LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2001/02/12  吉祥寺 曼荼羅

出演:渋さ知らズ

  ダンドリスト:不破大輔
  植村昌弘:ds、大沼志朗:ds、ヒゴヒロシ:b、勝井祐二:e-vln,
  イマイ:g、加藤崇之:g、さるへん大塚寛之:g,
  片山広明:ts、リマ哲:ts、泉邦宏:as、北陽一郎:tp,
  古池さん:tb、中根信博:tb、田村夏樹:tb、高岡大祐:tuba,
  関根真理:per、松:per、佐々木彩子:key、室舘彩:vo,fl、小山なおこ:vo,
  花島直樹:b-cl、坂本弘道:cello/electric,
  乳房知らズ(dance):さやか、ペロ

 渋さを聴きに行くのは半年振り。
 しかしまあ、なんという人気だろう。
 開場30分前に曼荼羅へ行ったのに、すでに行列が・・・。
 寒空の下、開場を待つのはしんどかった。

 今日は比較的大規模編成な渋さ知らズ。
 あいかわらずステージをはみ出してせり出している。
 観客用のスペースは、通常時の2/3くらい。
 なのに観客はぞくぞく入場。80人くらい入ったのかな。
 またもやすし詰めのラッシュ状態。
 完全にステージギリギリまで観客が押し寄せている。
 
 もう渋さを「踊るためのバンド」と考える観客が多いみたいで、聴いてて落ち着かないことおびただしい。
 モッシュほどの混乱はないものの、立ちっぱなしでわさわさと数時間はちょっとなあ。
 渋さはもはや音楽を聴きに行くライブじゃなくなったのかな、とつらつら考えていた。
 
 吉祥寺でやるときの渋さは、比較的ポップなステージ。
 スカっぽいリズムで畳み込む。
 短い曲をつるべ打ちに演奏するのかと思いきや。
 一曲あたり約30分と、たっぷりした時間配分の演奏。
 そのおかげで、個々のメンバーのソロを堪能できた。

<セットリスト>
1.ライオン
2.サリー
3.反町鬼朗
4.本田工務店のテーマ
5.大沼ブルーズ
6.犬姫

(アンコール)
7.P-chan

 ライブは8時くらいにスタート。
 どやどやとステージにメンバーが集まり、不破の「ライオンやろう」って掛け声で演奏が唐突に始まった。
 まっさきに片山のぶっといソロ。
 これだけ大人数の渋さなのに、彼のテナーがないと何も始まらない。

 今回はチェロと電気ノイズで坂本弘道が参加。
 メインは電気ノイズ。しょっぱなからアクセント気味にかませるノイズが効果的だった。
 中盤には歯でチェロの弦に噛み付いたり、チェロのスタンドで天井を引っ叩いた音をエフェクターにつないでノイズを出したり。
 視覚的にも楽しめた。
 そして、坂本は終盤にも・・・。

 今夜のライブは、ソロはかなり長まわし。
 ただ、僕自身が集中して聴けませんでした。
 テンポのいい曲を立て続けに演奏するもんだから、わっさわっさと観客がダンスする。
 人波にもまれて、頭がぼおおっとしてきた。
 セットリストは、多分合ってると思いますが・・・自信ないです。
 おまけに個々の曲で何があったのか、いまひとつ記憶がはっきりしません(笑)
 
 こんな乱痴気騒ぎのライブだったとはいえ。
 そこはテクニシャンぞろいの渋さ知らズ。
 もちろん聴き所は山のようにあった。

 曲のポイントでぬうっと立ち上がり、曲に芯を突き刺す片山のテナー。
 激しく弓を上下させ混沌としたフレーズを、勝井はバイオリンでぶちまける。
 さるへんはドレッドヘアを振り乱しながら、ジミヘンを思い起こす熱っぽいギターをかきむしる。
 エフェクターを効かせて、火がつくようなフレーズをほとばしらせているのが、しみじみかっこよかった。

 一方で加藤は幅の広いフレーズ展開で、緩急を効かせたソロを取る。
 どの曲かは忘れたけど、無伴奏でジャズっぽいいかしたギターソロを見事にきめて、大喝采を浴びていた。

 ソロこそ取らなかったが、植村のドラムも忘れるわけには行かない。
 ひとときも休まずにタイトなリズムを決める。
 テーマが切り替わるとき、ズダダダダッと最高のタイミングでフィルを決めた瞬間が、たびたびあった。

 乳房知らズはいまいち目立てない。
 観客がおおぜいいるせいで、ダンスするスペースが取れなかったせいかな。
 メンバーの間に立ち、妖しいポーズで踊る。
 今夜はライティングもけっこう気を配っていたようだ。
 こまかくステージの色を変えるだけでなく、ミラーボールまで使用していた。
 
 そして主役のダンドリスト、不破。
 バンドへのサインが、ますます細かくなっていた。
 テーマを指示するだけでなく、ホーン隊へのリフやドラムのリズムチェンジなども、こまかくハンドサインで指揮。
 ただ、事前にしっかり決めていないのか・・・。
 メンバーと息が合ったり合わなかったりしてたのは、ご愛嬌。

 さらに不破は、大勢の客をどんどんヒートアップさせるかのように、しょっちゅうオケをトーンダウンさせて、コーラスを観客に取らせる。
 PAのボリュームがでかいせいか、曼荼羅いっぱいに観客の歌声が響くって感じじゃなかったけども。

 つくづくこのバンドは、ライブを見なければ意味がない。
 単調になるほどソロ回しが長いうえに、メンバー間のアイコンタクトやちょっとしたおふざけがあるので、テープでは楽しさが伝わりにくいだろう。
 PAのマイキングも甘いから、生音でしか楽しめない部分も多いし。

 なのにこの大混雑だから、演奏を聴く環境はかなり劣悪。
 ライブハウスの中はビールの香りとタバコの煙が充満して、すさまじい空気だしね。
 かといって渋さは、大ホールで椅子に座って聴く音楽じゃない。
 僕も当分、渋さのライブはいいや・・・気力体力ともに充実してないと、彼らのライブは辛いかな。

 開演から休憩無しでぶっつづけ。
 最後に「犬姫」をきれいに決めて、ライブを終わろうとした・・・が、観客からの声援がやまない。

 どうなることかと思いきや、「P-chan」をプレイし始めてくれた。
 最初はテーマを演奏してお茶を濁すつもりだったのかもしれないが、そのまま怒涛の演奏に突入。

 ここで暴走したのが坂本弘道。
 手元のエフェクターで電気ノイズを振りまくにあきたらず、すっくと立ち上がる。
 いきなりグラインダーを取り出し、チェロの足に当てて火花を飛ばし始めた。
 ふらふらよろけながらグラインダーを振り回すから、危なっかしくてしかたない。

 しまいにはスピーカーによじ登り、天井あたりからばらばら火花が落としてきた。
 真下にいた佐々木彩子や小山なおこは、悲鳴をあげてその場にしゃがみこむ。
 パフォーマンスが終わった坂本を、二人してひっぱたく。
 佐々木が素で怒ってた・・・たしかにあれは怖い(苦笑)

 そんな一幕もありながら、演奏はドガチャガと続く。
 定番のソウルレビュー風のフレーズをかっこよく決めて、今夜のライブが終了した。
 しめて二時間半。ちょっと短いかな、と思いつつ曼荼羅をあとにした。

 ところがこのあと、観客が少なくなった頃を見計らって、第二部が始まったみたい。惜しいことした・・・!
 人数がそこそこの環境で渋さを聞いたら、とびっきり楽しめるのが間違いないのに。くううっ。

目次に戻る

表紙に戻る