今お気に入りのCD(番外編)
CDじゃないけれど、見に行ったライブの感想です。
2000/8/1 新宿 ピットイン
出演:渋さ知らズ
暑いさなか延々と並んでいたが、開場の遅れを引き伸ばして演奏が8時くらいにスタートした。観客は100人くらい入ったのかな。
前列に50人分くらい椅子席を置いて、あとはスタンディング。
予約をしないで行ったので、僕はたって聴く羽目になった。
これが、いろんな意味で失敗だった・・・・。
今回の渋さの編成は、ちょっと少なめ。
ドラムが一人、パーカッション二人、ベースが一人(不破が演奏)、ギターが二人に、キーボードが二人。チューバとトランペット、バイオリンがそれぞれ一人で、サックスが6人。あとはヴォーカルが一人にダンサーの乳房知らずが3人かな。
中規模渋さって感じだった。
まずは、サックスの音あわせ風の演奏に他のプレイヤーが絡んでいき、ジャム風の演奏。
続く演奏も、オルガン(渋谷毅)の演奏をフィーチャーした演奏だ。
この二曲だけで、すでに40分近く立つ。
店のカラーを重視したのか、今まで僕が聴いた中でも一番ジャズよりの渋さだった。
ソロを片っ端から回していく。しかも、かなり長い時間。
アイコンタクトだけで、ソロがなめらかに引き継がれていく。
ダンドリストの不破は、ほぼベースの演奏に集中していた。
3曲目に演奏したのが「アングラーズのテーマ」。7人のホーン隊が繰り出す、スローテンポのテーマの演奏を聞いたときには、あまりのかっこよさに鳥肌が立った。
ゆったりとした演奏で音が太く盛り上がるさまは、恐竜が動き出したかのようだ。
この曲でもたっぷりとプレイを披露。結局第一部は一時間くらいだった。
休憩をはさむ時間だが、ここが今日の思わぬ拾い物。
まずは、ポーランドからきたとかいうピアニストが、フリージャズを演奏した。飛び入りっぽい感じだ。
硬質の、黒っぽくないプレイだ。イメージ的に、キース・エマーソンのアコピの演奏を思い起こさせた。
5分くらいの演奏の後、おもむろに不破が登場。
「せっかくCDが出てるので、一曲やります」と言って、大沼と川下を呼び寄せる。
三人にゲストのピアニストをいれて、演奏が始まった。
曲目は、確か「カプリソ」。そう、フェダインの登場だ!
猛烈なスピードの演奏は、観客らが引き込まれて聴いていた。
ピアニストの演奏も、さすがプロ。リハをやったのかなあ。
フェダインを邪魔したりせず、さらに魅力を付け加えていた。
演奏が終わったときには、大歓声だった。
ドイツでは八千人の前でステージをやっても、前日にフェダインを見たときは、たったの20人足らず。100人の目の前で演奏するフェダインをはじめて見た(笑)
この翌日に、市川りぶるでフェダインのライブをやっている。
僕は見に行きそびれたが、観客がいっぱい入ってくれてたら嬉しいなあ。
フェダインの演奏の余韻を残したまま、第二部がスタート。
曲目はうろ覚えだけど、「サリー」「天秤」「DADADA」なんかをやったと思う。
演奏はタイトで、十分以上に楽しめた。
なのに・・・。
よっぱらった観客数名が、後ろのスタンディングスペースで、踊り始める。
まあ、ただ踊るだけならいい。そのうちモッシュ風に暴れだし、聞いている僕ら周りの客に、がんがんぶち当たってくる。
うっとうしいことこの上ない。せっかくのステージに集中できなくなる瞬間が幾度もあって、とっても残念だった。
なにはともあれ、後半もソロ回しを中心とした演奏をたっぷりぶちかます。
最後は、その大騒ぎしてた無粋な客のアンコールに、しぶしぶ答える形で「本多工務店」をプレイ。
終わったのが11時。3時間の長丁場になったステージだった。
ずっとスタンディングだったから、体力的にもしんどかった(笑)
それにしても。演奏をじっくり聴きたいなあ。この前の渋さも、酔っ払った観客の場違いな騒ぎっぷりがうっとうしかったし。
しみじみ、椅子席で静かに聞きたかった・・・。
でも演奏する方としては、観客が盛り上がった方がやる気がでるんだろうし。渋さの音楽を聴いて、踊りたくなる気持ちもわかるから、酔っ払いの彼ら自身のバカ騒ぎも、間違ってはいないと思う。
ようするに、盛り上がりを強制せずに、周りの観客に迷惑をかけないように聞けばいいんじゃないかなあ。
ライブの聴き方について、いろいろ考えながら帰宅した夜だった。
2000/7/31 江古田 バディ
出演:フェダイン
このライブハウスに来るのは初めて。仕事を抜け出せたのが中途半端な時間だったから、ステージの開始時間に間に合うか心配だったけど。
ぎりぎり開演予定時間の7時半をちょっと回ったところでバディに到着できた。
キャパは椅子席で100人くらい軽く入るんじゃないかな。予想より大きなハコだった。なのに観客は5人くらい(笑)
観客は途中からもぱらぱら来て、最終的には20人弱ってとこかな。
僕がフェダインを聴くのは今日が二回目。前回も観客数は寂しいものだった。
こんなにかっこいい音楽なのにな。ぜひ、多くの人に聞いてもらいたい。
演奏は、観客がある程度はいるのを待ってたのか、8時くらいに始まった。
この時点で観客が10人くらいはいたかなあ。
無造作に川下直広(Ts.Ss.6Se-Vln)不破大輔(Bs)大沼志朗(Ds)の三人がステージに上って、演奏が始まった。
第一部では、不破はエレキベースを持つ。
音慣らしのサックスに乗って、あとの二人が自然に演奏に入り、ライブが始まった。
「カプリソ」や「梅六個」に「TOKI」などをプレイ。
三人の演奏は疾風のようだ。うつむき加減で、それぞれのプレイヤーは自分の演奏に没入する。
川下にいたっては、ベースやドラムのソロになると、ステージを降りて袖をうろうろしていたっけ。
そんな無頓着なさまが妙におもしろい。
フェダインの演奏は、ジェットコースター・ジャズ。ハイスピードで、音がステージを駆け抜ける。
川下のソロはメロディを聴かせるよりも、音が流れるに任せた吹き方だ。
音がステージを荒れ狂う。音の奔流がステージから舞い降りる。
三人だけの演奏なのに、メロディを鳴らしてるのはサックス一本なのに。
時に、とてつもなく分厚い音が聞こえてくる。
一部のハイライトの「TOKI」で川下がテナーとソプラノのサックス二本吹きで、テーマを繰り返す瞬間が、とてもかっこよかった。
30分程度の休憩をはさんで、第二部がスタート。
こんどの不破は、ウッドベースに持ち替えた。
この二部の圧巻は「海」。
中盤で、川下がe-vlnに持ち帰る。ギター風にバイオリンを持ち、エフェクトをかけた柔らかい音で、コードをひたすらかき鳴らす。
リズム隊はしばし演奏をやめ、静かに川下の演奏を見つめる。
不意に不破が大沼に指で合図を送った。
その合図にそって、二人がブレイクを入れる。
何度も、何度も。激しく、タイトに二人がブレイクを刻み込む。
そして二人がリズムを刻み始め、再び演奏が激しくなっていく。
すばらしく刺激的な演奏だった。
しまいには、大沼がスティックをへしおってしまい、先っぽがステージの上を飛んでいった。
演奏後に、無表情に折れたスティックを投げ捨てるところがいかしてる。
最後の曲で、川下がバイオリンを首に挟み込み、弓で弾き始めた。
エフェクトをかけて、長く伸びる音が心地よい。
演奏に乗って、メンバーを紹介する。
いつまでも演奏が終わって欲しくない。うっとりと僕はフェダインの音楽に聞きほれていた。
2000/7/29 西荻窪 アケタの店
出演:明田川庄之
今日は明田川庄之の深夜ライブ。夜中の0時から開場する、ピアノとオカリナによるソロのジャズ・ライブだ。
僕が聴くのはこれで5回目かな。毎月一回明田川はこの時間に演奏してるけど、何度聞いても飽きない味のある演奏だ。
本日の観客は、僕を入れて6人。多くも少なくもないところ。
ライブは0時15分から、いきなり始まった。
前置きなしに明田川がいきなりオカリナを優しく鳴らし出す。
彼の演奏を聴いていて、ぼくは最初から音世界に入り込むことがこれまで出来なかったけれど。今回はすんなり演奏に入り込めた。
一曲目は「侍一本ブルース」。メロディアスで静かな演奏だ。
続いては「テイク・パスタン」。ペダルを踏むたびに間をゆっくりと置いていく。そのたびにリズムが途切れて、つんのめってしまう。
今回の演奏は、彼の持ち味である日本情緒にあふれたジャズは控えめ。
かといって、フリーに走るわけでもない。やさしく静かなピアノジャズだった。
圧巻は中盤に演奏した「テツ」。
演奏旅行で購入したという大きな風鈴を、右手でキャラキャラ高らかに鳴らしながら、左手で和音を刻む。この風鈴の音が、とてもきれいだった。
グランドピアノの中に何度も何度も手を突っ込んで、弦を弾き鳴らしたり低音部を叩いて響かせる。店の中に、ピアノの音が跳ね回る。
雄大な演奏を延々と奏でた、すてきな時間だった。
それに、今回はオカリナのソロもたっぷり聞かせてくれた。
前回の深夜ソロで聴いたときはさわりだけだったが、今夜は最後まで演奏。 いろいろなキーのオカリナを持ち替えて、時に甲高く時にしっとりとオカリナを吹く。
バッハ風のころころ弾むメロディが心地よい、いい曲だ。
また、「ジャズ・ライフ」という曲(楽隊旅行のつらさをテーマに作曲した曲らしい(笑))では、モダン・ジャズ風にノリのよい、長尺の演奏がかっこいい。ワクワクしながら聴いてたっけ。
「そろそろ演奏にも飽きたでしょ」と冗談交じりに言った後に「ロマンテーゼ」をしとやかに弾く。今夜は明田川の優しいピアノを堪能できた。
ところが、このままでは終わらない。時計を気にしながら最後にプレイしたのが「りぶるブルース」。
最初はやさしく(?)鍵盤を叩いたり、肘打ちをしていたけれども。
後半ではいつものように、両腕でガンガン鍵盤を激しくぶったたく。
単なるクラスター・ノイズも、明田川のロマンチックな演奏に挿入される形で聞くと、不思議とメロディアスに聴こえてならない。
目をつぶって激しくピアノを鳴らしていたのに、唐突に「終わります」の一言でピアノをあっさりと弾きやめ、今夜のライブは終了。
ふっと時計を見ると深夜の二時。ライブハウスの外に出ると、わずかに肌寒い。
でも、耳に暖かい演奏の余韻が残ってる。僕は気分よく家まで自転車を走らせた。