LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

00/12/30   西荻窪 アケタの店

出演:明田川荘之オーケストラ
   (明田川荘之(p,オカリーナ)山本ヤマ(tp)内野勝年(tb)
    宮野裕司(as)松本健一(ts)津村和彦(g)
    水谷浩章(b)本田珠也(ds))

 今年は色々ライブに行ったけど、明田川荘之の深夜ライブを聴いたことがきっかけで、ジャズの世界にずぶずぶはまっていったと思う。
 そんな今年だったので、2000年最後のライブは明田川オケを選んだ。
 
 19時半の開場時間にアケタへ到着すると、さすがに観客が多い。
 しかも、年季が入ったジャズファン風の男性が多数いる。
 やっぱり年納めの区切りだからかな。
 なのにたまたま席が空いていたので、最前列に僕は座れた。ラッキー♪

 ステージはすでにセッティング完了。
 録音している為、マイクがずらりと林立する。
 明田川のライブを聴くのはひさびさなので、わくわくしながら待っていた。
 演奏は20時過ぎくらいに始まったかな。

<セットリスト>
1)わっぺ
2)亀山ブルース
3)北魚沼の旅情
4)スモール・パピヨン

(休憩)

5)室蘭・アサイ・センチメンタル
6)URGENCY
7)いかるが桜
8)エアジン・ラプソディー
9)今こそ別れ

 9曲目以外は、全て明田川のオリジナル。 

 とにかく、今夜は最高の演奏だった!
 しょっぱなから熱のこもった演奏が始まる。
「わっぺ」で最初にソロを取ったのは、水谷浩章。
 
 エレキベースを抱えて、ゆっくりと音を鳴らす。
 次第にテンションがあがって来て、びんびん音を響かせながら、すばらしいソロを取った。
 ソロを終えると、いきなり拍手がわく。
 今回の客層はジャズをよく知ってる人が多いから、ソロが終わるたびに拍手を始めるのは、別に不思議じゃないけど。
 自然に拍手をはじめてしまう、そんな素敵なソロが多かったのも間違いない。
 この「わっぺ」では、津村和彦が微妙にリズムをずらしたリフを弾く。
 ちょっとポリリズミックな面白さがあった。

「亀山ブルース」はアップテンポで、細かいリフを決める、バップ風の曲。
 山本ヤマや内野勝年のいきいきとした音使いのソロも捨てがたいが、やはりポイントは本田珠也。
 目をつぶって、シンプルなドラム・ソロを始める。
 次第にスティックがシンバルとタムを忙しく叩き始め、しまいには大音量でワイルドなソロを決めた。

 本田のセットは、タムは一つのみ。あとはスネアとフロアタムのみ。
 だけど僕の好きな、逆挿入シンバル(名前はよく知らない・・・パラボラアンテナみたいに、表裏逆にセッティングするシンバル)を取り入れたセットだ。
 ポイントでその逆挿入シンバルを叩くたびに、「どしゃ〜ん!」と素晴らしくデカい音が鳴り響いて嬉しい。

 このあたりになると、ぐいぐいボリュームがでかくなってきてる。
 全員でリフを決めたりすると、もう音がかなり団子になって迫ってきた。
 一番ワリを食ってたのが、明田川。
 顔を真っ赤にしてピアノをがんがんひっぱたいていたが、さっぱり音が聞こえなくて残念。

 津村は続く「北魚沼の旅情」で強烈に自己主張した。
 テレキャスの音量を上げて、チョーキングを多用したロック風のソロをとる。
 この曲は明田川の新作で、父親のふるさとの情景を歌ったものとか。
 明田川の個性を全開にした、日本情緒ばりばりの曲だ。

 そんな雰囲気の曲なのに、津村はかまわず速いメロディをバリバリぶつける。
 音使いはそれほど派手じゃないけど、単なるジャズとは違った音選びが新鮮だった。

 一部最後は、名曲「スモール・パピヨン」。
 まずはしっとりと明田川のオカリ−ナで演奏が始まった。
 4管体勢で高らかに、テーマを吹き鳴らす瞬間が、すばらしくかっこいい。
 ここではメリハリを聴いたソロが目立った。
 
 まずは津山が勇ましいソロをとる。今度はそれほどチョーキングを使わない、オーソドックスな演奏。
 宮野裕司にソロが続いた途端、くっきり音が変わった。

 いままでのあわただしい雰囲気がすうっと抜けて、間を生かした演奏にがらりと変化してしまう。
 宮野自身のソロは、早吹きは控えめ。ひとつひとつ、慎重に音を選んでいた。

 そして松本健一がきっちりとソロ回しをまとめる。
 ぶっといブロウで派手に突き進む。
 片山広明を思わせる吹きっぷりだった。
 以前に彼の演奏を聴いたときは、楽しめなかったけど。
 今夜の演奏を聴いて、評価を改めた。

 明田川は、今回はバッキング的な役割が多い。
 ソロを取ってはいるものの、一歩引いてバンドメンバーを盛り立てていた。
 とはいえ、曲が盛り上がりにあわせて、テンションがぐいぐいあがる。
 顔を真っ赤にして、肘や腕で鍵盤をガンガンぶったたく。
 まるでドラマーが二人いるみたいな勢いだった。

 ここで休憩。とはいえ、20分くらいで演奏を再開してくれる。
 二部になってもテンションはまったく下がらない。
 演奏も一曲あたり15分くらい、延々とプレイしていた。

 「室蘭・アサイ・センチメンタル」では、津村のソロをはさむものの、ピアノ・トリオを前面に出して、はじめていっぱい明田川のピアノを楽しめた。
 「URGENCY」は明田川のオリジナルで、高速テーマの曲。
 山本と内野が真剣な顔で、ソロを決める。

 つづく「いかるが桜」ではしっとりと演奏して、パワーを蓄えた。
 津村がテーマをユニゾンで小さく弦をはじくのは、桜が散ってるみたいで切なくてよかったな。

 最後は「エアジン・ラプソディー」。
 これが強烈に素晴らしかった。ぜひともCD化して欲しい。

 まずは松本が荒々しく吹きまくっているバックで、津村はエレキギターで和音を奏でる。
 今まで単音で弾くパターンが多く、新鮮に聴こえた。
 しだいに津村がカッティングを混ぜ始め、キレのいい音がアケタの空間を切り裂く。

 続く自分のアドリブでは、まさに独壇場。
 最高のソロだった。
 ドラムとピアノが追っかけてきて、ブレイクを連打で決める。
 演奏は一気にフリージャズにスタイルを変えた。
 ガツン、ガツン、ドシャン、ガツンと、何度も何度も激しく、3人で音の塊をぶつける。
 明田川はピアノを壊しそうな勢いだった。

 続いてドラム・ソロに滑り込んだ頃には、明田川が息絶え絶え。
 ハンカチで汗を拭きながら、しばらく苦しそうに息を整えていた。
 この曲だけで、30分近くやってたんじゃなかろうか。

 最後はバロック時代の作曲家、ダウランドの曲を静かに合わせてステージは終わり。
 正味二時間強も、フルパワーで演奏していたことになる。

 今夜の演奏は、ぜひCD化してほしい。もしCD化されたら、お見のがしなく。
 すさまじい盛り上がりの演奏だった。

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