今のおすすめCD

最近気に入ったCDを中心に感想を書いてます。
したがって、特に新譜だけってわけじゃないですが、お許しを。

The night inside you 1972-75/Frankie Valli & the Four Seasons(1995:Four tunes)

 やっとこさ入手した。フランキー・ヴァリ&フォー・シーズンズが、モータウンに在籍した時代の音源を集めたコンピレーションだ。聴きたかった〜、これ。

 フォー・シーズンズがモータウンのサブレーベル、モーウエストと契約したのは1972年。ヴィー・ジェイ、フィリップスに続く3つ目のレーベルになる。
(正確にはその間に一枚、ワーナーからのシングルがあるけど)

 充実したシングルを連発のヴィー・ジェイ時代。アルバムの完成度にも目配りきき、最もすぐれた音楽を提供したフィリップスの頃と比べ、モータウン時代はあまりにも語られない。
 めぼしいヒット曲がなく、目立たない存在だったせいなのか。

 どうやらモータウン時代って、不遇の時代だったみたい。
 メンバーはガラガラ変わり、音の統一感があまりない。
 フォー・シーズンズは1975年にモータウンを去り、ワーナーのカーブへ移籍する。
 そこでまた"Who loves you"などヒット曲を出して復活するのだが・・・。

 もっとも、けっきょくはまたもや失速。
 現在はまったくシーンで語られないのはご存知のとおり。
 ぼくが知る限り、彼らの最新盤は92年の"Hope + Glory"(Curb)。
 まだまだ枯れるには惜しい。再度復活して欲しいもの。

 話が飛んだ。モーウエスト時代に話を戻そう。
 この盤は在籍していた72〜75年の音源を、むぎゅっと集めて一枚のCDに押し込んだもの。ほぼ完全収録盤みたい。

 ただ、"The night"はシングルバージョン(アルバムに比べ短いらしい)を採用。
 ライナーには「収録時間との兼ね合いで"Charisma"(1288F)も未収録」とある。
 手元の資料にはこの音源のことが載ってない。どんな素性の曲なのか・・・ご存知の方、ご教示いただけると幸いです。
 どうやら74年2月にリリースされたシングル、"Hickory"のB面曲みたいだが。

 ともあれ、それ以外はモーウエスト音源を全てカバー。とびきりのサウンドをたっぷり楽しめる。
 前置きが長くなったが、ぼく自身はけっしてモータウン時代は嫌いじゃない。
 曲の充実度ではフィリップス時代にかなわないが、モータウンの要素をうまくフォーシンズ流に料理してると思う。

 さらに全曲ではないにせよ、ボブ・ゴーディオやボブ・クリューも作曲家として協力。
 アレンジだって、チャーリー・カレロが手を貸してる曲も多々あり。
 バンドメンバーこそ定まらないが、根本のサウンド面はしっかりしたスタッフが固めている。出来が悪いはずがない。
 唯一文句をつけるとしたら、そこかしこに登場するディスコっぽさ。ここがどうも馴染めない。
 
 バンド演奏も、もしかしたらモータウンのハウスバンドが絡んでいるのでは。
 このうねりのあるベースって、ジェイムス・ジェマースンじゃないかな?
 "Baby I Need your loving"とかは、モータウン連中の音に聴こえてしまう。
 "The Night"等のディスコ風ベースラインは違うミュージシャンだろうけど。
 
 言い方を変えれば、わずか二年間の間なわりに曲のタッチがバラエティに富んでいる。
 これまでのフォー・シーズンズサウンドから、モータウンの空気を胸いっぱい吸い込んだもの。さらに時代にすりよっていった感触な曲まであるから。

 ちなみに収録曲の"Life and breath"はジョージ・クリントンの作曲。
 プロデュースのクレジットはのってないけど、やっぱりクリントン本人かな?
 さすがにPファンク風でなく、オーソドックスに洗練されたノーザン・ソウルになってるけど。

 ぼくがこの時代でいちばん好きなのは"Hickory"。
 曲はクリューとケニー・ノーランド(この人はよく知らない)。アレンジがチャーリー・カレロ。
 サウンドはフィリップス時代を髣髴させる軽快なもの。ばっちりフォー・シーズンズ・サウンドだ。
 ハンド・クラップやチェレスタによる素朴なパーカッションが優しく響く。
 歌の音域は広いのに、ヴァリはファルセットを駆使して見事に歌いきる。
 普通の声からいきなり裏声で歌い上げる、サビの部分は何度聞いても快感。
 
 モータウンに彼らが残したのはアルバム2枚。あとは数枚のシングルのみ。
 このCDが出るまで、モータウンが出したしょぼいベスト盤でしか、当時のいかしたフォー・シーズンズの音を聞けなかった。
 80年代後半頃にぼくはLPを入手して、よく聴いていたっけ。

 だからこそ、ほぼ全ての音源を網羅した本盤の価値は高い。
 なのになかなか店に置いてないんだもん。
 もし見つけたら、問答無用で鷲掴みされることをお薦めします。
 垢抜けたサウンドにのって、ヴァリのファルセットがばっちり響き渡るのを楽しめますよ。

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