LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

01/1/9  西荻窪 アケタの店

出演:SAL
   
(藤川義明:as、千野秀一:p、今井和雄:g)

 
アケタに到着したのは、開場時間の7時半ちょうどくらい。
 店の前にたどり着くと、中からピアノの音が聞こえる。
「あれ?もう演奏始まってるのかな」と慌ててドアを開けると、またもやお客が誰一人いやしない(苦笑)

 ピアノは演奏前に千野が遊び弾きをしていたからだった。
 咥えタバコで、しばしその演奏(?)は続く。
 とびきり早いフレーズを弾き散らしたと思えば、クラシックのエチュードのようなメロディを淡々と奏でる。
 ときにピアニッシモで、奇妙なフレーズを断続弾きしてみたり。
 なんだかんだで、15分くらい弾いてたかな。得しちゃった。
 
 さて、本番の演奏は、ちょっと早めの8時前くらいにスタートした。
 お客さんは最終的に5人ほど。前回の二人に比べれば・・・(笑)
  
 最初のセットは、3人がてんでに静かに音を繰り出して始まる。
 藤川は、フリーキーな音で、ソプラノサックスに悲鳴をあげさせた。
 ブレスノイズとあいまって、鳥肌が立ちそうなキツイ音。

 今井は最初、ピック無し。ペダルを踏みながらふわりと音を響かせていた。
 しばしたつとピックを持ち、弦を引っ掻き始める。
 次第にギターの演奏が盛り上がり、音符の流れが速くなっていく。

 千野が激しく身体や腕を動かし、ピアノの前で上下左右に不規則に泳ぎながら、鍵盤を矢継ぎ早に叩く。
 そのノリに呼応するように、今井も弦をピックで激しくかきむしった。

 千野と今井が互いをあおりたてあいながら、インプロがぐいぐい熱気を増す。
 すさまじい勢いで音がはじけとび、ぶつかり合う。
 フリーな演奏だけど、まるでギターとピアノが独自の言葉で会話してるみたいだった。

 藤川は最初こそソプラノを吹いていたものの、途中からは目を閉じて千野と今井の激しい演奏に没入する。
 身体を揺らしながら、足をせわしなく上げたり降ろしたり、時折リズムを取っていた。 

 二人の音の合間を縫うように、ソプラノサックス二本吹きで、藤井が演奏に入り込んで行ったのも、この頃だったかな。
 そしていつのまにか猛烈な勢いのソロの応酬は、ふっと空気が抜けたようにテンションが下がっていた。

 藤井のサックスが演奏に加わると、音像が一気に混沌さを増す。
 ソプラノを吹くだけでなく、ヴォイスでも演奏に参加。
 ドイツ風の単語を吐き捨てるように連打する。喋りながらサックスの音を出すって荒業を披露していた。

 今回は藤井の立ち位置は、マイクから引き気味。
(以前同録したテープで、藤井の音が大きすぎたとか。バランスを考慮してたのかな)
 そのせいか三人の音が混ざりあっていく瞬間が、かなり多かったなあ。

 第一セットでは5分単位くらいで、白熱したインタープレイと静かな演奏が入れ替わるフリージャズだった。
 結局、このセットは40分くらいの演奏。

 かなり長い休憩時間をはさんで、第二セットがスタート。
 このセットが、とびきり刺激的な演奏だった。

 本セットで、藤井はアルトサックスを持つ。
 唐突にアルトから太い音を搾り出し、即興が始まった。
 最初は、フリーな三人のソロが絡み合う。
 タイム感が三人ばらばらなので、リズム隊もいないのにポリリズミックな感触。
 藤井が断片的なフレーズを吹くのがもどかしかった。もっともっと、ロングトーンで切り込んで欲しい。
 
 音の世界感ががらりと変わる。
 急に雰囲気が優しくなり、メロディアスに。
 クラシック風の優雅な雰囲気が漂う瞬間すらあった。
 このあたりの空気は、演奏前に千野が弾いてたピアノソロと、符号が合うかのようで面白かったな。

 演奏はいつのまにか、カオスになった。
 今井は両手でネックを擦り上げ、引っ掻き音を出す。
 弦を叩いたかと思うと、ピックでかきむしる。
 矢継ぎ早に多彩なフレーズを弾いていた。

 テンションが着実に上がっていく。
 だれも演奏の主導権をとっていないみたい。
 三者三様に音をつむぎだしている。
 なのに、不思議と一体感のあるノリが生み出されていた。

 千野はときおりグランドピアノの弦をはじきながら、ピアノを弾いていた。
 一方で藤井が、トリッキーなプレイで参入する。
 アルトにソプラノ2本を咥えた三本吹きをしたり、おもちゃの笛をつぎつぎ吹いたり。

 そして何度もサックスから口を離し、柏手のようにパチン、パチンと掌を打ち合わせる。
 パーカッションのようにリズムを取っているわけじゃない。
 何かに集中する合図みたいだったな。
 
 第二セットの後半で、藤井はアルトに息を激しく吹き込み、ブレスノイズを響かせる。
 しまいにはネックを外してうなり声を搾り出していた。
 
 エンディングがすばらしかった。
 千野がぱらん、ぽろんとピアノの弦を弾く。
 ギターもテンションを下げ、ギターをこつん、こつんと指ではじく。
 ピアノの音は止まる。
 藤井も演奏を止め、今井がギターをはじく音に合わせて、静かに掌を開いたり閉じたり。
 そのまま静かに、演奏終了・・・。

 50分くらいのセットだった。
 激しいテンションと静かな幕切れと。
 後味がすばらしい、素敵なライブだった。

 さあ、次はイースタシアだ。楽しみだな。

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