Merzbow Works
V.A."World
Record"(1992:Alchemy)
"Good Alchemy Presents"と銘打って発売されたコンピ盤。たぶん、全曲が本盤初出のはず。
美川俊治のライナーによれば(詳細で読み応えあり)、同レーベルから過去にリリースされたコンピ"錬金術"(LP)、"アルケミズム"、"アルケミズム2"に続く盤として、同コンセプトで編纂されたそう。
企画はJOJO広重と美川。海外ノイジシャンにも声をかけ、第一世代ノイズのそうそうたる顔ぶれが集まる好コンピになった。
収録の面々はControlled Bleeding、ソルマニア、The
Nihilist Spasum Band、非常階段、Fruedwerk、Borbetmagus、そしてメルツバウだ。
基調はどれも電気的なハーシュノイズ。Controlled
Bleedingや非常階段、Fruedwerkあたりの激しさが気にいった。
かなり強烈なノイズが多いので、ボリューム上げるのをためらってしまう。とはいえ、でっかい音で聴くほどに楽しめるはず。
一口にハーシュと言っても、いろいろ個性があると実感した。
ここではメルツバウに特化して曲目紹介します。
(曲目紹介)
6.Merzbow"Elysia,Valley of the Motel"(10:13)
1991年の12月28日に録音、とあるほかにクレジットなし。
この頃はアナログ機材を並べた演奏だろう。
濃雲のごとく漂う低音上に、鋭くメタルパーカッションやエレクトロノイズが蠢く。
低音をドローンにし(ときたまブツ切れるが)、上物に2〜3種類の音を重ねたシンプルなハーシュに仕上げた。
冒頭2分くらいのところで咀嚼音っぽいノイズが一瞬だけ登場。そのイメージが鮮烈だ。
続く平らなノイズで広がりを見せ、力をためて一気に飛翔する。
草原をソリで滑り降りるような風景も浮かんだ。
複雑な多層ミックスでなく、スピードをうまく捕まえ矢継ぎ早に変化する音像が痛快だ。
スピーカーを埋め尽くしたかと思えば、次の瞬間きれいに音数絞って間を作る。
リズムは特にないのに、ノリを常に意識させる音作りがメルツバウの強みだ。
コンピでまとめて聴き比べるとよくわかる。メルツバウの音楽はどんなに激しくても、不思議と軽快な感触を受けた。
エンディングはあっさり。何度か力をためるしぐさを見せつつもフェイドアウトで消えてしまう。
(03/2記)