LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

00/11/25  江古田 Buddy

 
出演:SOH−BAND

 先日ディスクユニオンで、渋さ知らズのレーベル「地底」の特集販売がされていた。そのときに彼らのアルバム二枚を入手。
 かっこいい演奏を決めていて楽しい盤だったので、一度はライブを聴いてみたかった。
 今回のライブは7月以来とか。ひさびさのステージだったそう。

 集まった観客は20人あまり。バディがだだっ広く感じてしまい、ちょっと切ない。
 SOH-BANDは時間を15分くらい押して登場。
 リーダーの宗は、ジョンレノン風の丸いサングラスをかけている。
 衣装はトレードマークの血まみれ白衣。はだしでドラムセットに座った。
 他のメンバーが普段着なので、宗とのギャップがおもしろい。

 メンバーは下記の通り。
 宗 修司(ds)
 増田 隆一(eg)
 清水玲(eb)
 チェルノブイリ渡部(synth)
 田中邦和(tsんs)
 
 レコード発表当時からメンバーチェンジがあったようだ。新メンバーとして、サックスの田中が加わったらしい。たぶん、ここ一年以内の話だろう。

 さて、メンバーがそれぞれポジションについたところで、けたたましく演奏が始まる。
 まずは「とてもハズカシイ」「Dream Breaker」と二曲連続でプレイした。

 彼らの演奏の特徴は、とにかくハイテクニック。
 ポップなメロディを高速で演奏しながら、矢継ぎ早にブレイクを叩き込む。
 変拍子も何のその。リフはときにアンサンブルで絡み合い、さらにはユニゾンで突き進む。
 あえてジャンルわけをすれば、プログレになるのかな。ザッパの影響も受けているんじゃないかな。

 田中のサックスは、音色がふくよかに響く。
 過去の経歴は知らないけれど、ジャズ風のフレーズが顔を出すときもあった。
 もっとも宗が打ち鳴らすリズムは、あくまでロックなビート。
 そんなサックスとドラムのコンビネーションが、複雑で面白かった。

 宗はかなり手数多くドラムを叩く。
 シンバルを4枚並べた上、小さなシンバルを3枚浮かせる、にぎやかなドラムセットだ。
 せわしなくリズムを刻みはするものの、それほど自己主張はしない。
 あくまで曲の芯を支える、確実な演奏をポイントにしていた。

 ステージはときおりMCを挟みながら、急ピッチで続いていく。
 ソロ回しをしてインプロを聴かせるよりも、きっちり作曲されたフレーズを次々に決めていた。
 そのわりに、譜面に目をやっていたのは田中だけ。
 あとは全員が、めちゃくちゃ複雑なアレンジの曲を、平然と演奏していたからすごい。 
 
 かといって田中が、演奏に手一杯ってことはない。
 フレーズのポイントポイントで譜面を見る以外は、曲に乗って堂々とサックスを吹き鳴らす。
 他のメンバーがソロを取っているときは、リズムにあわせてコミカルなステップを踏んでみせ、愛嬌を振りまいていた。
 
 SOH−BANDの演奏は、あまりにめまぐるしくテンポや展開が変わっていく。
 だからCDを聴いていて、ところどころテープ編集をしているのかと思ってたけど・・・とんでもない。
 ソロが終わるタイミングに、アイコンタクトやハンドサインで互いに知らせあうだけ。
 あとはドラムのきっかけ一発で、ビタビタとタイトに演奏が転がっていく。僕は狂喜しながら聴いていた。

 第一部最後の曲は、「素敵なお仕置き」。
 ロマンティックなチェルノブイリのキーボードで幕を開け、重たいビートのリフにつながっていく、僕は好きな曲。
 中間部でテクノ風のフレーズが唐突に挿入されるあたりも、きっちり決めてくれた。
 CDから大幅に逸脱したアレンジではないものの、とってもスリリングな演奏だった。

 20分程度の短い休憩を取って、第二部が始まった。
 「セクサロイド”私チャコちゃん”」や「Beyond Beyond」「Boys,Be Dangerous」など、過去にCDでもりリース済みの曲を選曲する。

 このなかで「Beyond Beyond」をやってくれたのが、何よりうれしい。
 軽やかなビートに、浮かび上がるポップなメロディが素敵な名曲だ。
 「ひさしぶりに演奏した」と宗も言っていたので、聴きに来るタイミングがよかったみたい。
 テーマでサックスがメロディを吹く瞬間は、ほんとうにいかしていた。

 「Boys,Be Dangerous」では、チェルノブイリが派手なソロを決めた。
 じぶんの声をヴォコーダー風に変調させ、混沌としたキーボードソロを決めて、さらにモニタースピーカーにマイクを近づけ、ハウリングノイズを響かせる。
 宗のドラムはますますタイトになり、チェルノブイリを煽り立てていた。

 ここから演奏がヒートアップしていく。
 アヴァンギャルドな演奏の印象が残っている「想い出にさよなら」のあとは、「セクシャル・ハラスメント・NO1」。
 宗は「ファンクな踊れる曲です」と紹介した、変拍子がとびかうすさまじい曲。
 リズムチェンジが激しいから踊れるかどうかは別として・・・(笑)
 猛烈な演奏に巻き込まれて、僕は演奏を楽しんでいた。
 
 曲が終わると、そのままドラムとベースのコンビネーション・ソロに変わった。
 これが何しろハイテクニック!
 清水が無心にベースに指を走らせる。メロディアスなフレーズが溢れ出し、うなりを上げる。
 音が団子になってステージから降ってきた。
 宗のドラムは一定のテンポを刻みつつも、次々に派手なフィルで空間を埋め尽くす。
 すでにハイハットはかけらも踏まない。
 はだしの足でツインペダルを使って、バスドラを激しく踏み鳴らしていた。
 
 たぶん、5分近くベースとドラムのコンビを聞かせていたと思う。
 そのまま他のメンバーがプレイに加わる。もちろんテンションはかけらも落ちやしない。
 いつのまにかおのおのの奏者が微妙にテンポの違うフレーズを演奏し、見事なポリリズムの名演だった。

 最後の曲は、ロマンチックなサックスが印象的な「死ネバ馬鹿モ治ル」。
 しばしムーディなメロディで、雰囲気を和らげる。
 そして唐突にフリーな演奏に切り替わり、バディの空間を音が埋め尽くした。

 おもむろに宗がドラムセットの上に仁王立ちになる。
 演奏のヴォリュームに負けない絶叫でメンバー紹介。いきなりスティックを投げ捨てる。
 少ないながらも、今日の名演に大喜びの観客達による拍手の中、ステージを去った。


 このまま終わっても文句なかったのに。
 アンコールの拍手を送っていたら期待にこたえてくれた。アップテンポの曲をきめる。
 ところどころでメンバーが、楽しそうに笑いながら演奏していたのが印象的だった。

 二時間強に渡って期待以上のテンションをキープした、大満足のライブ。
 またぜひ聴きたいな。12月は・・・平日だからなあ。1月に期待しようかな。

<今後のSOH-BANDのライブ予定>
00/12/20(水) 19:30開演 西荻窪 Bin Spark(03-3395-9299)
00/01/20(土) 19:30開演 吉祥寺 Manda-La2(0422-42-1579)

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