今のおすすめCD
最近気に入ったCDを中心に感想を書いてます。
したがって、特に新譜だけってわけじゃないですが、お許しを。
Pere-Furu/Pere-Furu(2001:まぼろしの世界)
ボンデージフルーツ、デフォルメ、ブラック・ステージ、KICKSなどさまざまなバンドを使い分けて。なおかつ単発のセッションまで含めると、彼らは今までにいったい何度競演してきたんだろう。
90年代から幾度となく競演してきた無敵のコンビ、勝井祐二(vln他)と鬼怒無月(g他)によるユニットである、Pere-Furu(ペル・フル)のファーストアルバムがついに出た。
発売レーベルの「まぼろしの世界」は、勝井と鬼怒によるインディ・レーベル。
Pere-Furu名義の活動はしばらく前からあったから「ついにリリースされた!」って感じ。待ち遠しかったな。
この二人の演奏は、聴いていて本当にスリリングだ。二人とも多彩なアイディアを惜しみなく披露し、そのうえアンサンブルとしてきっちり成立している。
むやみとノイズ的な構成に流れず、聴きやすい音世界だ。
CDに収録された演奏は、おそらく全てが即興。曲名は妙に散文的な日本語タイトルを付けられた。
アルバム前半では鬼怒よりも勝井のバイオリンが目立つ構成になっている。
エレクトリック・バイオリンの強みを生かし、ビート感が希薄な広がりのある音世界を作った。
いっぽう鬼怒はアコギ(セミアコかな?)をメインに使用し、爪弾きを多用したギターで、静かに盛り立てる。
鬼怒はエレキギターも使用しているが、アルバム全体を通して聴くとアコースティックな印象が強い。
ライブではもうちょい激しい印象だったから、初めてこのCDを聴いた時は戸惑ってしまった。
このアルバムは別にメドレー形式でもないし、曲同士の連続性もないのに。
まるでライブを通して録音したような、うねりや一貫性を感じる。
特に冒頭から中盤に向け、しだいにぐいぐいと音のテンションがあがる構成がいい。
ぼくが大好きな曲は7曲目の「眼の高さにある太陽」。
鬼怒と勝井のフレーズが絡み合い、高みへ上っていく。猛烈な早弾きから産まれる疾走感がたまらない。
ギターとバイオリン互いが同時にソロを取りつつ、けっして打ち消しあわない。
二人のセンスががっぷり組み合った名演だ。
ライブのMCによれば、このアルバムはスワンプを意識して作ったそうだ。
だけど、そんなカテゴライズに押し込められるような音楽じゃない。
スペイシーで、泥臭くて、甘くて、透明で、ぴぃんと張り詰めてて。
時に相反するほど多彩な音要素を、貪欲に取り込む懐の広さがある。
自由奔放なフレーズに耳をそばだてるもよし、あったかい音に包まれてうっとりするもよし。
さまざまな楽しみ方を可能にする一枚です。
ちなみに本盤は全曲スタジオ録音(一部、勝井の自宅スタジオも使用)で製作された。
彼らの場合、各種ライブ音源だけでもすさまじく充実したアルバムができるはず。もっともっと二人の演奏を聴きたいな。