲をつるべ打ち。
 一曲目はパイプオルガン風の音色がイントロだった。
 聞き覚えのあるアレンジだったけど、微妙にバックトラックに手を加えているかも。
 菊池は曲にあわせて身体を揺らし、指で岩澤にキューを送り歌が始まった。
 
 二人はスタンド・マイクに両手を添えて、直立不動で歌う。
 今回は多少振り付けあり。
 岩澤も菊池も、微妙に間違えたり振り付けがずれてたのはご愛嬌かな。
 ステージ冒頭では、菊池が手にハンディビデオを持ち、岩澤やステージを撮影していた。

 ステージでの二人は、さまざまな面で対照的。
 アイドル風の振り付けを楽しげに踊る菊地に、かなりぎこちないところが目立つ岩澤。
 菊地は落ち着きなく身体をリズムに乗せて踊り、岩澤はほとんど身動きせずに歌に専念してるところとか。
 ステージ馴れやキャリアの差もあるだろうけど。

 二曲目はかなり派手なアレンジで楽しめた。
 余談だけどこの曲、「90年代のダンスミュージックが出来るところを見せつけるために作った曲・・・だけどマドンナのパクリ」(菊地談)だとか。
 この二曲だけで、すでに30分くらい経過。

 ころころ変わるテクノなバックトラックは、低音がびんびん身体に響いてくる。
 完全なクラブ仕様のダンスミュージックなのに、観客がおとなしく聴いてるのが妙に面白かった。
 あ、ちなみにぼくは踊る自信がないので、一番後ろの壁に張り付いて聴いてました(苦笑)

 スパンクスの魅力はわかりやすいバックトラックへ、ひとつながりに長いメロディが、まとわりつくようにからんでいくところだと思う。
 岩澤の歌声はロリっぽいが、かなり音程がしっかりしていて安心して聴けた。
 ファルセットを響かせたりするところが、きれいだったな。
 菊地はほとんど喉で歌うだけ。
 ハモるときなんか、演奏に歌が埋もれてしまって残念だった。

 さて、上のセットリストで(MC)と書いたのにはわけがある。
 それはスパンクスのステージで、MCが重要な要素をしめているから。
 すくなくとも、今のうちは。
 菊地はせわしない早口で、大笑いしながら暴走気味なMCを楽しんでいた。
 ある種、演奏よりよっぽど面白かったかもしれない。

 確かに岩澤の天然なMCがおもしろい。
 「ピチカートが解散したってさ」って菊地に対して、
 「それは悲しい朗報ですね」とか、
 「(ピチカートの解散の原因は)スパンクスがパクったせいでしょうか」なんて、わけのわかんないことを話してた。

 ちなみにCD-Jを使って、「岩澤、これ知ってる?」ってコーナーも(笑)
 アーチー・シェップやビートルズ(「ラブリー・リタ」の歌声が始まった瞬間でCDを止めたのに、「ビートルズ!」って当てていた)。
 あとは、浜崎あゆみ(岩澤が大ファンだとか)やフランスのポップス、「イパネマの娘」、スパンクスの曲などを流してたっけ。
 
 一番盛り上がったのは、01/4/末に発売の「クイック・ジャパン」誌でスパンクスの大特集(40ページ。グラビアつきとか)をやるって告知したとき。
 あまりの意外な発表に、観客は大爆笑。
 DCPRGならまだしも、スパンクスの特集とは・・・。
 「ライブも数少ないし、音源をなにもリリースしてないのに」と、菊池自身大笑いしていた。

 ちなみにこの日の翌日、イラストの寄稿を頼みに吾妻ひでお邸に行く予定らしい。
 菊地はマイルスと並んで吾妻ひでおの大ファンとかで、さんざん盛り上がってた。
 ちなみにステージのソファに置いていたのは、吾妻ひでおのマンガだったようだ。
 大汗をかきながら熱っぽくMCをする菊地をほったらかし、岩澤はマンガに見入っていたっけ。

 そんな感じで、トークショーだかライブだかわからないステージ。
 数曲やっては喋り倒し、思い出した頃に曲に戻るという、異様な構成だった。

 今回しみじみ感じたけど、スパンクスの音楽コンセプトそのものは、いまいちぼくの好みでないみたい。
 特に(7)〜(9)くらいまでは、かなり聴いているのが辛かった。
 めちゃくちゃありきたりのポップスなんだもん。
 もっとメロディに引っかかりが欲しかった。
 菊地はどこまで、この音楽をマジにやってるのかなあ。しみじみ疑問だ〜。

 エンディングは、「スパンクスのテーマ」。
 好みでない曲が続いてしんどくなってた頃だけに、やさしい雰囲気にしっとり包まれてほっとした。
 歌い終わって二人はステージから消える。今度は左側の階段を上っていった。

 そうそう、今夜のライブはいろいろ手違いが多かった。 
 ゲストとして告知のあった、ペンギンXXX(ダンサー&アシスタント&バーテンダー)は登場せず。
 ペンギンの着ぐるみが、間に合わなかったらしい。
 予定では曲の盛り上がりにあわせ踊ったり、歌詞を間違えたら叩いたりする役だったそうな。

 さらに発売予定だったカセットも諸般の事情とかで未発売。
 「岩澤へのCDコーナー」でちらっとさわりを聞かせてくれた。
 きれいなミックスの「ヴェルサーチ〜」。ぜひ発売してほしいなぁ。

 なにより一番の手違いは、アンコール曲を用意してなかったこと。
 観客の拍手にせかされて、どどどっとステージに二人が飛び出してきたあと、いきなり菊地が詫びていた。

 なので「これまで演奏した曲の中で、もいちど聴きたい曲を再演します」という演出。
 拍手の量で決めるということで、比較的拍手が多かった「ジャンニ・ヴェルサーチ暗殺」を再度プレイ。
 頭だしをするために、CD-JでぐしゃぐしゃテクノのDJプレイを聴かせるというオマケが付いていた。

 カラオケで歌うため、本編の演奏と特に差異はなし。
 歌い終えてバックトラックが鳴り響く中、さっそうと二人はステージを去っていった。

 終わってみると、かなり荒っぽい構成のステージといえる。
 一番印象に残るのが、菊地のMCというありさま。
 とはいえ二人のコーラスが、ぴたっと決まった瞬間の気持ちよさは捨てがたい。
 くねくね漂うメロディがかっこいい曲もあるし。
 ニュー・ウエーブ・ポップスが好きな方なら、一朝の価値はあります。
 
 それにしても、「クイック・ジャパン」でどんな特集をされるんだろう。
 いまから発売が楽しみだ。

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