今お気に入りのCD(番外編)
CDじゃないけれど、見に行ったライブの感想です。
2000/9/14 新宿 ナマステ
出演:フェダイン
このところちょっと仕事がばたばたしてしまい、なかなかライブへ行けずじまい。ライブを聴きに行くのは、ほぼ半月ぶりくらいかな。
だからこそ、間違いなく行けるはずの時間に開演するこのライブを選んだ。
なにせ、開演が夜中の12時。場所は新宿。
普通ならこんな時間に遅刻するわきゃない。
仕事が終わったのが夜の11時ちょいまえだったから、けっきょくお店に直接行く羽目になったけど(苦笑)
開場の「ナマステ」はゴールデン街の端っこ。ちょっとガラの悪いところって印象があったから、おそるおそる行ってみた。
場所は二階。店に入ろうとしたら、おそろしく立て付けが悪くて。
一瞬、ここは会員制の閉鎖的な店かと思ったよ(笑)
この店はおっそろしく狭い。基本的には飲み屋・・・というよりエスニック・バーかな。
細長の店の中央にカウンターがあって、客用のイスが7脚。それだけ。
入り口付近に4畳くらいのスペースが確保されている。
普段はそこにもお客を座らせてるんだろうな。
すなわち「キャパ7人」の凄い店だった。
こんな店でライブをやるのは、たぶんママの趣味なんだろう。
休憩時間にママとフェダインのメンバーが、雑談してるのをぼおっと聴いていたけど、ジャズの話でいろいろ盛り上がってた。
僕が店についたのは11時半くらいかな。
ちびちびビールを飲みながら開演を待つ。
しかし、この店はボロい・・・言っちゃ悪いけど(苦笑)
壁紙やカウンターの外皮はべろべろにはがれてるし。
カウンターの上には雑誌やCDが山盛りで、コップを置くのが精一杯のスペースしかない。イスはどれもこれもぶっ壊れて、体重かけるとぐらんぐらん揺れるし。
すべてが雑然と、そして混沌とした店だったな。悪い意味だけじゃなく、いい意味でもね。気取ったところがなくて落ち着けるから。
演奏開始の12時になった時点で、観客は四人になった。長細い店の後方がわに座っちゃったから、演奏スペースが見にくいなあ。後悔しつつも演奏を待ってるのに。
・・・こないんだ、フェダインが誰ひとりとして(笑)
演奏スペースにはドラムセットすら、セッティングされてない。
単純に3人とも遅刻してるらしい。
「あの3人はマイペースだからなあ」って店の人も苦笑してた。
12時5分くらいかな。平然と大沼志朗が店に現れる。
店の人が「遅いよ〜」ってすかさず言ったのに。
しゃらっと「あれ?まだ12時じゃない」って言ってたっけ。
すぐあとから不破と川下も現れてセッティングをはじめた。
かなり開演時間が押すのかなあと思っていたけど、そこはプロ。
あっというまにセッティングが終わって、12時25分くらいに演奏が始まった。
一曲目は「カプリソ」かな。
川下がせわしなく身体を前後にゆらしながら、サックスを鳴らしつづける。
ほとんどタンギングをしないフレーズ攻勢で、音が常に切れ目なく変わっていった。
体の奥からとめどなく音が搾り出されてくる。
とってもせまい演奏スペースだから、多彩な楽器を持ちかえるフェダインも、今夜の楽器構成は簡素なものだ。
大沼のドラムセットに、不破はエレキベースのみ。川下もテナーサックス一本だけを準備していた。
僕の位置では不破の表情はよく見えなかったけど。
大沼はいつものとおり無表情で、目を閉じてタイトなリズムを刻んでいた。
あまりバスドラを踏まないリズムを多用してたと思う。
3人ともまったくアイコンタクトを交わさずに、演奏を続けていた。
あっというまに川下の額が汗でまみれる。
なにせプレイヤーはほんの5メートルくらい先の位置で演奏しているから、川下の表情がくっきり見える。
汗をぽたぽたこぼしながらサックスを奏で続ける川下の表情が生々しかった。
二曲目は「ナポリタン」
ちなみに、この店はかなり音響がデッドだ。エコーがほとんどない。
そのせいかな。3人の音がクリアに聴こえがちだったと思う。
せわしなく川下のサックスから音が噴出すのに、音の感触はいたって優しい。
こんな柔らかいフェダインの音ははじめて聴いた。
いつもなら、音のエッジで耳が切れそうになるのに。
3曲目になったら、メンバー同士でぼそぼそ打ち合わせを始める。
ステージ構成をあまり決めていなかったようだ。
川下の希望で、キーがFのブルースが始まった。「ナウズ・ザ・タイム」のフレーズに変化していき、ママが歓声をあげる。
第一部の終わりは渋さでおなじみの「ナーダム」。
始めでちょっととちっていたけど、すぐになめらかな演奏が始まる。
ホーン一人のシンプルな構成での「ナーダム」は初めて聴いた。
テーマから落差無しに、すぐにソロに入っていく。
最後までテンションはゆるやかな演奏の第一部だった。
30分ほど休憩して、1時50分くらいに第二部が始まった。
まずは「梅六個」。
ここで初めてフェダインの演奏に緊張感が走る。
ホーンソロを休ませて、不破の指がベースの上を激しく踊った。
つるべ打ちに低音が走り回る。
大沼のドラムは淡々と、しかし確実なビートで不破をあおっていた。
この曲が、いつものフェダイン風の演奏で、今夜のベストトラックだと思う。
最後は「パリ空の下セーヌは流れり〜ラジオのように」。
優しいフレーズがサックスからあふれ、3人の演奏が絡み合っていく。
うっとりするメロディが店の中に広がり、僕はビールの酔いも手伝って、夢うつつで聴いていたと思う。
3人ともかたときも休まずに、音をつむぎだしていく。
ふわっと浮かびあがる音に包まれて、演奏が終わった。
第二部が終わったのが、2時半過ぎくらいかな。
良くも悪くも、リラックスしたフェダインの演奏だった。