LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

01/1/27   渋谷 Tower Records

出演:ティン・パン
  (鈴木茂(g)、林立夫(ds)、細野晴臣(b)

 今夜はティン・パンによるインストア・ライブ。
 いろいろと物足りない点があるイベントだったけど、基本的にはおもしろかったな。
 
 混むとは思ってたけど、とんでもない人気ぶりだった。やっぱり。
 まずチケット引換え券は、ティン・パンのCDを購入したときに入手できる。
 その引き換え券をチケットと交換できるのは、本日の朝10時に渋谷タワレコ一階にて。

 タイミング悪く、この日は朝からとんでもない大雪。
 えっちらおっちら僕がタワーに、到着したのは9時半頃かな。
 「へへん。どうせそんなに並んでないだろ。この分なら、前のほうで見られるかなあ」
 と、たかをくくってたら大まちがい。
 タワーの地下へ続く階段にぐるりと沿って、おおぜい人が並んでいた。
 僕が手にできたのは、整理番号191番。ひええ。

 チケットといっしょに、本日の内容を書いたチラシを渡される。
 「インストア・ライブ」のはずが、「インストア・トーク&ライブ」に変わってるじゃん。
 うむむ〜。ちょっと不安(で、不安は見事に適中) 
 
 開場まで時間があったので、一度帰宅。
 雪はますますひどくなってきたので、電車のダイヤはめちゃくちゃ。
 そのまま時間まで、渋谷で遊んでればよかったかなぁ。
 
 なにはともあれ、夕方にあらためてタワーに到着。
 それにしても、タワレコ・サイドの仕切り具合は立派だ。
 この混雑なのに、ほぼ予定時間きっちりに運営してる。
 イベントそのものも、間延びすることなくきびきびステージ進行していたのはさすがといえる。

 しかし、すさまじい混雑だった。
 たぶん300人くらい入ってたんじゃなかろうか。
 会場前に椅子が50客ほど置かれていたが、あとは全てスタンディング。
 僕ももちろん、スタンディング。
 会場一杯にぎっしり人。身動き取れないラッシュ状態。
 たちっぱなしで、すさまじく腰が痛くなった(苦笑)

 幸いにして身長のおかげで、かろうじてステージは見通せた。
 とはいえ小柄な方だと、何にも見えなかったろうな。
 熱気で蒸してくるほど、人が林立している。
 僕も前の人の頭が邪魔で、鈴木茂の顔はほとんど見えなかったし(笑)
 細野はステージに現れたとき、観客の多さにめずらしそうな表情をしてたっけ。

 なんか前置きが長くなってしまいましたが。
 本日のイベントは、こんな感じの内容。

<進行表>
1)ライブ・ビデオ上映(大阪編)
2)トーク
  ・質問コーナー
  ・ティン・パン公開ミーティング
   「今後のティン・パンの活動を語る」
3)ライブ演奏
  1.Flowers
  2.Queer Notions
 
 全編ライブでないのが残念。
 営業っぽいイベントだけど、生演奏を見られただけでよしとするかな。
 
 まずはプロダクションの人が二人現れ、司会役を宣言。
 会場のスクリーンにスライドで、ビデオ映像が映された。

 ビデオは、去年の大阪公演を収録したもの。
 東京公演では演奏されなかった、「ホワイト・クリスマス」を流す。
 細野と吉田美奈子(たぶん)が1コーラスごとに、順番で歌うアレンジだった。

 演奏はぶりぶり柔軟なビートでかっこいい。
 なのに・・・画像がロングばっかり。
 商品化を前提としたプロショットでなく、記録用っぽい。
 イマイチ盛り上がらない映像だったなあ。

 そのまま映像は消され、三人が登場する。
 バックではそのままライブ音源が流される。たぶん。
 「ロッカペラ」が演奏されてたから、ライブ音源だと思うけど・・・。
 「ハンド・クラッピング・ルンバ2000」が聴こえたから自信ない。
 それとも、去年のティン・パンのライブに清志郎ってゲストで出たのかな?
 
 インタビューと三人の鼎談(ミーティング)は、突っ込みが足りないので予定調和で終わってしまった。
 まあ、こんなもんでしょう。
 無口っぽい印象の三人だから、司会を別に立てたのは正解。
 だけど、もうちょい突っ込んだ質問してほしかった。
 せっかく細野がヒントを出してるのに・・・。

 てなわけで、トーク部分で印象に残った話題をランダムにあげて見ます。
 
・三人が会うのは、今年はこのイベントが初めて。
・林立夫は正月にコケて、左手首を捻挫してしまった。まだテーピングしてる。
 (今日のライブ・イベントがトーク混じりになったのは、たぶんこのせいじゃないかな)

・鈴木は今年の予定で、ソロアルバムあり。時期は未定。
・林は今年も「Groove Dynasty」をプロデュース。11/11に日程は決定。
・細野は6月までにソロアルバム。4月に小坂忠のアルバムにティン・パンで参加。
 (どちらも「録音終了」の意味だと思う)
 さらにそのあとも、レコーディングの話が3つあり。

・ティンパンの次展開は未定。細野いわく、
 「人生を繰り返してるような気がする。次は三人で何かやろうか?」
 (この話題を突っ込んで欲しかった・・・ティンパン・マジック・オーケストラとかやったら面白いのにな)

・「歌手のバックでティンパン、ってやってみたい。
  あっというまに録音できるよ。3週間くらいかな」(細野)
 →細野がかなり、ティン・パンでの活動にこだわっていた。
  もっともティン・パン結成の音頭は、鈴木が取ったみたいだけど。

・4人目のメンバーは入れないのか。
 細野がテレビ番組にユーミンをゲストで呼ぼうとした時、ユーミン本人のOKは出たのに、だんながNGを出した(まあ、冗談でしょうけど)。
 →細野は「4人目のメンバー」にも気を遣っていたのに、鈴木が「この3人のマジックが」と言い、3人での演奏に思い入れがある感じだった。

・ティンパンは今後、だれと共演したいか。
 「小林武史、スガシカオ」(鈴木)
 「特に思いつかない」(林)
 「マンタ」(笑)(細野)
 →観客が大ウケしたので、細野が「あ、マンタで通じるんだ」って言ってました。
  そりゃマンタで通じるって・・・ここにくるような人なら。
 
 (ご存知ない方のために、蛇足の解説。
  マンタ=松任谷正隆。元ティン・パン・アリーのメンバー。ユーミンの旦那。
  なぜかティン・パンには参加なし)

 さてここで、開始から約30分経過。
 いよいよライブの時間・・・だけど肝心の演奏は二曲のみ。
 ステージの準備はあっという間に整った。
 鈴木がピックを忘れたとかで、楽屋に取りに行ってたっけ。

 三人とも、かざりっけのない楽器編成。
 こんな目の前で、細野がエレキベースをもってる所が見られるとは・・・。
 ちなみに「ベースを持つのは、今年は今日が初めて」ってボソッと言ってた。

 まずは「構成が複雑で、覚えるのに一ヶ月かかった」という「Flowers」。
 ボリュームは小さめ。
 演奏が始まるとすぐ、すうっと林と細野のリズム隊が重なり、ギターが太い音でのっかる。

 細野はステージ中央部に身体を向ける。
 うつむき加減にフレットへ時折視線を投げながらも、無表情に弦を指ではじく。
 林も太目のスティックを持って淡々とリズムを刻むのみ。
 鈴木の演奏はよく見えなかった・・・(苦笑)
「Flowers〜♪」って合いの手は、細野と鈴木が交互に掛け合いで歌う。
 
 基本的には、レコードのコピーみたいな音。
 早弾きみたいに目立つプレイや、汗まみれで盛り上がるような、熱っぽい複雑なフレーズをやってるわけじゃない。
 あくまで冷静に、黙々と演奏する。
 だけど、めちゃくちゃグルーヴがある。さすがの貫禄だ。
 僕は狂喜しながら聴いていた。

 「Flowers」の演奏はあっという間に終わり、次は「Queer Notions」。
 レコードでは多重録音による、ギター・オーケストラ。
 その音を今夜は「機械を駆使して再現」(鈴木)とか。
 何のセッティングかは、いまいちわからない。
 途中でえっらくシンプルな、ギター一本の音になってたと思うけどなあ。

 スキャットは、細野がボソッと歌う。レコードでは矢野顕子が歌ってたやつ。
 細野の喉はテンポもピッチも甘いけど、あのさりげなさがいいなぁ。
 プレイのほうは、なんにも文句なし。
 一流プレイヤー同士が生み出す、ノリの底力を堪能しました。

 2曲で終わったのがもったいない・・・。
 アンコールの拍手が出たけど、あっさりと客電がついてイベントは終了。
 正味で45分かな。物足りないや。
 でも、えんえんと「ビデオ映像の垂れ流し」よりはずっとまし。

 3人のキャリアからいって、そうそうライブなんかやらないだろう。
 でもまた、聴いてみたいなあ。
 こういうミュージシャンにこそ、ディナーショーみたいなのやってほしいな。

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