LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

00/12/13  西荻窪 アケタの店

出演:渋谷毅オーケストラ


 ライブハウスに入った途端、メンバーがずらっとステージに並んでてびっくり。
「おっ。今日はいきなり演奏はじめるのかな?」と期待してしまう。
 ところが。  
 たまたまリハが終わったばかりのタイミングに、僕が到着したらしい。
 そのままメンバーは、どやどやステージを降りちゃった。
 
 結局演奏が始まるまでは、そこからさらに一時間くらい待つ羽目に。
 夕飯を食べそこねたから、おなかすいて困った(笑)
 開演を待っている間に、お客がどんどん増えていく。さすが渋谷オーケストラ。
 
 演奏が始まったのは8時半になったころ。
 観客はたぶん30人くらい。アケタがぎっしり観客で埋まった。
 ステージにもミュージシャンがぎっしりで、店内はとっても人口密度が高くなってたっけ。

<セットリスト>
1.Great type
2.Ballad
3.(曲名不明)
4.What Masa is...She is out to lunch
5.CheroKee

 (休憩)

6.Brother
7.Utvikklingssang
8.Jazz me blues
9.Soon I will be done with troubles of this world
10.On-do
11.Lotus Blossom(ピアノ・ソロ)

 三曲目は、渋谷の曲紹介を聞き逃してしまいました。
 松風によるオリジナル曲だそうです。

 今日のメンバーはトロンボーンの松本治が欠席。ゲストで吉田隆一がバリトン・サックスで参加していた。
 吉田のバリトン・サックスはぴかぴかで、いかにも新品風。
 休憩時間に石渡が、「灰皿代わりにしてもいい?きれいすぎて恥ずかしいでしょ」って、からかってたっけ。

 さて、第一部の開始。まず一曲目は「Great type」から。
 渋谷がオルガンのキーボードを軽くひっぱたき、メンバーをちょっとあおる。
 それを受けて、メンバーが思い思いに音を出し始めた。
 ころあいを見て、ドラムとベースがリズムを刻みだす。

 ホーン隊は音慣らしの雰囲気で、てんでに音を吹き散らす。
 その横で松風が一人だけ音も出さず、もくもくと楽器をいじって準備していた。
 メンバーのフリーなイントロがしばらく続いたころ、松風がおもむろにフルートを口に当てる。
 そして、「Great type」の演奏が始まった。

 最初にソロを取ったのは林。鳥がさえずるような感じの、軽やかなフレーズでサックスを鳴らす。
 今回の渋谷オケは、ソロを取っている間もバックメンバーがきっちり伴奏していた。

 すぐ目の前でミュージシャンは演奏していたけど、ステージにマイクを林立させて、きっちりPAで増幅。もしかしてレコーディングしてたのかな。
 けっこうでかい音で、アケタのなかに彼らの音が響き渡ってた。

 上村のベースは元気がいい。
 身体をリズミカルに揺らし、百面相みたいに表情を変えながら、指がネックを踊る。
 そんなパワフルなベースから溢れる素早いフレーズを、ドラムがしっかり支えて、強靭なリズムが産み出される。
 彼らのリズムは、つねにびんびん跳ねていた。
 石渡はエフェクトを効かせたエレキギターで、そのビートをさらにふくよかにしていく。

 渋谷はいつでもマイペース。腕組みして演奏を眺めている。
 ふとした瞬間に、おもむろに鍵盤に手を伸ばす。
 ときたま奔放にオルガンをかき鳴らす瞬間が、とてつもなくかっこよかった。
 今回のオルガンはボリュームが大きめ。
 細かいところまで指使いが聞き取れてうれしかったな。

「Great Type」は15分くらい演奏していたと思う。
 ホーン隊のソロ回しを渋谷がオルガンで締め、全員そろってエンディングテーマになだれ込む。
 めちゃくちゃかっこいい。ワクワクしながら聴いていた。

 演奏は「Ballad」に移る。
 この曲はソロ回しよりも、全員のアンサンブルが見事だった印象がある。
 ロマンティックなメロディをオーケストラが一体になって、つむいでいくのがすばらしかった。

 三曲目。このあたりから次第にボリュームが大きくなっていったような。
 もこもこっと音がぶつかってきて、ベースの細かいフレーズや、個々のホーンの指さばきが聞き分けられない瞬間がある。
 だけど決してうるさくない。
 とても柔らく響き、演奏はがっちり一体感が感じられた。
 各ミュージシャンの音が混ざり合って、どかっとダンゴになってぶつかってくるのが気持ちいい。

 そういえば。バンドの演奏をリードしてるのは松風じゃないのかな。
 ソロの長さくらいは事前に決めているんだろうけど、ホーン隊によるバッキング・リフのタイミングや構成は、松風がキューを送ってたみたい。
 だからバンマスは、彼に思えてしまう瞬間が多々合った。

 でも音楽の芯を捕らえているのは、やっぱり渋谷なんだろう。
 無造作にオルガンからでかい音で和音を奏で、要所を締める。
 肝になるところでは曲の主導権を、演奏の存在感でがっしり握ってた。

 第一部最後の「Cherokee」は、まさにクライマックス。
 ベースが高速リズムを奏でる。
 スピーカーからの音量はますますでかくなり、ずうんっと鼓膜が震える瞬間すらある。
 しかも音量に負けず、メンバーのだれもかれもが熱いソロを繰り広げる、いかした演奏だった。

 ちょっと休憩をはさみ、第二部が始まる。
 こちらも冒頭から、すでにトップギアに入っていた。
 ゲスト参加の吉田も演奏にどっぷりとけ込んでいる。
 曲が頭に入っていないのか、テーマに戻るタイミングでは、何度かとまどっていたようだ。
 しかしソロを取る場面になると、違和感がまるでないアグレッシブなソロを聴かせた。

 カーラ・ブレイ作曲の「Utvikklingssang」では松風からソロが始まる。
 彼の本領の(と僕が勝手に思っている)ロマンティックでふくよかなメロディがサックスから流れ出す。
 続く吉田や石渡のソロも、そのしっとりした雰囲気を崩さない。
 これも素晴らしい演奏だった。

 コミカルな「Jazz me blues」では、ベースの上村が大暴れ。
 身体をゆさゆさ揺らしながら、高速ベースでとびきりのビートではじけて、メンバーを煽り立てる。
 どんどんリズムが押せ押せになって、かっこよかったな。

 ここからはもう、息つく暇もない。
 再びカーラ・ブレイの曲、「Soon I will be done with troubles of this world」では、ホーン隊から溢れるゆったりしたメロディが、耳から体の中にずぶずぶ染みていく。
 一音づつ下がっていくフレーズには、おごそかで暖かい雰囲気がいっぱいつまってた。

 最後の「On-do」もオリジナルらしい(作曲者を渋谷が紹介してたけど、聞き取れませんでした)。
 アップテンポの勇ましい曲。
 バックリフの譜割りは、くきくき上下に激しく振れる。
 ソロ回しをしながら、ホーン隊が絶妙のタイミングでバッキングしていく。
 めまぐるしいリフがいかしてた。

 こんな感じの大盛り上がりで演奏が終了。
 拍手に見送られながらメンバーがぞろぞろステージを降りていく。

 ところが渋谷だけはピアノの前に座ったまま。
「あれ?」
 不思議に思ってると、おもむろにピアノを弾き始めた。

 でっかい音量で多少耳鳴りがしているところへ、「Lotus Blossom」の優しい旋律がそっと忍び寄る。
 とってもかっこいい演出だった。こんな風にそっと余韻を残して終わってくれるなんて。
 
 ステージが終わったのは10時20分くらいかな。正味の演奏時間は一時間半強。
 演奏を続けるうちに、音のクオリティが天井知らずに駆け上がっていく。
 大満足した最高のライブだった。

 

目次に戻る

表紙に戻る