今のおすすめCD
最近買い込んで、気に入ったCDを中心に感想を書いてます。
したがって、特に新譜だけってわけじゃないですが、お許しを。
Just Family/Dee Dee Bridgewater(1978:Electra)
ひょんなことで聴く機会を頂けたこのCD。レコード屋でちょっと探してみたが、残念なことに今は手に入らないみたい。
それとも、僕がとんちんかんなジャンルの棚を探してるのかなあ。
そんなわけで、予備知識はまったくなし。的外れなことを書いていたら、ぜひご指摘お願いします。すぐさま訂正しますので(苦笑)
彼女はあえてジャンル分けするなら、ジャズに分類されているそうだ。
ただ、僕が聴く限りは軽めのソウルに聴こえる。
洗練された歌声がすばらしい。アルトからソプラノまで、幅広い声域で歌い上げるメロディが心地よい。
プロデュースはスタンリー・クラーク。バックのメンバーもチック・コリア、ジョージ・デューク、デイビッド・T・ウオ−カーなど、当時のジャズ/フュージョンの一流ミュージシャンがズラリ勢ぞろいしている。
演奏はそうそうたるミュージシャンのおかげでタイトに決めて、危なげなく聴ける。
打ち込み風のジャストな演奏を聴きなれた今だと、あくまで人間味を感じさせるノリの演奏にホッとする。
クレジット無しで音を聞いているだけだから、作曲者がよくわからない・・・。基本的にオリジナルなのかな。
一曲だけオリジナルがわかったのは、「Sorry
seems to be the hardest world」。エルトン・ジョンが76年にリリースした曲のカバーだ。
切なく内省的に歌うオリジナルとはうってかわって、壮大なゴスペル風のアレンジに組替えている。
一見極端でムリなアレンジを感じさせるが、ディー・ディーの歌がそんな不安を吹き飛ばした。
見事に自分の歌世界にエルトン・ジョンの曲を引きずり込んでいる。
ときにコケティッシュに、ときに暖かく包み込むように。このアルバムでのディー・ディーのヴォーカルが素敵だ。
特に、高音でファルセット気味に歌う声が好き。
「だれだれ風」って例は上げたくないけど、声の感触はケイト・ブッシュやリンダ・ルイスやローズ・マーフィを思い起こした。
ニュアンスたっぷりにころころと喉を転がす声が、もろに僕のツボに入ってしまった。
難しいことを考えないで、奔放に駆け回るディー・ディーの歌声に耳を傾けると、リラックスしてくる。ディー・ディーの他のアルバムも聞いてみたいな。
Late For The Future/Galactic(2000:Capricorn)
PHISHのおかげでジャム・バンドが妙に脚光を浴びはじめた。輸入盤屋で立派なジャムバンドの専門コーナーが出来ている。
そのラインナップを見ていて、ふっと興味を惹かれて買い込んだ。
確かこのアルバムが3作目。6人組で、出身はカリフォルニアかな?
ギャラクティックの宣伝文は「ニューオーリンズのセカンドライン・ファンク」だった。今年(2000年)の1月に来日も果たしたらしい。
その宣伝文句に負けてない、粘っこい演奏だ。若干オーバーダブをしていたり、完全なジャムバンドじゃないのが残念だけど。
アメリカン・ミュージックの泥臭さをたっぷり飲み込んだ、ぶっといノリの音楽を聞かせてくれる。
タイトなドラムに、ベースがじりじりノリを支え、ギターとオルガンとサックスがしぶとく絡み合う。
ジャムバンドといいつつ、リフがめちゃくちゃいかしてる。
インスト・バンドだけじゃなく、渋いヴォーカルやハーモニカをブルージーに聞かせるあたり、アメリカ南部の音楽の魅力をしっかり自分の物にしてる。
僕が一番好きなのが、2曲目の「Baker`s Dozen」。弾むベースのイントロにのって、サックスがいかしたリフをぶちかます。
ギターとオルガンが乗っかり、盛り上げていくところが、とてつもなくかっこいい。
ブレイクでサックスが同音リフを吹き鳴らし、ギターやドラムが駆け寄ってユニゾンでリフを高らかに鳴らす。シンプル極まりないアレンジがすばらしい。
オリジナリティに欠けるせいか、聴いていても華はあんまりない。バー・バンドがよく似合う音楽だ。ビール飲みながら聴いたら盛り上がるだろうなあ。
とにかく、この盤を聴くときはややこしいことを考えなくていい。流れる音楽に耳を傾けてるだけで、スカッとするよ。
If You Come Back To Me/The Dramatics(1999:Fantasy/P-Vine)
70年代から活動を続けていたヴォーカル・グループ、ドラマティックスの新作。アルバムとしては18枚目になるようだ。
ライナーによれば、前作は90年の「Stone Cold」以来らしいから、本当に久々のアルバムになる。
正直なところ、僕はこういうヴォーカル・グループは大好きだけれど、ドラマティックスを真剣に聴いてきたとは言いがたい。
ベスト盤と、73年の「A Dramatic Experience」(彼らの2nd)を聴いたことがあるくらい。
「うまいグループだなあ」とは思っていたけれど、どこか野暮ったくて聴き込むまでには至ってなかった。
このアルバムを買ったのも、ほんの偶然だ。たまたまレコード屋をあさっていて、「面白そうだな」って何の気なしに手にとった。
ところがこれが大当たり!飛び切りのソウル・アルバムだ。
甘いファルセットと、バリトンの深みのある声が、ふくよかな歌声を堪能させてくれる。
バックは打ち込みを多用しているが、暖かい演奏がたまらない。
メロディもアレンジもなにもかもすばらしい。
なぜかカバー曲でS&Wの「スカボロー・フェア」を選択している。しっかり熱っぽいソウルになってるけれど、これって売れ線を狙ったのかなあ。あんまり成功してるように思えないけど。
ゴスペル風に聴くには、ちょっと詰めが甘いし。曲の出来はまあまあなのにな。
なにはともあれ、ソウル・ファンなら一度は耳にして欲しい。2000年の今、こういう音楽が新譜として聴けるのがまったく信じられない。
はっきり行って、今の時代の音じゃない。
技術面こそ最新技術を導入してるけど、音の肌触りは70年代の全盛期そのものだ。
だのに、古臭さは微塵もない。時代の流行を超越して、普遍的な魅力がスピーカーからあふれ出てくる。
とびっきりのソウル・アルバムだ。
For All The Ladies/Lade Bac(2000:Grand Oz)
ちょっと野暮ったくも、雰囲気はかろうじて都会的なソウル・アルバムを一枚。
上で紹介したドラマティックスとは違って、今度はインディからリリースされた、4人組の若手ヴォーカル・グループを紹介したい。
都会的とはいえ、録音はオハイオ。リリースはジョージアらしい。
このグループも周辺情報が特にないけど、デビュー盤なのかな。
彼らの音は、基本的にすべて打ち込み。
細かいパーカッションを重ね合わせて、複雑なリズムを作り出している。
そのアレンジの緻密さと、間を生かす取り捨て選択が絶妙だ。
ここらへんは、アレンジャーのセンスがいいんだろうな。
ほぼすべてをアル・E・キャットという人がプロデュースしている。
彼の上品な趣味を見事に表現した、好アルバムだ。
このプロデューサーは、あなどれない。
レイド・バックの歌声は、若さゆえかピッチが多少甘い。
だけどそれぞれの個性を生かした、多彩なヴォーカル・アレンジが聞いていて飽きさせない。
メロディもきれいだ。一曲全体を貫くだけの首尾一貫したメロディじゃないけれど、ぐいっと耳が引き寄せられる瞬間がたびたびある。
一番気に入った曲は、最終曲の「Slow Jam」。キーボードを使ったリフが印象的だ。
弾む8分音譜のリフが楽しい。さりげなく曲に寄り添って盛り上げていく。
今の時代は、メジャーでコーラス・グループがのし上がるのって厳しいんじゃないかな。一時期、ジョデシあたりを筆頭に盛り上がったこともあったけど。
とはいえ、彼らのCDを聴いていると、アメリカの底の厚さをひしひし感じる。こんなにいいアルバムが、インディからぽこっとリリースされるんだから。
彼らには活躍して欲しい。そして、もっとキャリアを積んで欲しい。
まだまだ実力がありそうで、将来が楽しみなグループだ。