Merzbow Works

Tint(Vinyl Comunication:1997)

Composed and performed by Masami Akita
Recorded and mixed by ZSF produkt studio may 1996

 メルツバウのシングルは、すごく違和感ある。
 一体どの客層をターゲットにしてるんだろう。
 いや、単にメディアとしてシングルを選んだだけかもしれない。マーケティング先行で考えてしまうのは早計か。

 メルツバウにはシングルにしてもおかしくない、キャッチーな曲ももちろんある。キャッチーの意味は、一般的なニュアンスと違うだろう。
 とかくノイズ系の作品は、ヒットチャートを駆け登ったりはしづらいし、ジュークボックスやラジオから流れにくい。・・・言葉選んでるな、ぼく。

 とはいえこれまでポップスを聴いてきた感覚から、どうしても先入観ある。
 アルバム単位でなくシングルで売ることは、その曲を特にPRしたい意図があるから、という気が。
 新人バンドならまだしも、メルツバウのようなベテランは特にね。
 
 このシングルは「コンピ用に送った音源を勝手に出された」と秋田昌美は述懐する。
 どういう客層を狙ったのか・・・レーベルの人間に聴いてみたい。

 それほど発表枚数を限定してないらしく、現在(2003年)でもたまに見かけるシングル。

 内容はきっちりハーシュノイズ。コンパクトな出来だが、特徴を掴もうとする前に曲が終わってしまう。くう。

<全曲紹介>

1.Tint one(3:19)

 じわっと助走をつけるがごとく、エレクトロノイズが脈動。
 少しパンしてためらったあと、ぐっと鎌首をもたげて咆哮する。

 竜巻の中で背筋を伸ばして立つイメージ。奔流に流されずあくまで前を見つづける。
 けっして洗濯機の脱水機の中へほおりこまれ、抵抗してるイメージじゃありません。

 2分半頃でちょっと勢いが落ち着きはするものの、ほぼ休み無く荒れまわって終わる。
 3分くらいじゃあっけなさすぎるな。
 メルツバウを楽しむには、ある程度の時間が必要と実感した一曲。

2.Tint two(2:12)

 これまた短い。シングルだとものたりないな。
 クレジットと時間表記が違うが、これはプレイヤーでの実測値です。

 今度は前置き抜きでハーシュが鳴った。左側でシンセらしき音がみるみる回転数を上げて浮かぶ。
 右チャンネルの高音はハウリングかな。

 ローターが鋭く回転するさまを抜き取ったようなサウンド。
 さまざまなスピードで数本のノイズが、廻りつつ飛翔をはかる。

 曲が短すぎるので、解放までいたらないのが残念。

  (2003.5記)

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