今お気に入りのCD(番外編)

CDじゃないけれど、見に行ったライブの感想です。

2000/10/15  中野 中野サンプラザ

出演:King Crimson

 考えてみたら、こんなメジャーなミュージシャンの、ライブの感想を書くのは始めてかも。
 今日はもともと違うミュージシャンのライブへ行くつもりだったけど、今朝新聞を見てたら広告を偶然見つけた。
「キング・クリムゾン来日公演。当日券あり」
 3秒ほど悩んで、あっさりクリムゾンへ行くことに決める。

 当日券の発売は3時から。開演が5時という異例の早さ。
 サンプラザに行くのは、98年の暮れに山下達郎のコンサートを見にきて以来。
 というか、ホールのコンサートを見るのが、このときぶりかな。
 ひさびさに指定席でライブを見るんだなあ、としみじみしてしまった。

 僕の席は一階席の26列目。ちょっと遠い席だ。まあ、当日券だからしかたないかな。
 開演時間が早いから、もしかしたら前座があるのかなと思いきや。
 ステージ上にはすっかり4人のクリムゾン達のために機材が準備してある。
 開演まで間があったので、最前列まで行ってステージを眺める。
 中央にエイドリアン・ブリュー、向かって左がトレイ・ガンの立ち位置。
 後方にはパット・マステロットの為にドラムセットが高々と台の上に載せられている。
 ロバート・フリップ翁はステージ右側。僕の席からは対角線の位置になるので、ちょっとがっかり。

 ステージの飾りはほとんどなく、シンプルなもの。
 唯一あるのは、ステージ上に吊り下げられた一枚の布。
 縦2mに横15メートルくらいの大きさかな。シーツを干してるように見えた。
 しわだらけで、しみじみビンボくさかった(笑)

 ブリューとガンの足元に、セット・リストの紙が無造作に置いてあった。
 せっかくなので覗きこむが、今ひとつ文字が読み取れない。
 ただ、どう考えても曲目が10曲くらいしかないけど・・・もしかして、延々と長いインプロを聴かせてくれるのかな?と、楽しみになった(結果は・・・苦笑)

<セットリスト>
1.vroom
2.thela hun ginjeet
3.frame by frame
4.the construkction of light
5.into the flying pan
6.larks' tongues in aspic part IV
7.coda: I have a dream
8.ProjeKct
9.The world`s my oyster soup kitchen floor wax museum
10.frakctured
11.ProjeKct D
12.red
(encore-1)
13.three of a perfect pair
(encore-2)
14.Deception of the Thrush
(encore-3)
15.elephant talk
16.heroes

 ステージは5時を10分くらい押して始まった。
 客電が落ちて、4人が無造作にステージ上に現れる。
 それぞれのポジションにつきかけたが、どやどやとステージ前方に集合した。
 おのおのが右手を突き出し重ねあわせ、いわゆる「気合」を入れるパフォーマンスを見せる。
 どういうつもりでやってたかはよくわからないけど、僕は完全にギャグとして見ていたっけ。
 その後メンバーは立ち位置に戻る。
 そしてもちろん、ロバート翁は椅子に腰かけてしまう。

 ステージ一曲目は「Vroom」。
 レコードに忠実な演奏だ。ヴォリュームはそんなにでかくない。
 こまかいドラムの音が聞き取れるのがうれしい。迫力に欠けるような気もしたけど。
 危なげないところはかけらもなく、なんの破綻もない演奏が淡々と繰り出される。

 二曲目や三曲目ではブリューの伸びやかな喉が魅力的だ。
 PAの関係か少しこもってはいたものの、高らかに歌い上げる。
 ブリューは歯切れよくリズムを刻み、翁がメロディを正確無比に弾く。
 あ、でも三曲目では、ちょっとリズムがどしゃめちゃになってたっけな。

 「frakctured」には驚かされた。
 CDでは多重録音を最大限活用した、複雑なビートのギターが駆け回る曲だ。
 この曲をライブでどう演奏するかが、僕の興味の一つだったんだけど・・・。
 あのめちゃくちゃタイトなギターフレーズを、翁はいともたやすくやってのけた。
 テープを使ってるんじゃないかと思ったほど。

 時にヴォリュームを絞り、くっきりとギターのフレーズをサンプラザの中に響き渡らせる。
 まさかなんのごまかしもなくステージで演奏するとは思わなかったので、翁のハイテクニックには素直にぶっとんだ。 

 この頃には、なぜステージ上にシーツが張り巡らせていたのかわかった。
 スライドショーの幕に使ってました。
 曲にあわせて、歯車がかみ合わさってぐるぐる回る映像や、万華鏡の中を覗いたようにじわじわ変化するCGが映し出される。

 曲はつぎつぎプレイされていくが、どうもライブとしては面白くない。
 即興演奏部分がなくて、ただ淡々と演奏していくだけならレコードを聴いてるのと何にも変わらないんだもん。
 特にアレンジを大げさに変えずにプレイしているから、なおさらそう感じる。
 ・・・もっとも、逆にレコードそのままの演奏をするのが信じられない複雑な曲もあるから、そこらへんがややこしいけれど。

 多少なりとも演奏に味が出てきたのは後半部分から。
 インプロ風に4人がソロを演奏する。4人がせめぎあう部分がなかったのが
残念だけど。

 今回の音色で面白かったのは、フリップ翁のギターだ。
 単なるエレキギターでなく、midiで同期させていたのかな。
 ギターからキーボード風の多彩な音色が次々流れる。
 だから曲によってはアレンジの雰囲気に多様さが出て、飽きることなく聴けた。
 さらにドラムはVドラム(midiでシンセ・ベースと同期するらしい)だし、ブリューの横にはキーボードも置かれていたから、4人以上の音の厚みを出せる状態だった。
 
 オーラスは「RED」。照明は真っ赤に染め上げられ、テンション高く演奏された。
 とはいえ、僕はまだこのときは後半戦のスタートだとばっかり思ってた。
 ここから盛り上がる曲のオンパレードになるのかなって。

 ところがあっさり4人は袖に引っ込む。・・・おいおい、まだ6時半前だぜ。
 一時間ちょいくらいしか演奏してないじゃん。
 拍手をしてると、のそっとブリューが現れた。アコギに手を伸ばす。

 「なんだ?」と思ってると、弾き語りで聞き覚えのあるメロディを歌いだした。
 「three of a perfect pair」・・・この曲を弾き語りでやるかい。
 単なるコードのじゃか弾きじゃなく、リフもしっかり演奏する。
 きびきびした歌い方は、これはこれで楽しめた。
 
 またもやあっさりブリューが引っ込んで、こんどは3人が登場。
 ProjeKct3としての演奏かな。
 トレイ・ガンのベース(スティックかな?よく見えなかった)の太い音色の演奏が、なかなかかっこよかった。

 そんでもって、すぐさま引っ込んじゃうんだよ、3人が・・・どうなってるんだぁ。
 しつこく拍手を送ってると、やっと4人が勢ぞろいしてくれた。
 とはいえ、なんだかよくわからない選曲で二曲を演奏。
 最後の曲は、ボウイのカバーかな。よくわからずに聴いていた。

 で、で、やっともりあがるぞぉ!・・・と思っていたら、ステージが明るくなって、4人が挨拶を始めた。
 ・・・・で、引っ込んじゃったんだよ、4人が。
 明るくなっちゃったんだよ、客電がついて(><)

 「21世紀の精神異常者」も「スターレス」も「太陽と戦慄パート2」も「クリムゾン・キングの宮殿」(この曲はまあ、やらないと思ってたけど)も演奏しない、えっらく盛り上がりに欠けるステージだった。
 しかも終了時間は19時ちょいまえかな。
 正味一時間半くらい。ぐあぁ〜・・・・。楽しめはしたけど、ストレスがたまるステージだった(笑)

 この時間ならその気になれば今晩は、市川りぶるに行ってフェダインのライブか、同じ中野でやってる灰野敬二の即興演奏へ、ハシゴするってことも可能だったけど・・・。
 さすがに風邪気味の身体をいたわって、帰ることにした(笑)
 テンションをあげそこなったところはあったけど、フリップ翁のギターテクを目の前で見れたってことで、よしとするかな。

目次に戻る

表紙に戻る