Merzbow Works
Switching rethorics/Merzbow/Shora(Bisect Bleep Industries:2002)
Recorded at bedloom Dec 2000- Jan2001
Remixed on 4th Jan 2002
All composed and processed by Masami Akita
フランスのレーベルからリリースされた、ShoraとのコラボCD。それぞれ数曲を提供し、順番に聴けるよう配置されている。
全7曲ながら、総収録時間は30分強。ま、ミニアルバムってボリュームかな。
トータルアルバムとして聴ける、スピーディな編集が見事だ。
メルツバウは2000〜2001年に作り溜めた音源を、2002年正月そうそうにリミックスした作品。
どの曲も、比較的静かで聴きやすい音が多い。カットアップを多用し、インダストリアル・テクノを連想する瞬間が多かった。
CDのマスタリングが甘いんだろうか。もうちょい、刺激的な音になりそうなのに。いまいち物足りない。
一方のShoraは、スラッシュ・メタルかな。スイスはジュネーヴの出身。
メルツバウとの脈絡は不明。コラボのきっかけはレーベルの趣味だろうか。
重たいビートに弾き殴るギター。普段聴かないジャンルだ。ボーカルにドスを効かせたらデスメタルになるだろうが、いくぶんシャウトが主体だ。
一曲づつは短め。展開が薄いので、少々退屈だな。
メルツバウはこういうバンドとのコラボでも違和感なく馴染む。不思議だ。
最後のShoraの曲はスペイシーなノイズを中央に据えた作品。メルツバウへ敬意を表したか。けっこうはまってて面白い。
(各曲紹介)
1.T 2000(3:54)
まずは猛烈なパンからスタート。砂塵が吹荒れる。
ごそごそっと蠢く低音がスリリング。
特にビートがあるわけじゃないのに、テクノやヒップホップっぽさを感じた。
うねうね震えるサウンドに惹かれたせいかな。
小さめな音で聴いてるせいか、ノイズの感触は透明だ。
降りかかる細かな粒が心地よい。
ラスト数十秒でふっと音像が変わるアレンジが新鮮。
こういう柔らかな音って、メルツバウは使わないと思ってたから。
4.Black cat(9:04)
静かなノイズがふわっと広がる。しばし落ち着いて聴いてると、いきなり嵐の外へ弾き飛ばされた。
まとわりつく。つつみこむ。前曲は粒子が降り注いだが、ここではじわっと染みつくみたい。
同じパターンが繰り返されているのに、いつのまにか違う音像へ変化してゆく。
ここでも低音成分が少ないせいか、優しく耳に滑り込む。大音量だったら、違う印象だろう。
でも、聴きながらどんどんボリュームを上げてるのに、恐怖感は希薄だ。
カットアップしながら、ノイズの深みへはまってゆく。
メルツバウにしては重なる音が少ない、シンプルなミックスだ。
だけどそれぞれの音色が複雑。ささくれ立ったりギザギザだったり。かすかに弾けるとこが、味わい深い。
6.Vanlla groon(7:52)
前曲のスラッシュメタルから間をおかず、すぐさま音楽がスタート。
別々に録音したはずなのに、メドレーみたいにつなぎ方がぴったり。
冒頭部分は、燃え盛る炭を音で表現したのか。
激しさは控えめながら、奥のほうでじわっじわっとパワーを蓄える。
しばらくして炸裂。鳥の声みたいな音をシンセで作り、ループさせつつハーシュノイズをかぶせた。
この曲もやっぱりボトムが軽いな。小さく低音もミックスされてはいるんだけど。
あとはさほど変化がなくエンディングまで突っ走る。
ぼんやりと音へ耽溺してると気持ちいい。
終了間際数分で、やっと兇悪ハーシュが登場。こういうのをガシガシ炸裂させてほしい。
最後は、いっきなり音を切り落し。
(2002.8.18記)