LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

01/1/4  西荻窪 アケタの店

出演:「ね」+閔栄治
  (古澤良治郎(per,org,ds)、藤ノ木みか(per,vo)、佐藤帆(sax)、
   福島紀明(ds.per)、早川徹(b),閔栄治(ミン・ヨンチ)(per、笛)

 すばらしく柔軟なビートの演奏を堪能できた。
 
 今年最初に聴くライブは、僕は初めて聴くバンド。
 とはいえ、キャリアはかなり長いはず。
 リーダーの古澤が正月そうそう自転車で転んだとかで、今夜は左手首にテーピングを巻いての登場だった。

 今年初めての開店とあってか、アケタはぎっしり満員。常連さんらしき人や、演奏者の関係者が大勢来ていた。立ち見がでていたほど。
 明田川も店に顔を見せ、ゆったり飲み物を配ったりして働いていた。
 (演奏前にステージで、年始の挨拶でもするのかな?と思いきや、それはなし)

 ステージには、所狭しとパーカッション類が置いてある。
 左手にテナーサックス、その奥にドラム、そのすぐ横にはベースという、アケタ定番のセッティング。
 ドラムは真中に小さいシンバルを置く、渋オケでもおなじみの古澤セッティング。

 その古澤のポジションは、ステージ中央。
 オルガンやコンガ、バスドラをぐるりと並べていた。
 ゲストの閔栄治はステージ右手にすわる。かわいそうなのが藤ノ木。
 グランドピアノの影に毛布を敷き、ぎっしり並べたパーカッションに囲まれ、かなり窮屈なスペースだった。

 ライブがスタートしたのは8時15分ころかな。
 ぞろぞろメンバーがステージに上がり、古澤が楽器の準備具合を見ながら、右手の指先でコンガをぽんぽん遊び叩きする。
 そのリズムに藤ノ木がンビーラを併せて、自然に演奏が始まった。

 最初は演奏を聴いていて、正直とまどってしまった。
 曲の構成はそこそこ決まってるらしいが、リズムがどうにもどしゃめしゃ。
 古澤はほとんど演奏をせず、ひらひらと踊ってるか、太鼓を気まぐれにドンスカ叩くか。
 えらく気の抜けた演奏だった。

 古澤のMCが始まると、また腰砕け。
 ステージ前の床に置いた木琴にセッティングされたマイクへ、覆い被さるように口を近づけて喋るから、威厳がないことおびただしい。
 なんかよっぱらいの爺さんがロレりながら、喋ってるみたいだった(笑)
 (ちなみに古澤は55歳らしい。風貌から、失礼ながら60過ぎと思っていただけにびっくり)

 三曲目くらいにはリズム隊がそろって、いわゆるインディアン・リズム(どんつっつっつ、どんつっつっつ、って、頭にアクセントが入るやつ)で延々と演奏を始めて、そうとうに単調。聴いててめちゃくちゃ辛くなった。

 ただ、藤ノ木がつぎつぎにいろんなパーカッションを繰り出すのは、見ていて飽きない。
 ほとんど小節単位で、バード・コールやはと笛、カウベルやタンバリン、その他名前もよくわからないパーカッションを、とっかえひっかえ叩いていた。

 一方で古澤は怪我したせいもあるのか、ほとんど左手を使わない。
 オルガンを遊び弾きしたり、金たらいをがんがん叩いたり。
 曲に乗ってふわふわ踊りだすの姿が、なんともユーモラスだった。

 ライブ前半は、そんなわけでほとんど演奏にのめりこめない。
 なので、閔栄治を中心に聴いていた。
 チャンゴ(杖鼓)やチン(銅鑼)を曲ごとに使い分ける。
 ほぼフリーに演奏しているので、「ね」の単調なリズムと微妙にずれて、ポリリズミックでおもしろい。

 ケンガリ(小金)を演奏するときには、左手で微妙にミュートする奏法をくっきり楽しめた。
 先日見たサムルノリのライブではよく見えなかっただけに、今夜はじっくり観察できてうれしかったなぁ。
 一曲だけ、竹製の横笛を演奏する。
 細かく腕を振ってビブラートをかけてたのが印象的だった。

 そんなわけで今夜のライブは、いまいちはずれかと思いきや。
 中盤くらいから、ぐいぐい演奏に引き込まれていった。

 古澤が「早いやつ、やろう」といって始まった、アップテンポの曲。
 ビートを刻むリズム隊にのって、サックスがすぱっと切り込み、激しいソロを決めた瞬間が、すばらしくかっこよかった。

 このへんから僕なりに「ね」の音楽が、染み込んできた。
 基本はのんきなリズム。執拗に同じビートを繰り返し、アフリカ音楽みたいにじわっとノリを盛り上げる。
 そこにサックスやパーカッションで、オブリを入れていくパターンみたい。
 日本的な音楽要素がメインを占めて、懐かしさを覚える音楽だった。

 今夜はさらに閔栄治が入ることで、いっそう演奏が多層化した。
 フリーに激しく叩く韓国楽器のビートが重なり、複雑なリズムがアケタの中に充満する。
 いつのまにか曲に併せ、身体でリズムをとっていた。

 ユニークなのが藤ノ木と福島のボーカル。歌というより、掛け声みたい。
 でも僕の耳が「ね」の演奏に馴染んでくると、コケティッシュな藤ノ木の鼻歌は、のんびりした楽器の音にしっくりフィットしていた。
 演奏が盛り上がると、古澤自身が一番楽しそうに踊っていた。

 古澤がハンドサインで楽器の出し入れを指示していたが、どうもうまく伝わってない。
 意思疎通がうまく行かず、緊張感が一瞬走っていたのは僕の気のせいだろうか。
 でもアイ・コンタクトを飛ばしあい、曲のエンディングはすぱっと見事に決まってたなあ。

 最後のほうで、一曲だけ古澤がドラムセットに座る。
 左手を多少かばいながら、ハードにドラムを叩いてくれた。

 オーラスの曲では、ベースもパーカッションに持ちかえる。
 メロディ楽器は、藤ノ木が合間に入れるボーカルか、時折鳴らすサックスのみ。
 なのにすばらしくメロディアスな演奏だった。

 けっきょく今夜のステージは、休憩無しで約一時間半の一本勝負。
 熱気がいっぱいの、ほんわり暖かい音に包まれたライブだった。
 ライブハウスを出ても、身体がぽかぽか温かかったもん。

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