今お気に入りのCD(番外編)
CDじゃないけれど、見に行ったライブの感想です。
00/8/29 西荻窪 アケタの店
出演:斎藤良一(g)+角田亜人(g、turntable)
ライブハウス通いを最近してるとはいえ、聴きに行くのはベテラン・ミュージシャンのライブばっかり。
たまには若手の演奏を聞きたくて、今夜はこのライブを選んだ。
仕事をさっさと切り上げて、7時半ちょうどにアケタに入ることが出来た。
この日の体調はいまいち。前日の夜はろくに寝ていなかったので、眠くて眠くて・・・。
すぐさま家に帰って寝ることも考えたけど、ターンテーブルを使ったライブを見てみたくて、よろよろと店に入っていった。
このライブハウスがオープンするのは、だいたい7時半くらい。
で、8時前くらいからライブが始まるのが通例だ。
この日のライブは、失礼ながらあまり有名でない若手のライブだから、いったい何人くらい観客が来るのか不安だった。
さて、観客の入りは?・・・・だれもいない。僕だけ。おいおい・・・(笑)
チケットノルマは、この店にはないのかな?
もらったチラシによると、角田亜人(つのだ つぐと)は1971年生まれ。
94年からギターやターンテーブルを使ってライブをしているらしい。
個人レーベル「ムニムニ」を主宰し、カセットによるソロ音源も7作リリースしていた。
ターンテーブル奏者といえば、僕が真っ先に思いつくのは大友良英だ。
前に菊地プーさんのトリオを見に行ったら、大友がターンテーブルを使って演奏していた。
せわしなくレコードを切り替えて演奏をして、インパクトがあったっけ。
それ以来、ターンテーブル奏者のライブへの興味が、頭の片隅で残っていたんだ。
今日のアケタのステージは、機材がぎっしり。
斎藤のスペースは上手側。アンプ二台にギターを二本立てかけて、足元にはエフェクターのペダルがふたつ。
アンプの前にパイプイスを置いて演奏するが、イスの前と左手(観客席から向かって)にも台を置いて、エフェクターやサンプリング・マシン(?)をあれこれ並べていた。
一方で、角田のほうはさらに機材が多彩だ。パイプイスの周辺が機材に囲まれている。
観客席から向かって左手には、アナログのターンテーブルが二台。ミキサーかサンプリング・マシンのような機材も合った。奥にはギターとエフェクター類。
向かって右手には、アナログLPが10枚ほど剥き出しでグランドピアノの上にぎっしり並べられ、ピアノの横にはカセットテープが10数本、きれいに並べていた。
さらにステージ側には、台の上にガラクタがいろいろ載せてある。
台の中央には小さなエレキギターが無造作に置かれ、弦には洗濯バサミや菜ばしや鉄の円盤が挟まっていた。
横にはギターのピックアップだけ取り外したものに、ちいさなボウルがふたつほど。ボウルのなかにはおはじきやコインが入っていた。
いったいどんな演奏が始まるんだろう。僕はワクワクしはじめた。
・・・これでもっとお客さんがいっぱいくればなあ。
7:45分頃になっても、お客さんは僕一人だった(笑)
演奏が無造作に始まったのは8時。
観客はぎりぎりになってちょろちょろ入店し、最終的には5〜6人いたのかな。一部は出演者の身内みたいだった。
始まった瞬間に、ちょっととまどってしまった。
どこに聞くポイントを置いたらいいのかわからなくって。
斎藤のギターは、リズムがないどころかメロディすらない。
うつむき加減でネックを見つめ、音を断続的に弾く。
音は小さいけれど、ギターから悲鳴が上がっているような感じだ。
悲壮感をわずかに感じてしまう、切なく痙攣する演奏だった。
角田は、第一部ではターンテーブルをメインに扱う。
足元のミキサーは、全体的な雰囲気づくりのノイズを出しているようだ。
虫の声のSEが、スピーカーから流れてくる。
ターンテーブルからは、ノイズが溢れ出す。
カットアップ的にレコードを使い分けるのかと思っていたので、ちょっと意外だった。
斎藤のギターに合わせてるんだか、あわせていないんだか。
矢継ぎ早にせわしなく角田がレコードを交換し、時にスクラッチを混ぜる。
どういう基準でレコードを選んでいるのか、さっぱりわからない(笑)
レコードをピアノの上から摘み上げては、ちょろっとターンテーブルからノイズを出しただけで、すぐさま次のレコードに切り替えてしまう。
なかには、ターンテーブルに乗っけただけで、次のレコードに切り替えてたこともあったっけ。
たぶん、10枚ほどあったアナログをまんべんなく使用していたと思う。
基本的に今夜のライブは、すべて即興だった。
二人とも、互いの演奏を聴きながらプレイしているのかなぁ。
リズムを感じさせない演奏だから、タイミングが合う瞬間もわかりにくいし。
ただ、なんとなく「終わるかな?」って雰囲気のときに、すぱっと両者が演奏を止めたのは見事(?)だった。
第一部は3曲のインプロを演奏。
斎藤がギターをひざの上に置いて、チェロの弓をのこぎりみたいに使ってぎこぎこ弾いていたのが印象的だった。
第一部の後半頃には眠気が押し寄せてきて、朦朧としながら音の中を漂っていた(笑)
30分ほど休憩して、第二部の開始。
こちらもインプロを二曲やった。
まずは角田のノイズからスタート。テーブルの上に置かれた小物を使って、ノイズを出す。
ミニギターの弦に菜ばしや鉄の円盤やCDをはさんでみたり、弦を洗濯バサミで止めてみたり。
横に置いたギターのピックアップだけ取り出した板に、小物をぶつけてノイズを出したり。
やることは面白いけど、ちょっと退屈してしまったのは否めない。
「どんな操作でどんなノイズが出る」ってことはわかっていても、それを音楽的に構成する引出しが少ないせいかな。
斎藤は第一部と変わらず、エフェクターを次々使ってノイズをばらまく。
幸いなことにボリュームが小さいから、聴いていても耳から血が出そうになることはない。
気を楽にして、演奏する姿を楽しめたのはラッキーだった。
途中で角田もギターを持つ。
角田もメロディをつむぐよりも、アイディア一発でノイズを出すことをメインにしていたようだ。
MCでは「いつもはもっと曲っぽいのを演奏していますが、今日は即興をメインにしました。お客さんがついてこられるか心配・・・演奏してる僕らはめちゃくちゃ楽しんでますが(笑)」って言ってたっけ。
普段はどんな演奏なんだろう・・・少々興味が出てきた。
MCどおりに最後まで即興演奏を貫き、終わったのが10時半くらい。
もし、これをCDで聞いていたら「つまんない」で終わらせていた音楽だろう。
でも、ライブで見てたから、音だけでなく視覚イメージもあわせていたせいか、とりあえずは演奏を楽しめたかな。
ライブを聞きに来て、損はしなかったと思う。
ちなみに、角田が参加している「weed beats」が9/15にショーボートで、9/20(昼の部)には新宿ピットインでライブをやる。
ドラム二人にサックス・ピアノ・ベースにターンテーブルと、なかなか面白そうな編成だ。どんな音楽なのかなあ。