Merzbow Works

Tikkun (2014:Cuneiform Records)

Tikkun was recorded in Paris at Heldon and 314 Studio, 2013.
Recording engineer: Pierre Yves ROUPIN, Studio 314.
Mixed by Joe TALIA, December 2013, Brunswick, Australia.

All tracks composed by Richard PINHAS and Oren AMBARCHI.

first circle:
Oren Ambarchi Guitar, Spirit and Loops
Richard Pinhas Guitar, Analog Synth Guitar and FX
Joe Talia DrumZ, FX and Mix

second circle:
Masami Akita (Merzbow) Loop, Noiz and FX
Duncan Pinhas Sequences, FX and NoiZ
Eric Borelva Additional DrumZ

 エルドンのRichard Pinhasと、豪のギタリストOren Ambarchiのデュオ名義作へ、メルツバウがゲスト参加した形式。録音形式が今一つわからない。
 リシャールとオレンがサポートにジョー・タリア(ds)を迎えて、まずベーシックを録音。これが"first circle"と思われる。

 その音源を"second circle"と称したメルツバウ他に送り、ダビングを施したってことか。なお何人かの演奏クレジットに記載されたFXとは、エフェクト処理を指すらしい。
 曲目で地名の後のT4V1やT4V2、T2V2も意味不明。何らかの録音スタイルを整理した番号だろうか。

 クレジットによればピナスらが録音はフランス。よって曲目の地名はそれぞれのダビング先と想定する。ならばメルツバウが参加は(2)のみか?よくわからない。少なくともメルツバウは演奏のみで、編集やミックスにはタッチしてないようだ。

 この音盤にはDVDつき。13年10月29日にパリでのライブを収録した。以下の楽器編成で、デュオ編成だ。
Oren AMBARCHI: Noiz and loop guitar + amazing drumz
Richard PINHAS: Roland analog synth guitar + loop guitar

<曲感想> 

Track listing:
1.Washington, D.C. - T4V1 30:19
2.Tokyo - T4V2 13:01
3.San Francisco - T2V2 26:12
4.Washington, D.C. - T4V1 [excerpt] 05:51

 ギターが連続的に響く瞬間もハーシュ・ノイズによく似てるため、もしかしたら(2)以外にもメルツバウの音は入ってるかもしれない。
 とにかく(2)ではメルツバウと思しき電気ノイズが、ギターに負けず噴出した。タイトで深みあるドラムの音色も秋田昌美っぽいけれど。クレジット無いので叩いては無いかな。
 (2)でも演奏へメルツバウの関与度合いは不明だが、音を聴きながらノイズを重ねたみたい。合間を縫うようにかぶせた。メルツバウを聴くには、ちょっと物足りない。けれどもメルツバウを素材とせず、きっちり音に溶け込ませたミックスは嬉しい。

 本稿はメルツバウ至上主義で書いてるが、純粋に音楽としてはピナスのドローン・ギターを、さらに色濃いオレンのギターで味付けした極上のノイズ作品。生ドラムも加わり、ミニマルさを強調した。ドラムは脇に徹し、着実にビートを刻む。
 ギター勢の主役二人も、本質的にはハーシュを志向しないため、音像は聴きやすい。轟音サイケな風景を堪能できた。

 そのうえゲスト勢も主役を食うほどでないにせよ、大胆に個性を音源へ塗ってサウンドをさらに複雑かつ刺激的にまとめた。長尺曲が続くためメリハリより、音像そのものの混沌をたっぷり味わえる痛快な盤だ。

 なおメルツバウとピナスは何がきっかけで、交流が始まったのかは知らない。ライブでは幾度も共演している。
 音盤だと"Keio Line"(2008)が初。その後、Merzbow側の作品では"Rhizome"(2009),"Paris 2008"(2009),"Victoriaville Mai 2011"(2012)と作品を重ねた。
 ピナス側の作品では、"Metal / Crystal"(2010)に続き、本盤に至る。

 米ワシントンDCのレーベルCuneiform Recordsが、交流のきっかけづくりをしたのかも。上記音盤のうち"Victoriaville Mai 2011"以外はすべて、メルツバウ盤もピナス盤も本レーベルから発売されてる。このレーベルはピナスの他作も多数リリースあり、ピナスとは親しい関係のようだし。  
(2016/5:記)

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