今のおすすめCD
最近気に入ったCDを中心に感想を書いてます。
したがって、特に新譜だけってわけじゃないですが、お許しを。
TZOMBORGHA/RUINS(2002:磨崖仏)
新録のフルアルバムは2年ぶり。さすがの貫禄が堪能できる。質量ともに、すさまじく充実した盤が登場した。
タイトルはあいかわらずの磨崖仏語。もはやなんと読むのかすらわからない。「ツゾムボーガ」かなぁ。
吉田達也(ds)と佐々木恒(b)とのアンサンブルも、複雑になる一方。一聴したくらいじゃドラム+ベースだけのユニットとは、とても思えない。
たぶん、本作にはインプロ部分はなし。全て計算された構成ではないか。
力任せにパワーで押す疾走感が魅力だった初期に比べ、4代目ベーシストの佐々木と組んだ頃から音楽性に幅が出た。
もっとも吉田のドラムも、初期より手数が増え続けてる気がするけど。
ドラムはメロディとユニゾンだけでなく、コンビネーションも重視。アレンジに手が込んできた。
もはやルインズは新しい地平に立った。その証明が本盤といえる。
サンプラーによるループをリズムにしたり、逆にドラムがリズムに徹したり。
エフェクターを駆使して、音数を増やした分厚いサウンドだ。
すくなくとも本作ではルインズを「二人組ユニット」と捉えてないみたい。
録音はとてもヌケがよく、個々の音までくっきり聴けて嬉しい。
複雑怪奇なストップ&ゴーも整然としたもの。
一発録りじゃなく、多重録音を駆使したのかな。
荒っぽさが消え、秒単位で変化するビートは整えられた。
もっともこの八方破れなアレンジを、ライブで平然と再現するのがルインズの恐ろしいとこだけど。
初期からのトレードマークな変拍子リフや、即興的に紡がれる吉田のボーカルも、もちろんたっぷり聴ける。
だが本作で特長なのは、それらの技を武器にするんじゃなく、あくまで「手駒のひとつ」と位置付けたとこだろう。
最も新展開に感じたのが「WANZHEMVERGG」。
イントロはルインズ印の強烈なテンションのリフから始まるが、中間部から急にスペイシーになる。
ここでの主役は、すでにドラムじゃない。
ひたすら吉田はビートをキープするだけ。ベースが淡々とループする。
その上をシンセっぽい音色がほわほわと漂い、吉田のファルセットと絡んで昇華された。
ミニマルな要素、テクノな要素。新要素を見事に織り込んだのがこの曲だろう。
ちなみに本盤ではカバーも多彩。どれもすでにライブで披露済。CD化でじっくり聴きかえせるぞ。
メシアンのカバー「MESSIAEN」では、ボイス・パフォーマンスが堪能できる。メロディにピタリと張り付き、けたたましく声を叩きつけるアレンジがスリリングだ。
「CHITTAM IRANGAAYO」はシャンカールのカバーらしい。アラブや沖縄を連想するポップなメロディがすてきな佳曲だ。
ルインズのお家芸と言える、数小節ごとに各曲を立て続けに繋げるメドレーも、二種類を収録。ブラック・サバスとマハヴィシュヌ・オーケストラが題材だ。
サバスは途中で逆回転になるオマケつき(・・・らしい。サバスを聞いたことないので、どう料理してるかいまいち理解できてません)。
たしかこれ、「アメリカのオムニバスに提供する楽曲だ」とMCで聴いたけど。企画が変わったのかな。
さらに本盤では佐々木が単独で作った曲も収録。ルインズのオリジナル盤としては快挙じゃないか。
その「ISSIGHIRUDOH」は、2001年にフィンランドで発売されたコンピ「AVANTO 2001」に収録された曲だ。
ちなみにそれとは別テイク。よりすっきり洗練して再録されている。
円熟した構成美と、ひとつところに収まらぬ実験精神が自然体で同居した。
どの瞬間を切り取っても、強烈なリズムに圧倒される。前作をあっさり越えた傑作だ。