今のおすすめCD

最近気に入ったCDを中心に感想を書いてます。
したがって、特に新譜だけってわけじゃないですが、お許しを。

アワ・フェイバリット・ソングス/ふちがみとふなと(2001:吉田ハウス)

 
ふちがみとふなとは、たったふたりだけ。
 ふちがみ(vo、ピアニカ、カズー.etc)とふなと(ウッドベース)のバンドだ。

 本盤は二人が好きな歌をカバーしたアルバム。
 だけど、メインの楽器がウッドベース一本なだけに、とても面白いアレンジになっている。

 ちなみに収録曲は下記のとおり。

 Paisley Park/おおシャンゼリゼ/Don't Think Twice, It's All Right/The James Bond Theme/Somebody to Love/Sumahama/I Can't Turn You Loose/Martha/So Long/愛はどこへ(I'll Be There)/トライ トゥ リメンバー/Smoke on the Water/Fairytale of New York

 びっくりしたのは英詩を歌うときの、英語の確からしさ。
 早口でまくし立てるフレーズですら、危なっかしさ微塵もなし。
 きっちり身体に染み付いたうまい英語だなぁ。

 聴きどころは山ほどある。
 シンプルなアレンジながら、とても素朴で味のある演奏がたっぷり聴ける。

 サイケに弓弾きするプリンスの曲から始まって、大阪弁が痛快なポーグスのカバーまで。
 どの曲を取っても、オリジナルと違った魅力を切り出した、ふちがみとふなとワールドへぞんぶんに浸れます。

 優しく震える歌声が、なによりすてき。
 荒っぽい歌詞を歌ってたって親しめる、のどかな説得力がある。

 かとおもえば、「007のテーマ」や「I Can't Turn You Loose」に「Smoke on the Water」で聴ける豪快さも聴き逃せない。
 ライブで腕をぶんぶんふりながらシャウトし、ホーン隊をカズー一本で表現する「I Can't Turn You Loose」の豪気なアレンジが忘れられない。

 ぼくがこの盤で、一番気にいったのは「おおシャンゼリゼ」。
 これほどキュートな曲だったとは。恥かしながら、ふちがみとふなとバージョンを聴いて、はじめて気がついた。

 シンプルにベースがビートを弾ませるなか、訥々とふちがみがメロディを紡いでいく。
 ほんのり舌足らずな歌を聴いてると、心のそこからほのぼのできます。

IMPROVISATIONS/RUINS(2001:磨崖仏)

 ルインズのライブといえば。複雑怪奇な曲構成を全て暗譜で再現する、脅威のテクニックがまず印象に残る。
 だけど日本で屈指のインプロ・バンドとしての側面も見逃せない。

 ところがルインズ単独名義では、即興を前面に出したCDをリリースしてきたろうか。ぱっと思いつかない。

 これまではロンルインズとか、デレク・ベイリーとルインズとか。
 誰かとのコラボのときに、即興音楽を演奏するルインズを作品化してきた印象が強い。 
 
 もっともライブでは、よく即興を披露しているようだ。
 ・・・ようだ、と書くには理由がある。
 ルインズのライブって、「30分くらいで十数曲をノンストップのメドレー演奏」をよくやるため、どこからどこまでがインプロか、聴いててよくわからないんです・・・。

 ともあれ、そんなルインズの即興作品をまとめて聴けるCDが、ひょこっと登場した。素直に喜ぼう。

 本作は2001年に吉田達也の個人レーベル、磨崖仏からリリースされたCD−Rシリーズの一枚。
 店頭にはあまり並べず、通販とライブ物販を流通の柱にしているようだ。

 パッケージも徹底して簡素。二つ折りのスリーブが一枚ある以外、なにも解説はなし。
 CD−Rの盤面もなにひとつクレジットされず、真っ白のまま。
 とことんまでシンプルにした、ゲリラ的作品発表の発想が楽しい。
 
 ちなみにこの「磨崖仏CD−R」シリーズは、本盤が最新作。
 これ以外に3枚、リリースされている。
 (吉田達也のピアノソロ再発、大山脈Xのライブ発掘、吉田達也の習作集)

 収録された音源は、97年の各地ライブ音源が中心だ。
 とくに曲名は付けられず、録音場所を曲名代わりにしている。

 97年の西日本ツアーと、同年のヨーロッパツアー時の双方からまんべんなく選曲されている。さらに、96年などのスタジオ作品も挿入。
 1時間足らずの収録時間で、全22曲。短めの曲(?)が並んだ。
 
 まずは超高速の手数で叩き込まれるドラミングに翻弄されるが、加えて多彩なアイディアのつるべ打ちも素晴らしい。
 
 ドラム+ベースのシンプルな構成ながら、まったく退屈しない。
 ビートに緩急を効かせたインプロが、山ほどつまっている。
 もちろん、吉田や佐々木のヴォイスも堪能できる。

 スタジオ作ではシンセをかぶせているようだ。
 アルバム全体を通して聴いた時、いかなる形であれ音色が単調にならぬよう、構成は配慮された。

 収録されたサウンドはすべて即興なはずなのに。
 ルインズの音楽世界では、かなり構築されて聴こえる。
 膨大な手数を維持しつつ即興を成立させる中で、無意識にパターン化されるのかもしれない。

 吉田達也はライブ・テープを聴き返して、作品へ昇華させるのだろうか。
 インプロながら、のちの作品を連想したものもあった。
 たとえば(10)は後の「Gharaviss Perrdoh」の原型みたいだ。

 マスタリングはかなり荒っぽい。
 各トラックのピークレベルもまちまちだし、曲によって音質のクオリティもさまざまだ。
 曲のつなぎも唐突にカットアウトされ、戸惑う部分もしばしば。

 とはいえ、そんな無造作さも気にならないほど貴重な音源です。
 こういうインプロもドンドン、リリースして欲しいな。

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