Merzbow Works

Ulver 1993-2003: 1st decade in the machines(Jester-records:2003)

 Ulverのコンピ盤にメルツバウが参加した。

 まったく彼らのことを知らず、ネットであちこち検索。ノルウエーのバンドで、ブラック・メタルに分類されるみたい。オフィシャルHPは「ここ」。

 ブラック・メタルとはデスメタルのような音楽性でありながら、基本コンセプトが違う音楽らしいが、不勉強でよく知らない。
 詳しくはこちらのサイト「黒金属中毒」を参照ください。すごく詳しくまとまっています。

 さてUlver。ネットでいくつものレビューを見かけたが、彼らはアルバムごとに音楽性を変えているようだ。
 アコースティックからテクノまで幅広く、いまはインダストリアル系へ行っているそう。
 見かけた限りのレビューでは、Ulverを「ブラック・メタルの音」と描写していない。
 ならなぜ、彼らはブラック・メタルに分類されるんだろう。実際に彼らのCDを聴かなくちゃなあ。

 さて本盤は彼らの所属レコード会社から、活動10周年を記念してリリースされたコンピ盤みたい。
 Ulverの音源を利用したリミックス集で、参加メンバーはかくのごとし。

 Alexander Rishaug, Information, Third Eye Foundation, Upland, Bogdan Raczynski, Martin Horntveth, Neotropic, A.Wiltzie vs.Stars of the Lid(揺らぐシンセの音像が気持ちいい。系統はミニマル), Fennesz(Mego関連で有名), Pita(Megoの中心メンバー), Jazzkammer(メルツバウとも共演したっけ。ノルウェーの「音響系」かな?, V/Vm。そして、Merzbow。

 知らないミュージシャンばかり。アプローチはテクノが多いかな。
 ノイジーさはほとんど気にならない。ゆったり音楽を楽しめた。

 前述の通りぼくはUlverの音楽を残念ながら未聴。しかし本盤から彼らがメタル系バンドだって、まったく想像できなかったよ。
 メルツバウがこの盤に参加したきっかけはなんだろう。
 もともとデスメタ系が好きらしいから、その縁かな?Mego経由ってことも考えられるが。
 
 Merzbowとの関連を抜きにしても、音響系が好きな人は一聴の価値ある盤だと思う。

 さて、ここではメルツバウのみを紹介します。

<各曲感想>

14.Vow me Lbrzu (10:00)

 Recorded and mixed by Masami Akita in bedroom Tokyo Oct.2002

 クレジットには秒未満まできっちりと、"10:00:00"って曲の時間が書いてある。こだわってるなあ。
 メルツバウはCDではトリをつとめ、本盤の中で2番目に長い演奏時間を許された。

 サンプリングの対象に選んだのはUlverの1st"Bergtatt"(1994)と3rd"Nattens Madrigal"(1996)。いつもどおり秋田昌美の自宅で録音された。
 
 ちょっぴりひしゃげた音のループは、なんだか薄暗い日本情緒を感じさせる。
 怠惰にかぶさるハーシュ・ノイズ。じわりとボリュームを上げ、ノイズを前面に出してゆく。

 これは全てUlverの音源からサンプリングされた音で作られてるのか。
 1分半あたりでめまぐるしく唸る電子音は、他のメルツバウ作品でもなんだか聴き覚えあり。

 基本はこの時点でメルツバウが得意とした、マックによる波形編集ノイズ。
 ループで音パターンを流しつつ、表面の肌触りを見る見る変化。他の音と混ぜて多層的に聴かす。
 小刻みなパルスがキーポイントか。4分あたりで乱立する猛烈な噴出が心地よい。

 場面は唐突に変わる。ギターの爪弾きをループさせ、風がゆったり蠢いた。

 またもや変わった。今度はギターがまるで琴に聴こえる。
 なぜこれほど日本情緒を感じるんだ。
 じめじめした空気を加速さすかのごとく、低音がぼこぼこと足元で泡立った。

 デスボイスが聴こえる。ごくわずか、加工されて。

 そして一気にハーシュの壁が立ち上がった。
 ホワイトノイズをエレキギターのループががっちり囲む。
 一気呵成。これまでの要素を詰め込んで、真白く膨らんだホワイトノイズが貫き、駆ける。

 エンディングは琴のような音色が、バック無しで舞台に立った。
 ピッチをだらしなく揺らし・・・力尽きた。

  (2004.8記)

一覧へ

表紙へ