LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2001/2/16  江古田 バディ

出演:ラジヲ
 (川下直広:as,ts,e-vln、芳垣安洋:ds、
  不破大輔:b、清水くるみ:p)
 
 ラジヲのライブを聴くのは初めて。
 CDとはメンバーが変わり、勝井祐二と渋谷毅が抜け、清水くるみが参加している。

 観客数はバディのキャパから見ればさみしい限り。
 それでも、20人くらいは入っていたのかな。
 客席後方でだべっていたメンバーが19時50分くらいに、のそのそっとステージに上がり、ライブが始まった。

 不破はまず、ウッドベースを抱え込む。
 芳垣がシンバルに、鎖をぶらさげた。
 そして川下が無造作にテナーサックスを吹き始める。

 ひとしきり川下が無伴奏で、サックスからかすれた音をしぼりだした。
 そしてひとり、またひとり。
 メンバーが演奏に加わっていく。

 しょっぱなの曲は「ラジオのように」。
 えんえん30分以上演奏してたんじゃないかな。
 ぼくは開演前に飲んでいたビールの酔いも手伝って、夢見ごこちで聴いていた。

 川下は前かがみにサックスを咥え、興が乗るにつれ身体を激しく前後に降る。
 タンギングをほとんど使わず、線が細めのノイズ成分たっぷりな音をあふれさす。
 彼のサックスを聞いていると、水がほとばしるようだ。
 ひとときも休むことがない。

 不破は自己主張が控えめな演奏。
 リズミカルに音がうねるものの、ソロや目立ったプレイはとらない。
 あくまでがっしりとビートをキープしていた。
 
 芳垣のプレイは不破と好対照。
 一曲目曲では、ほとんどリズムキープをしない。
 ・・・いや、正確に言えば。
 左足のハイハットだけは、ずううっとジャストに刻みつづけていた。

 とはいえ、後の手足はフリーなテンポ。
 基本的には優しく、ときにアクセントで激しく。
 片時も休まず、自由自在にドラムを叩いていた。

 なのにハイハットは、どんなフィルのときでも、着実に刻んでいた。
 凄く繊細なドラム。
 手首のスナップを効かせて、スティックがハイハットを渡り歩くさまがかっこよかったな。

 いっぽうで、清水の演奏を聴くのは初めて。
 硬質なピアノって感じがしたな。
 和音を叩きつける奏法を多用してた印象がある。

 延々と盛り上がりつづけた一曲目が終わり、すぐさま二曲目に。
 曲名はわからないけど、フェダインで聴いた記憶あり。
 でも、かなりフェダインとは印象が違ってたな。
 
 この曲では、清水のピアノがメロディアスなソロを取る。
 奔放に音を絞り出す川下のソロの後だったので、キュートで面白かった。
 セッションとしては、この曲がぼくのベストテイク。
 ミュージシャンが息がぴったりあって、ノリを盛り上げていく。

 清水や川下の音にすばやくリズム隊が反応して、微妙にテンションがクールダウンしたり、どどっとなだれ込んで行ったり。
 グルーヴ感がすばらしかった。 

 二曲目は15分くらい。川下のメンバー紹介の後、「15分休憩します」って聴いた気がする。たぶん。
 そのあと30分以上休憩してたのは、何かの勘違いだろう。たぶん(笑)
 
 第二部はスタンダードから開始。
 この曲、メロディは聞き覚えあるけどタイトルが出てこない・・・すみません。
 不破は引き続き第二部もウッドベースだ。
 譜面とにらめっこしながら弾いていたっけ。
 
 ステージ後半戦では、芳垣のソロも挿入された。
 芳垣はパワフルなソロ。テンポがころころ変化していた。
 芳垣が軽く合図し、不破と清水の音が同時にすらっと合わせ、ソロからコンボになだれ込む瞬間が最高だった。

 ラジヲはソロイストが川下と清水の二人いる。
 ほぼ毎曲、川下の合図で清水にソロを受け渡していた。
 そのぶん曲の雰囲気がころころかわっちゃってたな。

 第二部最終曲は、フェダインの「TOKI」。
 それまでテナーを吹いていた川下が、テナーを吹きながらソプラノサックスを持ち上げた瞬間、期待に身を乗り出してしまった。

 二本吹きで、テーマを高らかに鳴らす。
 このときに、しみじみフェダインとの違いを感た。 
 まず、テンションのピークが低い。
 ハイスピードで演奏していても、どこかリラックスしている。

 不破はこの曲でエレキベースに持ちかえる。
 にこにこしてくつろぎながら、高速ベースリフを繰り出していた。
 不破のソロもかなり控えめ。
 うおおおっと早弾きで畳み込む展開を披露したものの、比較的短い小節数でアンサンブルに戻ってしまった。
 清水にソロが変わっている間に、川下はエレクトリック・バイオリンを持ち出す。
 
 エフェクトを効かせて、エレキギターみたいな音で演奏に混ざる。
 リズム隊がしっかりリズムをキープし、川下と清水が混沌とした音を撒き散らす。
 そんなひとときも刺激的だった。

 演奏が終了し、次を期待しているとあっさりメンバー紹介。
 そのまま終わっちゃった。
 後半戦は一時間ちょい。アンコールもなし。
 正直物足りない・・・もっといっぱい聴きたいな。

 全体的にはフリー風味があるものの、かなりオーソドックスなジャズ。
 なごみに行くには、いいバンドだと思います。

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