今のおすすめCD

最近買い込んで、気に入ったCDを中心に感想を書いてます。
したがって、特に新譜だけってわけじゃないですが、お許しを。

In Reverse/Matthew Sweet(1999:volcano/Avex)

 マシュー・スウィートの7枚目になるアルバム。
 購入したのは、リリースしたばかりの2年前だ。
 もっともそのときは、あまりピンと来ずに棚の奥にしまいこんでいた。

 ところがつい最近、「処分しようかな・・・その前に一度聴きなおしてみるか」と、CDデッキに入れたとたん。はまってしまった。
 このところ、何度も何度も聴いている。

 マシューといえば「ガールフレンド」(1991年)って人が多いだろう。
 それよりもずっと、ぼくは本盤が好き。
 マシューの甘さがちょうどいい具合にブレンドされた好盤だと思う。
 さらっと流して聴くと、メドレーのように聴こえる。
 曲調はけっこうバラエティに豊かなのに。

 作曲は全てマシュー。甘酸っぱいメロディがそこかしこから零れ落ちる。
 歌声はマシューしかいない。リードボーカルはもちろん、コーラスも全て彼による多重録音。
 演奏もパーソナルな雰囲気が強い。
 ギター、ベース、キーボードを使い分け、ベーシックな感覚は自分色に染めあげた。
 かえってドラムが浮いて聞こえるくらい。
 それらの要素が絡み合って、サウンドの統一感がすばらしい。

 スローなポップスから、ギターを強調したロックンロールまで、アレンジは多彩で飽きない。
 また、シンプルなコンボスタイルから、10人以上のミュージシャンを集めた、スペクターやブライアン風の大掛かりなアレンジの曲まで。
 ぐしゃっと音をまとめた厚いミックスで、はかないポップスをマシューはくりひろげてた。

 明るい、優しいメロディがいっぱい。爽快感よりも安心感が伝わる。
 スタジオで丁寧に作り上げた、ただれるような甘いポップスが心地よい。
 
A Paper Gift/Motion Picture(2000:Words Music)

 ジャケットには、白人女性がにっこり笑うモノクロの写真。
 おそらくバンド名だろう・・・。そっけなく「Motion Picture」と書いてあるだけ。かざりっけのない外見だ。
 ネットで調べたけれど、彼らの情報は手に入らずじまい。

 たぶん、ミネアポリスのバンド。とはいえ、ユニットのような感じもする。
 作曲、演奏のほとんどはエリック・ジョン・オスターメイヤー。
 ジョン・ダグラスがギターを少し。
 さらにサポートでチェロとバイオリン、金管がそれぞれ二人参加している。

 演奏の質感は、いたって優しい。
 アコースティックギターが静かにリズムをかき鳴らし、エレキギターが自由に泳ぐ。
 さらに裏では弦や管がオブリで厚みを加えた。
 作り上げられた音楽は、むやみにさわると崩れ落ちそうだ。

 ジョンのボーカルは線が細く、クルーナー調でやんわりとメロディをなぞる。
 フェイクを入れず、淡々と美しい旋律を紡いでいく。

 柔らかく、微妙に音を重ねていくポップスは、とても洗練されている。
 熱狂はない。心の奥から、じんわり暖かさがこみ上げる。
 あくまでサウンドの構築は、ロマンティック。
 スタジオで丁寧に音を積み重ねて行ったんだろうな。

 エリックの美学がすみずみまで行き渡った、いかした盤。

Stony Blue/(ルインズ)吉田達也(2000:kaerucafe)

 ドラムとベース2人によるバンド、ルインズ。
 彼らの近作二枚「パラシュトム」と「ヴレスト」のマルチトラックから、ドラムだけ、ベースだけ、と各トラックのみを抜き出して羅列したアルバム。
 めちゃくちゃに面白いけど、ファン向けな音源だろう。
 
 どうも一発取りでレコーディングをしているらしく、それぞれ単独トラックの後ろで、相方の音が小さく聴こえるのはご愛嬌。
 それぞれの楽器を強調した別ミックスとも言えるだろう。

 いわゆる「未発表音源」らしきものはなし。唯一「tuning」と題された、一分くらいのテイクだけかな。
 だがしかし。
 ボーカルも相方の楽器もそぎとって、なまなましくドラムやベースが迫ってくる迫力はとにかくすばらしい。

 吉田達也のドラムがこれほどクールだとは思わなかった。
 ルインズのグルーヴは、佐々木のベースと二人のボーカルがかぶさって、初めて産まれるものみたい。

 クレジットにはいくつか気になるところあり。
 まず、ベースは佐々木恒(「津山篤」とクレジットされている)。これは単純なミスプリかな。
 「FUNKY」と題されたトラックは「ブリムガス」の断片。(違う曲のテイクも入ってるかも)
 「Korromda Peimm 1」は「Schvostess」のテイクだ。
 「Yawiquo 4」は「クラシック・メドレー」。
 ぱっと気がついたのはこのくらい。他にもまだあるかな。

 ベースはかなり細切れで収録されている。なかには10秒足らずってやつも。
 パンチ・インしたテイクを収録したのかなぁ。
 一方でドラムはどの曲も数分収録され、じっくり吉田の手数の多いタイコを楽しめる。

 ハイハットの小さな鳴り一つ。ベースの歪んだ空気の一瞬まで。
 すみずみ味わえる本作は本当に貴重だ。

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