今のおすすめCD
最近買い込んで、気に入ったCDを中心に感想を書いてます。
したがって、特に新譜だけってわけじゃないですが、お許しを。
FEDAYIEN LIVE!/フェダイン(1997:地底)
不破大輔(b)、大沼志朗(ds)、川下直弘(ss,ts,vln)の三人による、嵐のフリージャズのユニット、フェダイン。
今までに数枚CDをリリースしているが、2000年6月現在で手に入る旧譜はこれ一枚しかない。
活発にライブ活動をしているから、東京に住んでいれば頻繁に彼らの音を、目の前で耳にすることができる。
とはいえ、もっともっと彼らの作品を、好きなときにCDで聞きたいよ。
このアルバムはタイトルどおりライブ盤。
96年5月にドイツのメールスで行われたジャズ祭が音源だ。
なんでも、観客は八千人ほどいたらしい。
ゲストとして、渋さ知らズの4人のホーン隊が、途中から参加する。
録音方法は荒っぽい。客先最前列に陣取ってDAT録音したという。
つまり、裏を返せばブート並。せめてサウンドボード録音が出来なかったものか・・・。
アルバムの録音レベルが異様に低くて、このCDを聞く時だけは、ボリュームを思い切り大きくしないと迫力が出ない。
だけど、ボリュームを大きくすればするほど、そのライブの熱気が伝わってくる。
演奏の影に隠れがちだが、オーディエンス・ノイズはしょっちゅう聞こえてくる。
いかしたフレーズを決めれば歓声を上げ、曲が終わると怒涛の勢いで拍手が沸き起こる。
この臨場感は捨てたもんじゃない。
演奏で前面に出がちの川下の演奏は、音の流れを観客の耳に叩き込むよう。
耳に残るメロディを奏でるよりも、長いフレーズを多用して、独特の音世界を作り上げていく。まるで金属の水が流れる急流の川で、溺れてるみたいな気になってくる。
ドラムもベースも、そんな僕の息苦しさを助けちゃくれない。
三人がそれぞれひたすら手数を多くし、音を重ねて圧迫感を積み上げる。
だから、僕は彼らの「海」の演奏が好き。このアルバムでも、一曲目に収録されている。
盛り上げて重なって高まりあって、ぎりぎりまで引っ張ったテンションを、ブレイクで解き放つ。
混乱と解放が同居したスピード感あふれる名曲だ。
混沌とした過激な混乱こそが、フェダインの魅力だと思う。
プレイヤーは音を撒き散らしながら、やみくもにつっぱしり昇りつめる。
渋さ知らズが空を駆け回る大きな龍のようなパワーを持つとしたら、フェダインは地を駆け抜ける豹のようだ。
ひとつのところに立ち止まらず、めまぐるしく姿を変えていく潔さがここちよい。
アルプ/明田川荘之(1992:AKETA`S
DISK)
92年8月14日での「アケタの店」と、同年10月14日の「エアジン」で行われたライブから選曲されたアルバム。
60分以上収録されているのに、たったの三曲しかない。
長尺ぞろいの明田川でも長めといえる、約28分の熱演「マジック・アイ」が収録されているせいだ。
アルバム全体を通して、明田川のシンセが前面に出ている。
僕が最近見たステージでは使っていないが、ライナーによるとシンセを使うことに、明田川は抵抗がないそうだ。
とはいえ、そんなにトリッキーなシンセ使い方をこのアルバムではしていない。
オルガンとエレピの中間的な音色で、メロディアスなフレーズを奏でる。
生ピアノとはちょっとちがった、スケールの大きさがある。
このアルバムでは、明田川のほかにはドラム・ベースにトランペットとトロンボーンのクインテット体制。
とはいえ、5人のインタープレイはほとんどない。それぞれが長いソロを取り、次のプレイヤーに渡す、自分の世界を構築していく形態だ。
明田川の柔らかい音色のシンセが耳に残るから、とっつきはいいと思う。
全体を通した感触は、ジャズそのもの。
ただ、淡々と転がるフレーズに耳を傾けていると、ぼおっとしてくる。
その浮遊感に身を任せる楽しさは、そこらのジャズじゃ味わえないかな。
tauromachine/MERZBOW(1998:RELAPSE)
サルバドール・ダリをテーマに作られたノイズだそう。
全7曲、すべて英題だが、ダリの作品にちなんでいるかどうかは不明・・・。
最初から最後まで、電気的なノイズがわめき散らす、ワイルドな作り。
だけど、妙にメロディアス。次から次へと新しい音色のノイズが現れては消えていく。
ノイズの奔流に身を任していると、うっとりとしてくる。
もっとも、これは僕が小さ目の音で聞いているせいだろう。
先日のライブで聞いたような、耳から血が出るほどの大音量で聞いていたら、別の感想を持つだろうけど。
多作のメルツバウにふさわしく、この年は10枚のCDをリリースしている。
この作品は、97年の5月から9月にかけて録音されたもの。音はすべて秋田昌美一人による多重(?)録音だ。
2曲めの「emission」は、イギリスの雑誌「Freize」の付録3インチCDに収録されたとのこと。
僕はメルツバウを聞くとき、一音一音を細かく聞いてはいない。
部屋に流しっぱなしにして、ふっと耳に残った瞬間のノイズの断片の印象と、全体の奔流を楽しんでいる。
大好きな瞬間は、「soft qater rhinoceros」での水音風の電気ノイズ。
暴力的なノイズのなかで、ふっと耳に安らぎを感じてしまった。
ちょうどいいことに、今日は大雨。窓の外から聞こえてくる雨音のノイズと、スピーカーから溢れ出すノイズのミックスがおもしろい。
「cannibalism of machine」冒頭のリズミカルなサウンドから、最後の「wounded
cycad dub」の低音ブチブチノイズまで、幅広い音色が飛び交う、刺激的なCDだ。
The Serenade Experience/SERENADE(2000:Kon Kord)
ひさびさにソウルのコーラスグループものを数枚聞いてみた。
昔から大好きなジャンルなのに、ここ数年の間は聞くのをさぼってたから、業界動向に疎い疎い・・・。
レコード屋で、このジャンルの新譜がなかなか見つからないのも一因だけど。
でも、こないだそこそこ置いてある店を見つけた。これからまたはまりそうな予感・・・でも、高いんだよなあ。なんでだろ。
さて、このアルバムはここのところ気に入ってよく聴いている。
経歴は良く知らないので、何枚目のCDなのかもわからない始末。
でも、サウンドはいいぞ。おすすめ。
彼らは黒人3人組。曲作りやサウンドを創りまでメンバーがかかわっているのかな。クレジットがあいまいなんでよくわからない。
でも、メンバーのJ−Luvと、ほとんどの曲の作曲クレジットに乗っているJ.Rhoneは名前が似てるから、もしかしたら同一人物かな。
リリースされたレーベル自身もインディ。CEOほかの顔写真までジャケットにしっかり載せてるイナたさが微笑ましい。
サウンドは打ち込み中心。ストリングスも打ち込みで代用してるから、安っぽいところがあるけども。
個人的には、この家内制手工業風の手触りが大好きだ。
ヴォーカルは、どちらかといえば線が細い。
曲のメロディはきれいなものが多いけど、一曲そのものを支えてたつだけの個性は聞こえづらい。
アップテンポからスローまで、盛りだくさんの構成はアルバム全体の統一感とは離れてしまう。
・・・ってあたりがマイナスポイントかな。
だけど、それを補って余りある魅力がこのCDにはある。
ピンで曲を背負えるだけの歌唱力こそないものの、入れ替わり立ち代り現れては歌うアレンジが、とても心地よい。
コール&レスポンス的な入れ替わりじゃない。
ちょうど、一本のマイクを譲り合って使ってるような感じかな。
三人の声質がそれぞれ異なっていて、ヴォーカルが変わるごとに雰囲気を変えられるのが魅力。
ハイトーンで歌い上げるヴォーカルから、低めの声でささやく声まで。時には電気的に声を加工する。
そんな工夫された個性がからまりあって、一つの大きな流れを作っていく。
それに、アップテンポのラップが時たまあるんだけど。こいつがけっこうかっこいい。
ラップ入りの歌で、面白いのが少なかっただけに、拾い物だな。
大げさにヒットするほどのパワーは、残念ながらない。
バラエティにあふれすぎた曲をつめこむあまり、アルバムの印象が拡散してしまうのが大きな欠点だろう。
でも、彼らが・・・いや、彼らのうちの一人でも。
個性をしっかり磨いて、アルバムを通したイメージ戦略を作り上げるまでになれたら、とんでもなく凄いグループになるんじゃないかな。
とはいえ、バックのコーラスに三人のリードヴォーカルの歌声が重なりあっていくスローの魅力はぴかいち。
コーラスグループが好きな人には、必聴でしょう。
KAKRABA LOBI Live/KAKRABA LOBI(1994:Conversation)
西アフリカはガーナのパーカッショニスト、カクラバ・ロビのライブ盤。
91年4月25日に京都の府立府民ホールのアルティで収録されたものだそうな。
帯によれば、83年の初来日以来、10年間に80回以上も日本でライブをしてるとか。知らなかった・・・もったいない。あうう。
カクラバ・ロビが演奏するのは、コギリと呼ばれるアフリカの14鍵木琴。
それぞれの木製鍵盤に瓢箪をぶら下げている。この瓢箪が音を共鳴させる役割を果たすが、それだけじゃない。
瓢箪に小さな穴があいており、アフリカに生息する蜘蛛の体液を乾かしたもの(蜘蛛の巣を思い浮かべて頂くといいかもしれない)が貼り付けられている。
これを貼り付けることで、音が微妙に震えて、複雑な音色がうみ出される。
彼の演奏は、とにかく手数が多い。
僕は彼のライブを目にしたことがないから自信を持っていえないが、なんでも右手と左手で違う拍子のリズムを自由自在に叩き出すらしい。
そのプレイがどんな感じなのかはさておくとしても、CDから流れる音を聞いているだけでも、そのすばらしさは実感できる。
ひとときも休むことなく、リズムが溢れ出してくる。
たった一人で演奏しているとは思えない。
共鳴した音がエコー的に残るせいもあって、音が消え去らずに、常に宙を彷徨う。
テクノとガムランとジャズとミニマルと。
いろんな音楽の要素を思い出させながら、常にアフリカ音楽特有のリズム感を強烈に感じさせる。
このぶっといリズムに穏やかに身を任せるもよし、強烈なビートにわくわくするもよし。
カクラバ・ロビのサウンドは、どんな聞き方でも優しくおおらかに包み込む。